第27回マグロへの感謝から始まるSDGsの取組 フジ物産株式会社
マグロへの感謝から始まるSDGsの取組 フジ物産株式会社
こんにちは。静岡県中部地域局です。
地域活動に取り組む方々や、イノベーションを起こしている企業にスポットを当て、地域と関わるようになったきっかけや活動内容について、中部地域局の職員がインタビューし、みなさんが元気になる情報をお届けします。
第26回となる今回は、静岡市清水区に本社を構え、全国各地の漁港や、ケープタウン、ジャカルタといった海外にも拠点を展開し、石油製品と漁業用餌料を販売しているフジ物産株式会社海上部の嶋田綱吉課長と、大井賢香様、堀江優衣様にインタビューしました。
命がけの遠洋漁業 マグロ漁船との信頼関係から始まったSDGs
当社の海上部では、遠洋漁業に出ているマグロ漁船に、餌料、船員さんの食料、船の燃料等を補給しています。
遠洋マグロ漁は、1年、長い場合は2年間母港に帰れないほどの長期に渡る、命がけの仕事です。その中で適切な補給ができないことは死活問題となりますので、漁船が困ることのないように、確実な補給を行っています。
当社は創業から今年で66年目を迎えますが、漁船の皆様との長いお付き合いの中で、なんでも相談し合える信頼関係が醸成されてきました。
現在当社が取り組んでいる、マグロの廃棄部位の活用も、漁船からの相談から始まり、なんとかしたいと考えて試行錯誤している事業です。
マグロは獲れたらすぐに、船上で血抜きが行われます。その際に、尾ひれが切り取られるのですが、そこは従来利用されずに廃棄されてきました。しかし、実はこの尾の部分にも肉が残っていて、しかもコラーゲンを多く含む、とても栄養豊富な食材なのです。他にも、マグロの胃袋は、とてもおいしい料理に変身します。
そこで当社では尾ひれの肉を使ったカレーを作ったり、クラウドファンディングを活用して胃袋のチャンジャ(塩辛)をクラフトビールとのコンビでお届けするプロジェクトを成功させたりしました。しかし、現在の新たな部位活用はまだ単発的であり、定番商品に成長させていく必要があります。まだクリアしていかなくてはいけない問題はありますが、将来は学校給食にマグロの尾の身を出してもらえればと考えています。
こうした取組は、新たな利益を発掘することはもちろんですが、根底にはマグロと漁師の皆様への感謝と敬意の念があります。大切なマグロの命をもらった責任を果たすことが、SDGsのうち、生産者責任と利用者責任を果たすこと、そして海の豊かさを守るという目標につながっていくと考えています。
愛着ある地域への恩返し
マグロの街と言えば、読者の皆様はまずどこを思い浮かべるでしょうか。
静岡県内であれば、焼津市が一番に挙がることが多いかもしれません。
しかし、貿易港のイメージが強い清水港も、マグロの水揚げが多い港なのです。
そのことを多くの方に知っていただき、地元を盛り上げたい気持ちから、当社は、清水のマグロ祭の実行委員も務めています。
清水の強みのひとつとして、水産加工業社が多く、マグロを多彩な食材に昇華させることができます。それは、今まで廃棄部位だった尾の身なども同じです。
当社では、クラブスポンサーを務めている清水エスパルスの試合の際に尾の身を使った商品を試験販売したり、久能のスペイン料理店「サングリア」さんに納めて香草焼きとしてメニュー化していただいたりしています。
また、当社が60周年を迎えたことを機に、「TUNA-GO!しみず」というプロジェクトを展開しています。これは、マグロを切り口として、清水という土地の愛着を呼び起こし、地域を盛り上げることを目的としています。
最近では、マグロのオリジナルキャラクター「つなぐくん」が主役の絵本を作成し、清水区内の幼稚園、保育園、及びこども園にお配りしました。
また、幼稚園で様々な種類のマグロを食べ比べする「マグロソムリエ」大会を開いて、そのおいしさを知ってもらう取組も行っています。
人は、幼い頃に楽しかったと感じた場所には帰ってきたくなるものです。子どもの皆さんに、清水についての楽しい思い出を持ってもらい、一度は清水を出た人もいつかは戻ってきて、この街を元気にしてもらいたいと考えています。
また、清水区堂林にある数寄屋造りの故会長宅をリノベーションし、地域の方のミーティングルームに活用していただいたり、連携しているスポーツチームによるマグロのフライの販売会を開いたりしています。
こうした活動が、少しでも地域への恩返しになってくれれば嬉しいですし、SDGsのカテゴリーのうち、「質の高い教育」と、「パートナーシップ」に結びつく、地域の持続可能性に貢献できる可能性を持っていると信じています。
アスリートの可能性を生涯発揮してもらうために
当社では、アスリートのセカンドキャリアを応援する事業を構想しています。アスリートの方々には、辛い練習に耐えてきた精神力をはじめとして、優れた能力があります。しかし、例えば日本のプロサッカー選手の平均競技寿命は4年しかありません。多くの選手は、20代半ばで競技生活を終えていることになります。
こうした若い元選手は、ビジネスの世界で働く経験がないために、社会でどう活躍すればよいか分からなくなってしまいます。
その経験が不足している部分をサポートして埋めていくことにより、ビジネスでの活躍も大いに期待できます。そうした元アスリートに清水へ移住してきてもらい、地域を元気にしてもらえればと考えています。
また、高校生などこれからのアスリートのために、例えば選手の寮でマグロを食べてもらう手助けをしたいとも考えています。マグロは優れたたんぱく質を含む、アスリートにぴったりの食材です。成長期の学生の皆さんに、ぜひ役立てればと思います。
当社は皆仲が良く、社員が社長にアイデアを聞いてもらうハードルも低い、風通しの良さがあると自負しています。新しい取組も、当社の基準の「社会に必要とされていることであれば、最初はうまくいかなくても、継続していけばきっと成功する」という考え方に照らして、積極的にチャレンジしていける雰囲気があります。
当社が漁船の皆様と長い時間をかけて信頼関係を築いてきたように、短期的な利益にとらわれずに、真に必要とされていることに取り組んでいくことが大切だと考えています。
静岡市清水区のここが好き!
自宅のある三保街道から見える富士山は、毎日見ても飽きない美しさです。
また、清水港の江尻埠頭を基地として、出港・帰港するマグロ漁船は迫力があり、実にかっこよく感じます。
そして、よく晴れた清水港で見たマグロ船からの水揚げに伴うマグロツリーは、青空と富士山を背景にもうもうと冷気を立てる冷凍マグロの、なんともいえない感動を与えてくれた、忘れられない光景です。
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