UD実現の「2つのアプローチ」の考え方【寄稿日:令和5年2月20日】
静岡文化芸術大学 デザイン学部 教授 小濱朋子 氏
ノンステップバスやUDタクシー、ICチップを使ったカードなど、はじめから「できる限り全ての人」が利用しやすいように配慮された『UDの製品やサービス』は、様々な形で普及してきている。一方で、図1の公共のトイレのように、周辺機器はそれぞれにシンプルで、ボタンも押しやすく、わかりやすいが、肝心の水を流す操作には戸惑ってしまうといった、「各々の製品・サービスは『UD』だが、周りとの関係性で『UD』ではなくなる」事例も増えているように思う。
そこで、『これからのUDの実現』に向けた「2つのUDアプローチ」の考え方を提案したい(図2)。
「共通集合アプローチ」は、「多様なユーザー特性、ユースケースの共通項を探究し、「できる限り全ての人」が使える、限定した製品・サービスを創り出す、これまでのUDのアプローチ」である。「和集合アプローチ」は、「ユーザーがそれぞれに合った選択、カスタマイズをして(UDオプションと仮称)、「できる限り全ての人」が製品・サービスを使えるようにするアプローチ」である。スマートフォンをイメージするとわかりやすい。
この2つのアプローチを、バランスよく組み合わせて『UD』を実現する、というのが私の提案だ。表示物が乱立する公共空間のデザイン、店舗デザイン、広告宣伝物などのコミュニケーションデザインなど、領域を超えた様々なデザインに展開できると思う。
しかしまだ、概念的で、具体的な手法やツールなどはない。誰もが納得し、容易にカスタマイズできる「UDオプション」を創出するには、多様なユーザーの認識と行動を網羅的に把握して、「できる限り全ての人」をパターン化する必要がある。障害の程度などのカテゴライズだけでなく、自分の周りの人はどのような考え方で動いているのか、相違点は何かなど、垣根のない「多様な人々」の探究になる。果てしない・・・が、わくわくする。
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