Eジャーナルしずおか第246号(抜粋)令和4年4月発行
ふじのくに「有徳の人」づくり大綱&静岡県教育振興基本計画(期間2022年度から2025年度まで)
静岡県では、本県の教育の理念や施策の基本方針を示した「ふじのくに「有徳の人」づくり大綱」と、大綱を踏まえて今後4年間で取り組むべき施策をまとめた「静岡県教育振興基本計画」を策定しました。
ふじのくに「有徳の人」づくり大綱
本県における教育の基本理念を全ての県民が共有し、社会全体で「有徳の人」づくりに取り組むため、「有徳の人」づくり宣言をします。
基本理念:「有徳の人」の育成 誰一人取り残さない教育の実現
「有徳の人」の育成に向けては、この地に暮らす誰もが人生の夢を実現し、幸せを実感するための基盤となる「誰一人取り残さない教育の実現」に全県を挙げて取り組んでいくことが重要です。“ふじのくに”における教育の基本理念を全ての県民と共有し、社会全体で「有徳の人」づくりに取り組みましょう。
「有徳の人」って、どんな人?
- 知性・感性・身体能力など、自らの個性に応じて「才」を磨き、自立を目指す人
- 様々なことに興味・関心を持ちながら、自らの個性を生かし、自らの知性・感性や身体能力等を高めるために努力し続ける人
- 多様な生き方と価値観を認め、自他を大切にしながら「徳」を積む人
- 生き方や価値観の違いを認め合い、他人を思いやる気持ちはもとより、自分や自分の住んでいる地域、人だけでなくモノや自然などを大切にする姿勢を磨き続ける人
- 「才」を生かし「徳」を積み、社会や人のために貢献する「才徳兼備」の人
- 自らの個性を生かし、自他を大切にする心を持って、時には助け合いながら、社会や人のために行動する人
「有徳の人」づくり宣言
一、「文・武・芸」三道の鼎立を実現します
一、生涯にわたって自己を高める学びの場を提供し、多様な人材を生む教育環境を実現します。
一、地域ぐるみ、社会総がかりの教育を実現し、「才徳兼備」の人づくりを進めます。
静岡県教育振興基本計画
「ふじのくに「有徳の人」づくり大綱」の基本理念を踏まえ、今後4年間で多様な人材を育成するために取り組む教育施策をまとめました。
第1章「文・武・芸」三道の鼎立を目指す教育の実現
子ども一人ひとりの個性に応じて才能を伸ばし、磨いていくためには、学問を学ぶ(文)、スポーツに親しむ(武)、芸術を愛する(芸)ことを等しく大切にする教育が重要です。
第2章未来を切り拓く多様な人材を育む教育の実現
多様性を認め合い、誰もが人間らしく、幸せに暮らせる社会が求められています。個人の能力や個性に応じて、それを伸ばしながら、地域社会で活躍する多様な人材を育てていくことが活力に満ちた地域づくりにつながります。
第3章社会総がかりで取り組む教育の実現
教育課題が多様化・複雑化しており、教育を学校の先生だけに任せることなく、地域の子どもは地域の大人が育てるという考えに立つことが必要です。
9つの重点取組
「知性」・「感性」を磨く学びの充実
「技芸を磨く実学」の奨励
学びを支える魅力ある学校づくりの推進
多様性を尊重する教育の実現
グローバル・グローカル人材の育成
高等教育の充実
生涯を通じた学びの機会の充実
社会とともにある開かれた教育行政の推進
地域ぐるみの教育の推進
令和4年度「教育行政の基本方針」
静岡県教育委員会では、新たな「ふじのくに『有徳の人』づくり大綱」に基づき、一人ひとりの中にある「才」と「徳」を高めることを通じて、本県の未来を担う「有徳の人」の育成を社会全体で推進していきます。令和4年度は、大綱を踏まえた新教育振興基本計画に基づき、誰一人取り残さない教育の実現に向け、人それぞれに異なる価値観や特性などの多様性を尊重しながら、他者と協調して新たな価値を創造する力の育成に向け、以下の取組を学校・家庭・地域の連携・協働の下、重点的に推進します。
1.「文・武・芸」三道の鼎立を目指す教育の実現
「知性」・「感性」を磨く学びの充実
児童生徒一人ひとりの能力を最大限に発揮させるとともに、学びに向かう力・人間性、他者と協働する力を高める教育を推進します。
- 個別最適な学び・協働的な学び・探究的な学びの深化
教員等が情報を共有し高め合うプラットフォーム構築、学校と地域をつなぐコーディネート人材育成 - ICT等の活用による新たな学びの展開
学びの個別最適化や校務効率化に向けた「スクールDX」推進とサポート体制の充実 - 乳幼児の教育・保育の充実
