静岡県教育委員会

“ふじのくに”の未来を担う「有徳の人」づくり

Eジャーナルしずおか第270号(抜粋)令和6年4月発行

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ページID1062917  更新日 2024年4月8日

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令和6年度 教育行政の基本方針

令和6年度 教育行政の基本方針

 静岡県教育委員会では、社会全体のウェルビーイングを目指し、他者と協調して新たな価値を創造する力の育成に向け、学校・家庭・地域の連携・協働の下、令和6年度は以下の取組を重点的に推進します。
 特に、誰一人取り残さない教育を実現するため、新たな時代を見据えた学びの変革や、個に応じた多様な学びの場の確保、教職員や児童生徒の人権意識の醸成に重点的に取り組み、本県の未来を担う「有徳の人」を社会総がかりで育成していきます。

1.「文・武・芸」 三道の鼎立を目指す教育の実現

1.「知性」・「感性」を磨く学びの充実

 児童生徒一人ひとりの能力を最大限に発揮させるとともに、学びに向かう力・人間性、他者と協働する力を高める教育を推進します。

個別最適な学び・協働的な学び・探究的な学びの深化
  • 「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善、STEAM教育の推進
  • 静岡式35人学級編制の継続、小学校高学年の教科担任制導入促進による指導の充実
  • オンラインプラットフォームの活用等による探究的な学びの一層の充実
ICT等の活用による新たな学びの展開
  • 教育データやAIの活用による指導や学びの高度化
  • 特別支援学校におけるICT活用の推進
  • 高等学校における高度デジタル人材の育成
乳幼児の教育・保育の充実
  • 特別な配慮を必要とする幼児等への対応に係るモデル実証や幼児教育サポートチームの活用
子どもの読書活動の推進
  • 成長過程に応じた本に親しむ機会の提供と読書活動の啓発

2.「技芸を磨く実学」の奨励

 児童生徒が生き方や仕事に対する価値観について考え、希望する進路を実現できる力を育みます。また、スポーツに親しむ環境づくりや体力の向上を図ります。

社会的・職業的自立に向けた教育の推進
  • キャリア・パスポートの活用等による体系的・系統的なキャリア教育の推進
スポーツに親しむ環境づくりと健康教育の推進、多彩で魅力的な文化・芸術の創造・発信
  • 部活動指導員等の充実、部活動の段階的な地域移行も含めた地域との連携・協働
  • 児童生徒の体力向上に向けた取組の推進

3.学びを支える魅力ある学校づくりの推進

 安定した教育基盤の整備や、時代に対応した多様で魅力ある学びの場づくりを進めます。

高等学校等の魅力化・特色化
  • 主体的・多様な学びの展開による「行きたい学校づくり」の推進
  • 地域の意見を踏まえた県立高校の在り方の検討と具現化
教職員の資質向上及び学校マネジメント機能の強化・教職員の働き方改革の推進
  • 子どもたちの伴走者として夢の実現へと導く教員の育成
  • 教員採用試験の見直しや教職の魅力発信による教職員の確保
  • 教職員のこころと体のサポートの充実、不祥事根絶に向けたコンプライアンスの徹底
  • 学校運営のあり方の見直し、小中学校へのスクール・サポート・スタッフの配置
  • クラウドサービスやAIの活用による「校務のDX」の推進
学校施設等の安全・安心の確保
  • 学校施設の計画的な整備・建替え・長寿命化改修、特別支援学校の施設狭隘化解消
  • 県立学校のトイレの洋式化、環境に配慮した施設整備の推進
  • 被災地訪問等による防災人材の育成、関係機関との連携による安全対策の推進

