Eジャーナルしずおか第272号(抜粋)令和6年6月発行
新たなカフェが校内にOPEN!
令和4年度から静岡中央高校で試行してきた校内居場所カフェ事業が、令和5年度から三島長陵高校、浜松大平台高校でもスタートしました。校内居場所カフェとは、生徒が気軽に立ち寄り、大学生や地域の社会人などのボランティアスタッフと交流ができる場所です。
今年度も引き続きNPO法人等に委託し、3校で実施していきます!
3つのカフェを紹介します
1.きゃりこみゅカフェ(静岡中央高校)
静岡中央高校では、「高校生が社会とつながるプラットフォーム」を目指し、毎週のカフェの運営に加えて、働く経験を積むインターンシップコーディネートや自分達でカフェのアイデアを出して楽しむ空間づくり、食べ物配布等の生活支援につながる取り組みを実施しています。
インターンシップでは、夏休み期間中に図書館や老人ホーム、NPO法人などで、職業体験を実施しました。参加した生徒からは「将来を考えるための参考になった。」などの感想がありました。
2.きゃりこみゅカフェ(浜松大平台高校)
浜松大平台高校では、令和5年9月からカフェをスタートしました。参加者数は回を重ねるごとに増え、友達を誘って参加してくれる生徒もいます。学校やアルバイトでの悩みや将来のことなど、ボードゲームをしたり、お菓子を食べたりしながら話しました。
最後のカフェでは、「4月からもカフェやる?」「また来るね。」「学校を辞めないようにしないといかんね。」など様々な反応がありました。どの生徒も笑顔でスタッフと会話する様子から、カフェが安心して過ごせる場所になっている様子がうかがえました。
3.ほっとカフェ(三島長陵高校)
三島長陵高校では、パステルアート体験をしながら学校生活や将来について話をしました。アルバイトをしている生徒は、仕事の困り感などについて相談していました。
冬休み前には、カフェの案内カード、年末年始に困ったときに相談できる窓口のチラシ、食品などを配布しました。「いつもありがとう」「良いお年を!」と生徒とサポーターが声を掛け合いました。
校内にある社会とつながる場所 ~今と卒業後に向けた人間関係づくり
これから…
食べることがままならず、学校で学ぶことやアルバイトをすることができなくて困っている生徒がいる場合、まずは生活を整えるためのサポートを、行政、支援機関が連携して広域的に行う必要があります。
働くことのイメージが持てない生徒には、職場見学や就労体験ができるように、学校と連携して進めていきます。生徒やご家庭とつながり、高校を卒業しても、安心できるセーフティーネットづくりを目指しています。
実践NOTE542
特別支援学級の学級編制基準引下げによる教育効果を期待して
伊豆の国市立大仁小学校 教諭 前田 朗子
8名1学級を2学級へ
特別支援学級への理解が進み、支援学級は年々増加しています。併せて、障害が多様化し、より個に応じた支援を目指すために、多人数学級における指導は困難を極めるケースが多く見られます。そこで、研究指定校として加配教員を配置し、8 名を2 学級に分け、その教育効果を検証していきました。
学習環境の充実
まず、担任の受け持ちが4学年から2学年に減ったことで、児童が直接担任から受けられる指導時間は国語・算数で平均1.8倍増加し、自習時間が減りました。単学年授業は0時間から11時間に増え、異学年異教科授業が18時間から5時間までに減ったことで、児童・教師共に集中できる授業時間が大幅に確保されました。また、空間が広くなることで、パーソナルスペースを保ちながら、活動に合わせた教室レイアウトが可能になりました。物理的にも心理的にも児童同士の注意や注目行動が減ったことは、障害特性を持ちながらも生活を充実させる一助になったと考えます。
予想をくつがえされた児童アンケート
実際には、8名が1学級として学習や生活をする場面があるため、定期的に児童の意識調査をしていきました。「少人数(2学級)が良い」は18ポイントから21ポイントまで上がり、予想通り始めから高ポイントを獲得しました。しかし、「多人数(1学級)が良い」も12ポイントから20ポイントまで上がり、「多人数は低評価が続く」という私の予想はくつがえされました。これは、少人数学級で学習や生活環境を安定させられたことが好転し多人数でも良好な関係を築いていくことができた、と分析しました。
少人数での成功体験を通常学級へ
自閉症児はコミュニケーションに課題があると言われていますが、友達と上手に関わる体験を通して、人とのつながりをさらに求めていることが分かりました。小集団の生活から始めて、集団登校班や縦割り班、通常学級へと人間関係が広がっていくことが期待されます。出席率96.7%が表すように、何より楽しく学校へ登校できることを願っています。
実践NOTE542は以上です。
実践NOTE543
美術を専門的に学ぼうとする態度を形成する「美術概論」-作品交流を通した創造性を考える授業実践-
静岡県立清水南高等学校 教諭 竹川 友美子
美術を専門的に学ぶ生徒は、美術概論、美術史、鑑賞研究、素描、構成の5科目を原則、履修しなければなりません。その中で、基盤となるのが「美術概論」です。将来、芸術家、デザイナーなど美術分野のプロフェッショナルを目指す生徒たちの核となる重要な科目です。
今回は、美術概論で実施した「自己や他者の作品に表れている創造性を考える授業実践」として、清水特別支援学校との芸術交流活動を紹介します。
清水特別支援学校との芸術交流
清水特別支援学校と本校芸術科は数年にわたり芸術を通した交流活動を続けています。本校の音楽専攻生が、清水特別支援学校で演奏したり、美術専攻生の作品を校内に展示していただいたりしてきました。
創造することの価値と、多様な作品に表れている創造性を尊重する態度の形成
令和5年度は、互いの作品を交換し、作品交流展を両校で実施することができました。清水特別支援学校の児童・生徒の作品は、版画、イラスト、木工作品など多岐にわたり、技法も多様です。普段、美術館で有名アーティストの作品や大学受験のために制作された作品などを目にすることが多かった美術専攻生にとって、初めての体験です。
交流展の前に、「作品自体に価値があるのか?有名な作者が描いたことに価値があるのか?」ということについて生徒と共通理解を図り、展示、鑑賞で完了するのではなく、次のように進めることとしました。
(1)他者に自己の作品をより深く知ってもらうために、作品や技法・材料について紹介するパネルを作成する。
(2)相手校の作品について感想シートを送る。
美術の意義等についての生徒の考えの深まり
生徒の感想シートは、自分にはできない表現に出会ったことによる驚きや発見で溢れていました。また、相手校から届けられた展示の様子の写真や感想シートは、他者の目から見た自分の作品の評価や価値について再認識できる良い機会となりました。
美術の創造活動が多様化する今日、生徒自らがその意義について考えを深めていくことは重要です。今後も、その様な機会を多く設定していきたいと考えています。
実践NOTE543は以上です。
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