第39回人生のエンディングに寄り添う、「法月株式会社」
第39回
こんにちは。静岡県中部地域局です。
地域活動に取り組む方々や、イノベーションを起こしている企業にスポットを当て、地域と関わるようになったきっかけや活動内容について、中部地域局の職員がインタビューし、みなさんが元気になる情報をお届けします。
第39回となる今回は、静岡市葵区に本店を持ち、多死社会の今日、遺族の方のニーズに寄り添って、様々な人生のエンディングの選択肢を紡ぎ出している、「法月株式会社」の法月寛文代表取締役にインタビューしました。
様変わりする人生のエンディング
「法月株式会社」は、創業60年を超える仏壇・仏具メーカーです。現在でも仏壇・仏具の製造は続けていますが、ここ数年の内に、「お墓に遺骨を納め、位牌を仏壇に置いて供養する」というこれまでの伝統が、大きく様変わりしています。
具体的には、遺骨をお墓に入れず、仏壇の下部に納めて、共に過ごしたいという御遺族の声が高まっていたのです。ただ、一人の遺骨は仏壇の中に収納できても、二人以上、例えば夫婦でのご遺骨となると収納するスペースが足りません。
遺族のニーズに寄り添うことで生まれる、心のよりどころ
そういった顧客の声に応えるため、当社では4年半前に「ウーナ」というサービス名称で遺骨供養のインターネット直販を始めました。そこでは遺骨の容量を小さくする粉骨サービスだけでなく、様々なサービスをメニュー化しました。例えば、遺骨の保管状態に応じて、通常の粉骨に減菌と乾燥を加えるコース、改葬などを行う方に適した洗骨コース、そして、御遺族自らの手で粉骨を行うことができるコースも用意してあります。これらを行う作業棟は、見学希望の方に公開しており、遺骨がどのように扱われているのか不安になることがないよう、配慮しています。
粉骨した遺骨は特許取得済みの真空包装を行い、個人差はありますが書籍くらいの大きさになります。この大きさであれば、遺骨の保管方法に多彩な選択肢が用意できます。
仏壇という木製品製造の本業を活かし、遺骨を収納できる手元供養用の化粧箱を様々なデザインで提供しています。お墓が遠くてお参りに行きづらい方や亡くなられたご家族とこれからも一緒に暮らしていきたい方などに特に喜ばれています。
さらに、散骨を希望される人も増えていることが分かり、ウーナでは粉骨から海への散骨までワンストップで対応できる体制を整えました。散骨ポイントも北海道から沖縄まで全国35か所以上から選べるようになっており、料金も散骨ポイントに関わらず一律の設定のため、消費者にわかりやすくなっています。
また、当社は約700の仏壇・仏具を取り扱う仏壇店・葬儀社・家具屋などの販売店と取引があり、それらの販売店顧客を通じて消費者にアプローチするルートも確立しました。
ご注文の増加によって多くのご遺族の方々の声が当社に届くようになったことで、それぞれが望まれる遺骨供養の姿が、本当に多様化していることがはっきりしました。
そこで、もう一つの供養のかたちとして、2024年10月、静岡市内の徳願寺の境内にて屋内型の納骨堂「みもる」を開設しました。
「みもる」は宗旨宗派不問の施設で、納骨後の管理料等も不要です。最初に決められた料金をいただけば、その後は追加料金が発生しない分かりやすい仕組みにしています。
納骨されるご遺骨に粉骨及び真空包装を施し、書籍型の木製収納箱に納め、納骨室に整然と並べてご安置します。御遺族が参拝された折には、専用端末に会員カードをかざすことで、デジタル遺影が画面に表示されます。
最近は家族と同様の扱いになっていることも多い、ペットの納骨も可能としています。
「みもる」にはスタッフが常駐していますので、初めての方や、御不明な点があっても対応できるようになっています。
また、「みもる」では、竹細工、駿河和染、賤機焼、茶卓など、静岡市の伝統工芸品を積極的に取り入れて、少しでも地場産品の振興につながるよう取り組んでいます。
この「みもる」が、当社が取り組んできた遺骨供養における一つの到達点だと感じます。遺骨供養の多様化によって、判断に迷っている御遺族は全国にいらっしゃると思っています。静岡市の「みもる」が軌道に乗ることができれば、他の求められる地域に同様の施設を広げていき、多くの方が望む供養のあり方を叶えられるようになれれば幸いです。
多死社会の今、私たちにできることを
当社は遺骨供養においてこれまで多くの独自の取組を確立してきました。現在、静岡と東京の支社で年2,500件ほどの取扱いがありますが、現在の多死社会の進行を踏まえると、まだまだ皆様のニーズに応えきっていないという思いです。
供養への関わり方は、遺族の方によって多種多様に広がっており、お墓に入りたい方もいらっしゃれば、お墓から離れたい方も増えています。各個人が葬送のスタイルを決めるようになったことが、この令和の時代の最大の特徴だと考えています。
しかし、個人に葬送のスタイルが委ねられるようになったからこそ、遺骨を前にして途方に暮れる遺族の方が多いことも事実です。遺骨をどのように供養したらよいか分からない方、迷っている方に、ぜひ当社のサービスを知っていただきたいと思います。
当社のサービスを利用された御遺族の方から、
「不安が消え去り、安心できました」
「自分の思い描く供養ができて、今は喜びを感じています」
といった御感想をいただくと、当社にとっても励みになり、次へのモチベーションにつながります。亡くなった方に供養ができたという安心感が、今生きている遺族の方の幸せにつながっていることを実感できることが、何よりの喜びです。
人生のエンディングを通じて、人の幸せと地域振興に貢献できれば、それが当社の存在価値であり、事業に取り組む使命感につながっていくと考えています。
静岡市の、ここが好き!
静岡市の木工製品のルーツは、徳川家康公が駿府の街に職人を集めたことに起因します。この歴史がなければ、当社も存在していなかったでしょう。
静岡市には、海・山・川など美しい自然が揃っており、交通の便も良く、いいところしか思い浮かびません。
こうした恵まれた地に根付いた伝統工芸品もまた将来に渡って残していけるよう、努力していきたいと考えています。
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