2.未来を切り拓く多様な人材を育む教育の実現

1.多様性を尊重する教育の実現

 多様な価値観を認め、互いに支え合う教育を推進するとともに、困難を抱える子どもたちを誰一人取り残すことのないよう、支援体制の充実を図ります。

人権を尊重する教育の推進と人権文化の定着
  • 教職員や児童生徒の人権意識醸成の更なる推進、生徒の意見を踏まえた校則の検証・見直し
多様な課題に応じたきめ細かい支援
  • 困難を抱える児童生徒への相談・支援体制の強化
  • 不登校児童生徒等に対する公民連携やICTの活用による多様な学びの場・居場所づくり
特別な支援が必要な児童生徒への教育の充実
  • 医療的ケア児への就学支援の充実
  • インクルーシブ教育システムの理念に基づく「共生・共育」の更なる推進
外国人県民・外国人児童生徒への教育の充実
  • 外国人児童生徒へのきめ細かな日本語指導、不就学解消の支援、キャリア形成の支援

2.グローバル・グローカル人材の育成

 グローバルな視点と地域への関心を併せ持ち、国際社会や地域に貢献できる人材を育成します。

国際的な学びと地域学の推進
  • 「ふじのくにグローバル人材育成基金」も活用した国内外での国際交流や留学の促進
  • 県立高校への国際バカロレア教育の導入によるグローバル教育・探究学習の推進
  • 地域の歴史や文化を知り、郷土のよさを実感できる学習機会の充実
優れた才能や社会に貢献する力を伸ばす教育の充実
  • SDGs教育やアントレプレナーシップ教育等の充実
地域産業を担う人材の育成
  • 高校生による新たな製品やサービスのアイデア創出など企業・大学等と連携した取組の推進
  • 農業・水産高校とAOI・MaOIプロジェクトとの連携
  • 産業界から専門高校にCEOや技術者を招聘する「マイスター・ハイスクール」事業の推進

3.生涯を通じた学びの機会の充実

 誰もが心豊かな人生を送れるよう、生涯にわたって学び続けられる環境づくりを推進します。

全世代に対する学びの機会の充実、誰もがともに学ぶことのできる機会の充実
  • 国内最高水準の機能を有する「新たな知の拠点」となる新県立中央図書館の整備
  • 県立ふじのくに中学校(夜間中学)における個に応じた学びの充実

3.社会総がかりで取り組む教育の実現

1.社会とともにある 開かれた教育行政の推進

 地域や学校・市町の多様なニーズ、社会全体の意見を反映した開かれた教育行政を推進します。

社会全体の意見を反映した教育行政の推進、市町と連携した教育行政の推進
  • 外部有識者等の意見を踏まえた、教育振興基本計画の取組の評価、施策への反映
  • 市町教育委員会への訪問等を通じた課題の聴取及び学校支援充実に向けた助言等
  • 「こども基本法」の理念を踏まえた、子どもの意見聴取及び施策への反映の推進

こども基本法とは?

こども基本法とは?

 こども基本法は、こども施策を社会全体で総合的かつ強力に推進していくための包括的な基本法として、令和4年6月に成立し、令和5年4月に施行されました。同法は、こども施策の基本理念のほか、こども大綱の策定やこども等の意見の反映などについて定めています。
※出典:こども家庭庁(https://www.cfa.go.jp/policies/kodomo-kihon/)

2.地域ぐるみの教育の推進

 複雑化・多様化する教育課題の解決に向け、学校、家庭、地域、企業等の連携・協働を進め、地域ぐるみで子どもたちの学びや育ちを支える環境づくりに取り組みます。

学校・家庭・地域の連携推進・家庭や地域における教育力の向上
  • コミュニティ・スクールの設置推進・運営充実と、地域学校協働活動との一体的推進
  • 大学・企業等との連携や寄附金の活用による主体的な学びを深める教育の充実
  • VUCAの時代を乗り切る豊かな人間性を育む体験活動や家庭教育の充実

実践NOTE537

「味わう」体験から食文化の継承を

裾野市立東小学校 栄養教諭 神山 絵未

はじめに

 子どもたちに「今日の給食どう?」と聞くと、「おいしい!」とすぐに返事が返ってきます。それだけでもうれしいものですが、どうおいしいのか、なぜおいしいのか、子どもたちが伝えられるようになるといいなと考え、「味わう」ことに着目した活動を実施したので紹介します。