特別な配慮を必要とする幼児等への対応に係るモデル実証や幼児教育サポートチームの設置 - 子どもの読書活動の推進
「技芸を磨く実学」の奨励
児童生徒が生き方や仕事に対する価値観について考え、希望する進路を実現できる力を育みます。また、スポーツに親しむ環境づくりや体力の向上を図ります。
- 社会的・職業的自立に向けた教育の推進
キャリア・パスポートの活用等による、児童生徒が自身の能力を肯定的に捉える機会の創出 - スポーツに親しむ環境づくりと健康教育の推進
児童生徒の体力の現状分析を踏まえた改善、オリ・パラ選手の講演等による運動意欲向上
学びを支える魅力ある学校づくりの推進
- 高等学校の魅力化・特色化
安定した教育基盤の整備や、時代に対応した多様で魅力ある学びの場づくりを進めます。
多様な学習ニーズに対応するオンリーワン・ハイスクール、演劇・スポーツなど新学科設置等の推進
中山間地の小規模校における、地域と連携した生徒の全国募集
「ふじのくに魅力ある学校づくり推進計画」の取組検証と新しい県立高校の目指す姿の検討 - 教職員の資質向上及び学校マネジメント機能の強化・学校における働き方改革の推進
教員育成指標に基づく教職員の資質向上、第三者の視点も踏まえたコンプライアンスの徹底
学習・校務を可視化・連携させるシステム(LMS)を活用した働き方改革の検討 - 学校施設等の安全・安心の確保
学校施設の計画的な整備・建替え・長寿命化改修、特別支援学校の施設狭隘化解消
2.未来を切り拓く多様な人材を育む教育の実現
多様性を尊重する教育の実現
多様な価値観を認め、互いに支え合う教育を推進するとともに、課題を抱える子どもたちを誰一人取り残すことのないよう、支援体制の充実を図ります。
- 人権を尊重する教育の推進と人権文化の定着・多様な課題に応じたきめ細かい支援
ヤングケアラー等、困難を抱える児童生徒等への教育・福祉が連携した学びの支援
様々な課題を抱えた高校生の居場所(サードプレイス)として校内居場所カフェの設置 - 特別な支援が必要な児童生徒への教育の充実
人工呼吸器装用児の保護者付添いの負担軽減に向けたモデル事業の実施 - 外国人県民・外国人児童生徒への教育の充実
グローバル・グローカル人材の育成
グローバルな視点と地域への関心を併せ持ち、国際社会や地域に貢献できる人材を育成します。
- 国際的な学びと地域学の推進
県立高校への国際バカロレア教育の導入推進 - 優れた才能や社会に貢献する力を伸ばす教育の充実
- 地域産業を担う人材の育成
産業界から専門高校にCEOや技術者を招聘する「マイスター・ハイスクール」事業の推進
生涯を通じた学びの機会の充実
誰もが心豊かな人生を送れるよう、生涯にわたって学び続けられる環境づくりを推進します。
全世代に対する学びの機会の充実・誰もが共に学ぶ機会の充実
新県立中央図書館の整備推進、新しい生活様式やDXに対応した機能の充実
県立夜間中学(ナイト・スクール・プログラム)開設(R5)に向けた準備
3.社会総がかりで取り組む教育の実現
社会とともにある開かれた教育行政の推進
地域や学校・市町の多様なニーズ、社会全体の意見を反映した開かれた教育行政を推進します。
社会全体の意見を反映した教育行政の推進、市町と連携した教育行政の推進
地域ぐるみの教育の推進
複雑化・多様化する教育課題の解決に向け、学校、家庭、地域、企業等の連携・協働を進め、地域ぐるみで子どもたちの学びや育ちを支える環境づくりに取り組みます。
学校・家庭・地域の連携推進・家庭や地域における教育力の向上
地域住民・大学生等の協力により学習支援等を行う「しずおか寺子屋」の拡大
寄附金を活用したグローバル・グローカル人材育成等に向けた取組
ふじのくに「有徳の人」づくり大綱&静岡県教育振興基本計画及び教育行政の基本方針は以上です。
実践ノート489:バランスのよい朝食を目指して
伊東市立門野中学校 栄養教諭 西島智香子
伊東市では毎年朝食調査を実施しており、今年度10年目を迎えました。そこで、この1年間朝食をテーマに食に関する指導を行ってきました。
実態の把握
現在の門野中学校の朝食摂取率は97%です。継続して朝食調査と指導を行ってきたことで、10年間高値を維持しています。しかし、バランスのよい朝食、特に緑色の仲間の摂取率低値が、門野中学校の課題とわかりました。そこで朝食内容を改善し、自らを管理していく能力を身に付けることを目標に指導を行いました。
