第17回「ダム際ワーキング」でイノベーション
川根本町で「ダム際ワーキング」に取り組む沢渡あまねさん
こんにちは。静岡県中部地域局です。
地域活動に取り組む方々にスポットを当て、地域と関わるようになったきっかけや活動内容について、中部地域局の職員がインタビューし、みなさんに情報をお届けします。
第17回となる今回は、川根本町の長島ダムふれあい館で「ダム際ワーキング」という新しい働き方を提案する、あまねキャリア株式会社代表取締役CEO沢渡(さわたり)あまねさんに、インタビューしました。
ダム際ワーキングのきっかけ
沢渡さんが提唱するダム際ワーキングは、文字通りダムの傍らでテレワークに取り組むことです。沢渡さんは元々ダムが大好きで、仕事として働き方改革や組織改革の企業支援を行いながら、休日にはダムを訪れていました。
そんな沢渡さんがダム際ワーキングを始めるきっかけとなったのは、2021年7月に、静岡県森町にある太田川ダムで、静岡新聞SBS主催のオンラインイベント「地方都市と企業の未来地図について考える」セミナーにパネリストとして参加したことです。
それを見た、川根本町にサテライトオフィスを持つ、株式会社経営参謀の高梨取締役から長島ダムの紹介を受け、活動のきっかけが生まれました。
長島ダムには、地域に開かれた交流施設のふれあい館があり、その一角でワーケーションができないか、国土交通省、川根本町と共に模索し、令和4年4月に、ダムを望めるロケーションにワークスポットを立ち上げることができました。
なぜダム際ワーキングなのか
現在、ワーケーションの誘致が全国でブームになっています。東京から近い、空港が近くにある、有名な観光地があるといった地域が有利な中で、あえて奥地にあるダムでワーケーションを行う理由を、沢渡さんは次のように述べます。
まず、ダムに付属した施設を使えば、新たにハコモノを作る必要がなく、サステナブルだということ。いい意味でなにもなくて、仕事に集中できること、緑に囲まれていて緑視率が高く、脳の活性化につながること、自然に包まれたダム際を歩くとアイデアが生まれやすいこと、また、自然の中で会議を開くと能率が上がること、さらには、電波の届かないエリアであってもデジタルデトックス(デジタル断ち)を行い、構想や作業や読書に集中することができることなど、利点は尽きません。
「越境思考」でイノベーション
全国には数千基ものダムがありますが、このインフラを地域に解放していくことで、新たな可能性が生まれると、沢渡さんは考えています。
長島ダムふれあい館のような、地域に開かれた施設を持つダムを、企業が利用することで地域との交流が生まれていきます。都市部の企業の人が持つデジタルなどの知見と、山間部の人が持つ農業などの知見は、それぞれがお互いにとって新鮮なものであり、「お互いないものがある場所」として刺激を与えあうことができます。こうした「越境思考」が、地域の停滞を打破してイノベーションを生むきっかけになるのです。
また、地域の価値を決めるのは、意外にも地域の住民ではありません。訪れる相手が決めるのです。地域の価値を高めるためにも、閉鎖的にならずに外に向けて開いた地域にしていくことが大切です。
川根本町でチャレンジしていきたいこと
川根本町は、人口が多すぎないことが、かえって意思決定の早さにつながっていて、様々なチャレンジができる予感がしています。
長島ダムふれあい館に、人材開発や組織開発の専門家を集めてミーティングを開いたり、大井川鐵道とダム際ワーキングのコラボを行いたいと思います。
具体的には、駅の空きスペースにコンテナを設置し、無人店舗を運営すれば、この地域に不足している飲食物を販売することができます。コンテナは災害時には防災資材倉庫として運用するなど、状況に応じてフレキシブルな役割を持たせれば、何倍も地域の役に立ちます。
そして、人々がダムを利用することで、ダムが地域を守っているということと、普段目に見えにくいインフラの維持の大切さを知ってほしいと願っています。
川根本町のここが好き!
まず、なんと言っても長島ダムがお気に入りです。それから、接岨峡と寸又峡。大井川湖上駅も大好きです。
雰囲気で言うと、都市部にない澄んだ空気、澄んだ水、澄んだ人たちがいることです。
都市部から離れているからこそ、何か尖ったものを打ち出して、聖地化できると思います。
長島ダムに行くまでの道のりを車で走っていると、環境の変化を感じ、心がリラックスして良い発想が浮かびます。変化が同乗者とのコミュニケーションを深化させ、考えをまとめていき、ダムについた時には仕事の結論が出ていることもあります。
都会の固定された景色から解放されることで、イノベーションにつながる発想を生むことのできる地域だと思っています。
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