Eジャーナルしずおか第249号(抜粋)令和4年7月発行
教育とは人間の可能性を信じること
池上教育長に迫る!
令和4年5月現在で教育長就任2ヶ月が経過した池上重弘教育長。教育政策課が、池上教育長に2ヶ月経過しての所感や現在注目していることなどについて、インタビューしました。
教育長就任後、およそ2ヶ月経ちましたが、その所感についてお願いします。
現在は全体像をとらえている段階です。教育委員会の所掌業務は非常に幅広く、日によってやることが違うため、案件ごとに頭を切り替える、瞬発力を求められます。
現場主義を重視する私としては、早く現場の様子を見たり、先生方や子どもたちの声に耳を傾けたいですね。特に、土地勘の乏しい東部や伊豆の学校、特別支援学校の視察が必要と感じています。
また、探究活動を熱心に行っている学校や実践的な学びの機会を持つ学校を訪れてみたいです。学校と連携している地域の方々のお話も伺いたいです。
今後の教育について、注目していることを教えてください
キーワードは「多様性」。今までとは違い、子どもたちの多様な能力や資質、可能性を伸ばしていくように公教育も変わっていく必要があると考えています。「幸せな人生」は人によって多様です。多様な生き方に触れる切り口が探究活動だと思います。
学び直しの場として、夜間中学を必要としている人のニーズに応えることは、学ぶ人たちの未来を切り拓くと同時に、地域にとっては新たな人材の発掘や育成につながります。誰一人取り残さない教育を実現する上で、夜間中学における学び直しの機会は重要です。
また、DXは教育においても重要なキーワードです。湖西市や島田市で行政の総合計画策定に関わった経験から、デジタルの導入を目的化せず、トランスフォーメーション(DXのXにあたる部分)を進める必要があると考えています。デジタル化の先にどんな学びの在り方の変革があるのか。学びの関係性がフラットになる、子どもたちの気付きが教員の気付きにつながるなど、本当の意味でのワクワクする学びを教育のDXによって引き起こしたいと思います。
多文化共生を考える上で、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂)の2つの視点が重要です。互いの学び合いにより、教育の認識に大きな変化が生じます。効率重視の教育に変革をもたらす起爆剤となるでしょう。
教職員、地域の方へメッセージをお願いします。
教育とは人間の可能性を信じることだと思います。本人の力で人が変わっていく、ダイナミックな場面が教育の現場にはあります。教育者の喜びはその場面に立ち会えることです。先生方が子どもたちと向き合う時間をとれるよう環境を整えていくことが教育委員会としてのミッションであると考えています。
地域の方とともに「子どもたちを地域で育てていく」という、21世紀版の地域での子育て環境を作っていきたいと思っています。コミュニティ・スクールや探究活動、部活動等の場面でそれぞれの立場で関わっていただきながら、地域と学校の連携をこれまで以上に促進してゆくつもりです。
池上教育長のプロフィール
休日の過ごし方
2歳の娘と過ごすことが多い。ドライブやショッピング、朝ベビーカーに娘を乗せて近所を走るなど。
趣味
音楽演奏(特にジャズ)
マラソン(静岡マラソンでサブ4)
実践NOTE495
よりよく生きるための道徳性を育む道徳教育
天竜特別支援学校 教諭 長野蓉子
本校は隣接する病院で継続的な治療を受けながら学ぶ病弱特別支援学校です。よりよく生きるための道徳性を育むため、自分自身や人との関わり、集団との関わりなどについて特性に応じた道徳教育を進めています。
教科としての道徳の充実
特別の教科である〔道徳〕の授業を週に1回実施する小中学部では、特性に応じて自分の考えを深めることができるように話し合いや発問を工夫しています。人前で発言することが苦手であっても、心情円を動かして友達に見せたり、付箋や短冊に意見を記入して黒板に貼ったりして考えを表現できるようにしています。問い掛け方も工夫します。「誠実に生きる」をテーマにした授業では、大劇場へ行かないと決意した手品師について「自分の夢なんだから、男の子との約束は守れなくてもいいんじゃないかな。」と教師が問い返して児童の思考を揺さぶります。パペット(人形)を使うなど少人数でも話し合いが活発になるようにしています。
教師の研修では、授業の記録をもとに複数の教師の目で児童の発言や行動から変容を見取りました。「規則の尊重」をテーマにした授業において、「決まってるから。」と、“きまりだから守らなければならない”と授業の最初に考えていた児童がいました。しかし、授業が進むにつれ「みんなが平等に過ごせるようにきまりを守る。」と発言が変わってきました。きまりを守ることへの前向きな発言が増え、他者を意識した発言になっていきました。
道徳教育は学校教育活動全体で行う
道徳科の授業以外における道徳教育も充実させるため、重点的に指導する道徳的価値を教師同士で話し合ったり道徳性のあらわれている姿を共有したりしました。学校行事ではお互いの頑張りを認め合い、メッセージを送り合う活動、自立活動では「価値観ババ抜き」でお互いの価値観を知る活動を行いました。どちらも本校で大事にしたい相互理解に関する活動です。また、外気浴で自然と触れ合う姿、あいさつをして人と関わる姿、身の回りを整えている姿など、道徳的価値が日常生活にもあふれていることを教師自身が見つけ児童生徒とも共有しました。
実践NOTE495は以上です。
実践NOTE496
子どもたちの学ぶ喜びを目指す算数授業を目指して
森町立飯田小学校 教諭 梅田政希
心構え
「教師は授業で勝負」。初任者として研修を受けたとき、講師の先生が言った言葉です。教科や単元の学習を通して身に付けさせたい資質や能力を明確にして単元を構想し、協働的な学び、主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善が求められています。子どもが関わり合い、学級という集団で学ぶ喜びを味わえる授業を目指しています。
子ども主体の授業づくり
子どもたちの中に「解決したい」「やってみたい」という思いを持たせることが、主体的な学びをスタートさせる上で必要です。そのため、子どものつぶやきや発言を学習課題につなげること、授業の展開やまとめを行うことを心掛けています。
子どもたちの考えや表現の仕方は多様です。予想できない考えが出てくることもあります。例えば、子どもが既習事項を生かしてかけ算の求め方を説明する場面では、感覚的に答えが分かっていても言葉で表現することが難しいときがあります。そのため教師が子どもに問い返して思いや考えを引き出したり、学級全員で思考の流れを想像したりして、1人1人の考えを大切にしていきます。問題を解決していく過程で子どもたちの考えがつながって答えにたどりついた喜び、算数は面白いと感じられる楽しい経験を積み重ね、主体的に学ぶ姿を育んでいきたいと思います。
ICT機器の活用
目的に合わせてタブレットを活用し、ねらいに迫る手だてとします。算数の学習では、
問題解決のために式や図などを描き、根拠を基に筋道を立てて考えることがあります。描いたものをタブレットで撮影して画像を共有することで、学級全員の考えを知ることができるようになりました。発表している子の式や図などを手元で見ながら話を聞いたり、友達の考えと比較したりして、理解を深め、考えを広げる姿がありました。かけ算の求め方を発表する場面では、分け方に違いはあるものの既習の「分配法則」を生かした考え方をしている子が複数いることを確かめることができました。ねらいに迫る手だてとして、いつ、どのようにタブレットを活用することが有効的な活用の仕方なのかを考えていきたいと思います。
振り返り、今後につなげる
継続して続けていくもの、変えていく必要のあるものを明確にして、指導方法を改善していきます。求められているものを自覚して責任感をもち、子どもたちの学びを充実させるために授業改善に努め、成長を支えられるように挑戦していきたいと思います。
実践NOTE496は以上です。
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