しずおか文化財ナビ 日本風景〈徳川慶喜筆/油絵 絹〉
- よみ
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にほんふうけい〈とくがわよしのぶひつ/あぶらえ きぬ〉
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指定区分、指定種別
- 県指定/有形文化財・絵画
- 指定日
- 2022年12月2日
- 員数
- 一面
- 一般公開有無
- 有
- 公開情報
- 久能山東照宮博物館で不定期に展示
所有者情報
- 宗教法人久能山東照宮
- 静岡市駿河区根古屋390
指定内容
本作は江戸幕府15代将軍であった徳川慶喜(とくがわよしのぶ)が静岡で生活を始めた直後の明治3年(1870)頃に制作したとみられる油彩画で、慶喜の小姓を務めた小路三之助(しょうじさんのすけ)が拝領したものを、昭和7年(1932)4月に徳川慶喜家が買上げたと伝えられ、昭和50年(1975)以降は久能山東照宮が所蔵している。
画面の法量は縦40.0cm、横60.0cm。紙で裏打ちした絹布を杉材の木枠に貼った画面に、油彩画の絵の具を用いて描かれる事例は、慶喜の油彩画以外に類例を見ない顕著な特異性を示す。表面に署名はなく、裏面の中央上部に直径4.8cm程度の「慶喜」の朱文重郭円印(しゅぶんじゅうかくえんいん)が捺される。
画題は「日本風景」であるが、場所の特定は困難である。手本を組み合わせて模写していく東洋画の制作技法を活かした油彩画であり、モチーフを重ねて前後関係や遠近を表現しているため、現代人の目から見ると空間的な違和感を感じるものとなっている。岩肌や樹葉を描く筆使いにも細かい筆を重ねる東洋画の皴法(しゅんぽう)のような手法が採られている。これらは慶喜の油彩画に共通する特徴である。
この画風は幕府開成所で江戸時代以来の写生法を応用しながら西洋画法を模索した中嶋仰山(なかじまこうざん)や、それに連なる島霞谷(しまかこく)、川村清雄(かわむらきよお)らと共通した西洋画の先駆的な様式を示すものと考えられ、明治時代の画壇で主流となっていくものとは異なる。慶喜は、中嶋仰山に油彩画を学んだ。慶喜による創作が日本中の叡智が集結していた明治時代初年の静岡で育まれたことは非常に意義深い。
このように、本作は近代日本洋画史の草創期である明治時代初年に、静岡において前将軍により東洋画のような基底材と描画法を用いて描かれた希少な油彩画であり、近代日本洋画史という美術史的観点からも貴重な作例として重要である。
県指定有形文化財指定基準
絵画、彫刻の部2、3、4
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