UDの実現に向けた若い世代からの発信【寄稿日:令和6年3月1日】
静岡文化芸術大学 デザイン学部 教授 小濱朋子 氏
メディア・ユニバーサル・デザイン(以下MUD)は、高齢者や色弱の方にも配慮した文字や配色で表現され、内容がすっとわかることを基本とし、全日本印刷工業組合連合会が主催するMUDコンテストは17年間続いている。静岡県印刷工業組合の力添えもあり、毎年100人を超える静岡の若者がMUDを意識した作品にチャレンジしている。私は審査員の一人として、年々レベルの高まりを感じるとともに、単に見やすさやわかりやすさに対する表現のテクニックだけでなく、UDを自分事としてとらえ、自然体で相手の立場にたって考えて創っている作品が多いことに感動している。
今年度のコンテストの学生の部では、トップ3を静岡が独占した。
最優秀賞の「冊子:湖西市の障がい者のしおり」(浜松未来総合専門学校:大塚麻友香さん)は、「障がい者のしおり」を、利用者の視点から期限や必要度を考えて情報を整理し直し、色コードや一覧表、実物の写真などを駆使して説明し、見やすくわかりやすく、利用者にとって使いやすく仕上げている。「情報を発信する側は、漏れなく伝えることに執着して、なかなかここまでできない。行政資料のひな形として全国に提案できるのではないか。」と審査員一同が絶賛した。
優秀賞の「冊子:フタリトリセツ」(静岡デザイン専門学校:西原空来さん、栗原百花さん)、「絵本:森の運動会」(静岡文化芸術大学:山田麻友香さん)はともに、フラットな視点から様々な「生きづらさ」を解きほぐすテーマの作品で、UDの実現に向けた若い世代からのフレッシュなメッセージが感じられる。
また、昨年秋、本学の学生が、地域連携プログラムの一環で、磐田市の見付宿を活性化する「景観を損なわずに誰もが気づきやすいサイン」を提案する際に、白内障や色弱の疑似体験をしながら、地域の方々と一緒に考えるワークショップを行い、好評だった。様々な立場の人の見え方や考え方を共有する行動を自発的にとれることは、これからの時代とても大事で、頼もしいことだと思う。
※歴代のMUDコンペティションの受賞作品は、MUD協会発行のチラシやホームページからご参照ください。
図1 絵本:森の運動会
図2 見付宿のワークショップ風景
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