ICTを活用したユニバーサルデザイン【寄稿日:令和3年3月12日】
静岡大学 学生支援センター 准教授 生川友恒 氏
全国の大学等において2020年度は感染防止の対応によりオンライン授業の取り組みがおこなわれました。新年度を迎える今、対面授業に戻る動きもありますが、大人数が受講する講義科目を中心にまだまだオンライン授業が継続するのではないかと思われます。
私の場合、写真のようなイメージでオンライン授業を収録しています。目の前に学生がいないため、教員としては受講生の反応をみながら話すスピードや内容を調整することができないという難しさがあります。学生は、1人でパソコンに向かうことになりますが、対面授業よりも集中力を使うため疲れを感じるという声も少なくないです。また勉強だけでなく、サークル活動も含めて周りの友人とのコミュニケーションをとる機会が減り、孤独化と大学生活全体へのモチベーションの低下が課題となっています。
一方で、今回のオンライン授業の展開は、ICTを活用した授業や社会のユニバーサルデザインに発展する契機になるのではと考えています。学校まで登校すること自体に壁がある人(具体的にはリハビリや医療的ケアを日々受けており外出することが困難な人、教室という空間に入ることが不安な人など)にとって、一部でも授業を自宅や病院からでも受講できるようになることは画期的な出来事であり、学べる機会が広がることになります。
オンラインやリモートの導入だけでなく、小中高を含めたすべての学校現場での対面授業においてもICTを活用することで障害のある人が障害のない人と一緒に学ぶことができる可能性があります。文字を読むことが困難であれば、あらかじめ教科書などのデータを入手して音声読み上げ機能を使用して受講する。手で書く(メモする)ことが困難であれば、キーボード入力やスマートフォンでメモをとり、板書はカメラ機能を使って保存する。話すことや発表することが困難であれば、自身が伝えたいことを読み上げ機能を使って発話する。聞くことが困難であれば、補聴援助や音声認識のシステムなどを活用する。聴覚過敏のある人はノイズキャンセリングヘッドホンを着用する。ICTの技術的な進歩と同時に学校や職場、地域において、ICTを活用して社会参加する人が身近に存在し、ごく自然に受け入れられる時代が目前に来ているのはないでしょうか。
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