だしの味を言葉にして伝える

写真:だしの味を確かめながら
だしの味を確かめながら

 11 月の和食の日。本校では、子どもたちに積極的に味わってもらうため、何のだしを使うか、どんな和食献立が食べたいか、投票してもらい献立を決定しました。


写真:味わいカードを放送する児童
味わいカードを放送する児童

 当日、うま味を紹介した動画を見て、投票で決定したかつおだしの味噌汁を食べた子どもたちは「うま味が分かった!」と感動していました。さらにその感動を、「味わいカード」という紙に書いてもらいました。「ほわぁ~とした味」や「ほんのりしたやさしい味」など、子どもたちから出てきたさまざまな表現を、給食委員会が1週間にわたり放送で紹介したところ、「うま味」や「だし」がどんなものなのか子どもたちの印象に残り、だしの存在を意識して食べるようになりました。

飲み比べから静岡茶のよさを感じる

写真:静岡茶についてTT授業をする筆者
静岡茶についてTT授業をする筆者

 子どもたちの中で、毎日急須で淹れたお茶を飲むのは4人に1人程度。そんな子どもたちに、静岡茶の歴史や文化を継承してもらうにはどうしたらよいか考えました。


写真:お茶の淹れ方をレクチャー
お茶の淹れ方をレクチャー

 静岡茶は、気候、地形、土地の利用、技法や技術の開発など、さまざまな要素に恵まれて発展してきました。そこで、静岡茶の特徴の1つである手もみ技法を例に、製法の微妙な違いによる味の違いを体験する活動として、浅蒸し茶と深蒸し茶の飲み比べを実施しました。色や味を比べることで「深蒸し茶の方が味が濃い」「浅蒸し茶の方が飲みやすい」など、それぞれの好みが出てきました。お茶を飲み慣れない児童も、自分の好みの味わいを見つけるきっかけとなりました。

おわりに

 食文化は、知識と経験両方を通して受け継がれていくと思います。子どもたちが、様々な「味わう」経験を通して食文化に興味を持ってくれたらと思います。


 実践NOTE537は以上です。

実践NOTE538

新たな共生・共育の可能性 ~高校生同士の言葉と空気感で~

静岡県立富士特別支援学校富士東分校 部主事 岩附 敦史

垣根のない、同じ『富士東』で紡がれる絆

写真:高校側に分校の説明をする筆者
高校側に分校の説明をする筆者

 本校は令和5年4月に富士東高校内に併設された特別支援学校の高等部分校です。両校は、県下で初めて同じ廊下で隣り合う形で教室が配置されました。校種の違いはありますが、両校の生徒は、同じ校舎で学び、生活を共にする『富士東』の仲間です。

高校生同士の言葉と空気感で

写真:両校生徒の文化祭でのひとコマ
両校生徒の文化祭でのひとコマ

 両校生徒の出会いは4月の対面式です。そこで富士東高生の代表から、「私たちと高校生同士の言葉で、高校生同士の空気感で学校創りを進めていきませんか。」というメッセージが送られました。この言葉が胸に深く響き、今も両者の心に浸透しています。

緊張のステージ…そして感動と感謝へ!

写真:ステージでの両校生徒の様子
ステージでの両校生徒の様子

 両校の生徒は、行事や授業、部活動等の交流だけでなく、ランチやラジオ放送(昼の校内放送)といった生徒企画の交流も行っています。特に印象深く、心に刻まれているのが6月の文化祭ステージです。全校生徒が見守る中で分校生がダンスを披露しました。本番直前、分校生は不安と緊張で胸が張り裂けそうでした。「富士東高生から、いったいどんな視線が私たちに向けられるのか…」と。しかし、ダンスが始まると、驚くことにステージ下の富士東高生が一斉にダンスに参加し、ステージを盛り上げてくれました。この一体感に分校生は感動し、感謝の絆を強く感じました。

心からの感謝を込めて、未来へエールを!