朝食を自分の事として捉える
まず中学1年生を対象とした指導を実施しました。小学校で学んできた知識に加え、エビデンスに基づいた知識の構築・定着を図り、朝食の大切さについて問いかけました。「大切だとはわかっていたが、理由はよくわかっていなかった。これからはバランスを意識していきたい。」という感想がありました。中学2年生対象の授業では、「自分で用意ができる」をテーマとした「朝食ビーワン(ビタミン)グランプリ」を開催し、朝食のバランスをより自分事として捉えられるように仕掛けました。ビタミン(野菜・きのこ類・果物)を取り入れることに抵抗がある生徒や、自分で用意するという点に悩む生徒もいました。しかし、他の生徒の意見を聞くことで、「これなら自分でも作れそう。」、「夜ごはんをリメイクしてみようかな。」などと様々なアイディアを出し、前向きに取り組みました。振り返りには、「今日考えた料理を家で試してみたい。」という意見が多く、「意外と簡単だった。次は違う料理に挑戦してみる。」と実践に移す生徒の姿が見られました。
小中一貫の健康指導
門野中学校区では、各校の養護教諭と協力し、毎月健康に関する内容の指導を行っています。市内の栄養教諭・栄養士の協力のもと、おたよりと映像を作成し、小中一貫の継続した指導を行っています。
読みたくなるおたよりの作成
朝食の内容は生徒だけの力では改善が難しい問題です。そこで、給食だよりを活用し、朝食について家庭への啓発を行いました。文章を簡潔にしたり、イラストやグラフを使ったりし、読みたくなるおたよりを目指しました。これからも生徒の実態把握と課題を明確にし、自らを管理していく能力を身に付けられるよう食に関する指導を実践していきたいと思います。
実践ノート489は以上です。
実践ノート490:ICT機器を活用した遠隔授業による学びの深化
静岡県立中央特別支援学校 教諭 田宮幸根
ICT機器を活用した遠隔授業
高等部1.類型(高等学校の教育課程に準ずる課程)は、学年ごとの人数が少ない(今年度は2,3年生それぞれ2名ずつ)ため、学習場面において細かなところまで教師の目が行き届くというメリットがあります。一方で、人数が少なく意見交換が弾まずに学びが深まりづらいという課題もあり、本校以外にも似たような状況が見られる学校があります。そこで、2年前から「ICT機器を活用した遠隔授業による学びの深化」をテーマに、東部特別支援学校の5名の生徒と交流授業を行ってきました。「慣れない相手とのコミュニケーションに消極的になる生徒が多い。」という事情も考慮して、Jamboardといいうツールを活用して交流することとしました。Jamboardに課題に対する自分の意見を書き込んだり、他者の発表資料に質問をしたりするなど、意見交換の場を設定しました。Jamboardでの意見交換は、いつでも書き込みができる点、相手や自分の顔が見られない点などがよい方向に働き、生徒は自分の意見を堂々と書き込んだり、積極的に質問したりできました。
数学・データの分析「ある年のソフトバンクはなぜリーグ優勝できたのか?」
数学では、野球のリーグ戦データ(勝利数や得点数など)を基に、勝利に影響しているデータはどれかを考えました。この日はZoomも活用して意見交換も行いました。自分の意見を持った生徒たちは、教師の「話し合ってごらん。」の声をきっかけに、自分の考えをしっかりと相手に伝えることができていました。また、話し合いを進めるにつれて、相手の意見と共通するものや散布図を見て相関の強弱の感じ方の違いを認識し、「より確かな関係の確認方法はないか。」と考える場面も見られました。遠くの違う教室でも、対話し思考する生徒たちの姿がありました。
今後の課題
学びの深化のためには、生徒が思考する必要があります。思考を促す発問の他にも、生徒が思考した内容を発信したり、他者の思考を受信したりして様々な意見に触れることで、お互いの意見の関係や違いに気付くことも大切だと思います。そのような気付きを生むためには、対話以外にもノートやワークシート等を見ることや他者同士の対話からヒントを得るといった力も必要になります。遠隔授業の中でこうした力をつけるために、私たち教師は、どのように指導すべきか考える必要があると思います。
実践ノート490は以上です。
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