第21回静岡の伝統木材工芸が、超精細模型に進化
静岡市駿河区から独自の精密木製模型を展開する株式会社ウッディジョー
こんにちは。静岡県中部地域局です。
地域活動に取り組む方々や、イノベーションを起こしている企業にスポットを当て、地域と関わるようになったきっかけや活動内容について、中部地域局の職員がインタビューし、みなさんが元気になる情報をお届けします。
第21回となる今回は、静岡市駿河区に本社を構え、極めて精密な木製模型を展開している、株式会社ウッディジョーの常木則男代表取締役にインタビューしました。
レーザーと手作業の分業から生まれる、精密木材模型
ウッディジョーを立ち上げる前は、県内の模型会社に木製帆船や、プロペラ飛行機などの模型を納品していました。しかし、納品先が倒産してしまい、「このままでは国内産の帆船模型キットがなくなってしまう。それでは情けない」という思いからウッディジョーの設立を決断しました。倒産した会社の事業を引き継ぐわけですから、周囲や部品の生産会社の方には随分反対されました。木製模型は1社ですべて作れるものではなく、例えば帆船模型であればネットや金具など、8社もの部品生産会社が関わっているのです。
そんな中でも、私は確かな品質の製品を作れば市場に食い込んでいけるという見込みがありました。海外のメーカー製の模型は、パーツが抜け落ちたまま販売されていることなどが当たり前で、「パーツが足りなければお客さんが自分で作ればいい」という考え方なのです。海外ではそれで認められても、日本では通用しません。私はあえてコストをかけて、部品を小分けにして袋に入れ、台紙に並べて接着し、ひと目で部品の欠落が分かるようにしました。こうした配慮と工夫が、製品に対する信頼を高めていくのです。
また、ウッディジョーではレーザー加工機を導入したため、より精密な部品を生産することができるようになりました。模型の完成度も高まって、組み立てやすい製品になったのです。ただ、従来の木工機械を使った職人の手作業による部品も欠かすことができない当社製品の特長です。レーザー加工部品と職人の手作業による部品、その両方がうまく整合するように、誤差を小さくしていくことについては、より繊細な技術が必要です。
木材を扱う上での苦労と工夫
木はプラスチックと異なり、収縮や反りが生じる自然の材料です。
また、同じ種類の製品でも、色味が異なったり、木の節が残ったりして、それを理由にお客様からクレームや、交換の要望が入ることもあります。
自然材を使用した商品なので、そうした違いもオンリーワンの証拠として楽しんでいただきたいのですが、お客様が作成するに何か月もかかる商品ですので、アフターフォローにもできるだけ力を入れています。
また、材料となる木には60から80種類の選択肢があり、その木片を並べた見本とにらめっこしながら、どの木材を採用するか、考えています。ただ、材質にこだわりすぎると加工がうまくいかないこともあり、そのバランスをとるのも大変な作業です。
実物に近い仕上がりを生み出す工夫
実物により近い模型を世に出したいのは当然ですが、実物をそのまま縮小すればよいというものではありません。たとえば、城郭の高欄の手すりなどは、真っ正直に150分の1の太さにすると、組み上げるには細くなりすぎます。お客様に違和感を与えずに、製品としての品質や強度を保っていくことが難しいポイントです。
製品化の前には、もちろん、現物を確認に行きます。岐阜城の模型の企画をしていた際に、市の許可を得て城の寸法を測り始めたところ、警備員が飛んできて怒られたこと、平等院鳳凰堂の朱の色目が違うとお客様から指摘があり、人混みの中で色見本と合わせに行ったことなど、思い出に残っています。
現物を調査し、それをどう製品に落とし込んでいくか、その過程は大変ですが、とても楽しいものです。
木製なのに「プラモデル」と呼ばれる?
ウッディジョーでは、地域の小中学校の社会科見学も受け入れています。
静岡市は、江戸時代から木材工芸の盛んな都市で、実は私も、静岡浅間大社の棟梁を務めた者を先祖に持っています。
そうした歴史と伝統を持つ街であることを伝えていきたいと思うのですが、若い皆さんにとっては、模型すなわちプラモデルという先入観があって、ウッディジョーの製品が木でできていることを知ると、驚かれます。
ウッディジョーのお客様は年配の方が多いのですが、若い人にも木製模型に興味を持っていただけるような、手軽な入門製品にも力を入れています。
そうしたことが、木材工芸の火を絶やさないことの一助になればと思っています。
お客様が現物を見に行きたくなるような模型を作りたい!
ウッディジョーには、お客様から様々な建物の製品化について、ひっきりなしに要望が舞い込んできます。ひとつの製品を発売するのに、3~4か月の企画と試作期間がかかりますので、すべての要望に応えていくことはできませんが、できるだけ喜んでもらえる製品を作りたいと努力しています。
例えば、模型を作ることで、実際にその建物を見に行きたくなるような、そんな気持ちの盛り上がりを提供できる製品ならばよいと思っています。
また、静岡にゆかりの深い商品、例えば駿府城なども製品化したいと考えています。駿府城は図面が現存しないことが、復元の妨げになっていますが、私個人としては、城の図面のような軍事上の機密書類が残っている方が不思議だと思っています。
既に製品化した安土城では、織田信長なら城にどんな狙いや仕組みを持たせただろうと考えながら、再現しました。
静岡市のここが好き!
優れた伝統や文化を持つ静岡市ですが、歴史的なランドマークとして駿府城天守閣が再建されると、もっと人が集まる街になると思います。
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