写真:作り方をレクチャーする分校生
作り方をレクチャーする分校生

 「富士東高の3年生に感謝の気持ちを届けたい。」という分校生の思いから、卒業式で付ける220 個のコサージュ製作が始まりました。それを知った高校側の生徒たちも可能なメンバーで製作に参加しました。両校生徒が協働で心を込めて製作したコサージュは、未来へと踏み出す門出をより特別なものにしました。
 4月からは、新しい1年生を迎えて2年目の学校運営がスタートします。物理的にも、心の面でも垣根のない『富士東』だからこそ出せる『自然な空気感』を大事にした共生・共育を、今後も両校の生徒と教職員で創っていきます。


 実践NOTE538は以上です。

実践NOTE539

球技指導の新たな取り組み(チェイスボール) ~運動量の把握だけでない道徳との横断的学習~

静岡県教育委員会教育委員 小野澤 宏時

はじめに

写真:西奈南小学校での授業風景
西奈南小学校での授業風景

 ラグビーを目にする機会は増えましたが、プレーするとなると用具の準備やルールの複雑さなど問題がいくつかあります。ルールを少し変更する事でラグビーのゲーム性を体感できるプログラムとなります。今回は、昨年度から三島市立南小学校と静岡市立西奈南小学校で実技講習会を行っている、「タグラグビーを基にした易しいゲーム」を紹介します。
 小学校中学年から取り組むことができ、体験した児童からは、「こんなに頭も体も使うことは今までやったことがなかった」といった感想が聞かれました。

チェイスボールとは

 鬼遊びからゴール型球技への系統性を持たせた学習教材として【鬼ごっこ(Chase tag)】と【球技(Ball)】を合わせた「チェイスボール」を発案しました。ラグビーを基にしたゲームのため、下記のような利点があります。

  • ボールを保持し移動できるためドリブルの獲得が必要ない
  • ボールの争奪をタッチで行う事で鬼遊びの延長としてスタートできる
  • ボールを繋ぐ事に焦点を当てられ、OFF THE BALL への考えを深める事で他のゴール型球技にも活用できる
  • ボ ールを落とさないで繋ぐためのパスの距離について考えられるようになる

チェイスボールのルール

≪準備≫

  • ラグビーボールを使用
  • フィールド内に複数のゴールをランダムに配置する ※ケンステップやマーカーなどを色ごとにまとめる

≪攻撃のルール≫

  • ボールを持ってフィールド内に設置したゴールを踏むと1点
  • 連続して得点を狙うことができる
  • 同じ色のゴールを連続して踏んでも得点は加算されない
  • ボールを持っている子は守備側2名にタッチされるまで攻撃することができる

≪守備のルール≫

  • ボールを持っている子を2名でタッチする、もしくはパスカットすることでボールを奪い返すことができる
図:チェイスボール
※たのしい学校 令和4年度冬号(大日本図書)より転載

他地域での取り組み

写真:「せたがや探究的な学び」での授業風景
「せたがや探究的な学び」での授業風景

(1)世田谷区
 文部科学省道徳科教育に係る評価のあり方に関する専門会議副座長である橋本ひろみ先生と共に「道徳との横断的な学習が可能な体育」として研究授業を行いました。道徳の視点での学習カード作成だけでなく、協同問題解決能力について介入前後の変化も調査しました。また全生徒にGPS を装着し授業内での移動距離、速度を客観的に把握する取り組みも行われました。

写真:ミャンマーでの教職員講習会の風景
ミャンマーでの教職員講習会の風景

(2)ミャンマー
 全日本空輸株式会社(ANA)が行う教育支援プロジェクトに採用され「仲間と考えながら協力する」をテーマにした授業実践を行いました。現在はミャンマー国内の情勢が不安定なことから中断していますが、みんなで考え解決するための教材として現地の先生たちに採用されています。


 実践NOTE539は以上です。

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