働き方改革先進企業(株式会社たこ満2)
菓子製造・販売
株式会社たこ満
- 所在地
- 静岡県菊川市上平川565-1
- 業種
- 菓子製造・販売
概要
第3回目は菊川市を本社拠点に菓子製造・販売(店舗は静岡県内、東京、沖縄)を行っている株式会社たこ満様での視察研修を行いました。
〈内容〉
- オリエンテーション
- 工場見学
- 講演 相談役 平松きよ子 氏
- 質疑応答
「マナーを身につけて、同級生に誇れる自分であってほしい」という願いから接遇指導
JR掛川駅からバスで視察先へ向かうおよそ20分間、職場づくりアドバイザーである富田哲弥氏によるオリエンテーションとして研修のポイントのお話などをうかがいながらのスタートとなりました。
本社と工場を構える会場に到着すると、社屋の外にも焼き菓子の甘い香りが漂います。さっそくその焼き菓子工場の見学から始まりました。焼き物のラインでは、昼専用のパートさんによる昼交代シフトが組まれていたり、また和菓子の製造部門では朝8時の出荷便に向けて、早朝パートさんが3時から勤務するなど、時間帯を短く区切ることで従業員の方にとっても生活スタイルに合った勤務が可能となっています。
次に本社内にて、平松きよ子相談役による講演が始まりました。平松相談役は現在社長・平松季哲氏の奥様であり、1975年(昭和50年)に嫁いでこられてから、法人化や各地店舗出店など、まさに会社としての組織づくりと人材育成の歩みを社長と二人三脚で取り組んでこられた方です。
同社には『たこ満心得』というものがあります。あいさつ、身だしなみ、衛生、公私のけじめ、原価意識、しつけなど、40項目近い内容が綴られているもので、その一つひとつを身をもって示してきたのが平松相談役です。平松相談役は会社にとって道徳の大切さに気づいたいきさつをお話しくださいました。
昭和50年代、北海道の銘菓会社として全国に知られる「六花亭」は、地元銀行よりも就職人気が圧倒的に高い企業であったのに対し、当時のたこ満は従業員の定着率が悪く、高校の求人担当の先生から振り向いてももらえない状態だったとのこと。やっと入社してきても、行儀や素行が悪く、社内でのけんかや摩擦も絶えない状況だったと振り返ります。
そんな中で高校を中退して入社してきた女性を平松相談役は妹のようにかわいがったそうです。その女性は同年代の高校生に対して「自分は学校に行っていないから恥ずかしい」と働く姿を見られるのを避けたといいます。
「そこで、せっかく入店してくれたこの少女が成人式を迎える時には、同級生に恥じないマナーを身につけていただこうと思い、朝夕のあいさつ、お茶出し、お見送り、玄関への打ち水など、仕事を通して学べるようにと取り組みました。それが今のたこ満の接客の基本になりました」。今ではお客様から「たこ満さんの子をお嫁さんにほしい」と言われるほど、その成果はお客様にもしっかりと伝わっているようです。
相手に関心を持ち、何気ないひと言を大切にするコミュニケーションが良き風土を育む
経営理念をどう浸透させるかは、どの企業にとっても課題の一つでしょう。同社では具体的な取り組みが行われていることから、その例をご紹介いただきました。
1.デイリーニュースの発行
全店20店舗では従業員の方々が販売日報を毎日記録しています。毎日200程の情報が本社に集まり、貴重な内容も多いことから「全従業員へ伝えよう」と、販売日報と工場からの情報をピックアップした5つ~7つほどの情報を「デイリーニュース」として発行。挙がった意見に常務からアンサーが加えられ、集約した情報と答えを全従業員が毎日共有する仕組みができています。
2.経営計画書の活用
一年の間に従業員の方が経営計画書を開いて見る機会は、一般的にはあまりないのが現状ではないでしょうか。しかし同社の経営計画書には、従業員の方が掲げる月間目標と年間目標が記載され、業務の振り返りの書き込みから、意見や提案の書き込みなど、日常的に使用するものと認識されています。遠慮なく書き込まれた意見や提案に、部長、常務、社長が耳を傾けて答えを返すことで、風通しのいい風土も築かれています。
次に、社内におけるコミュニケーションの工夫もお話しいただきましたので、代表例をご紹介します。
1.部署別ミーティング
「就業形態に関わらず、社員もパートも同じ部署のスタッフとして考えを共有しよう」と、月に1回、1時間の部署別ミーティングを実施。売上目標、イベント予定、お客様へどんなお声がけがいいかなど、問題点や意見、気づいたことを一緒に話す場を設けています。
2.「ありがとうカード」の活用
同社での人と人とのつながりの濃密さをよく表しているのがこの「ありがとうカード」です。従業員同士で、伝えたいありがとうを複写式のカードに書いて、一枚を相手に渡し、控えを自分の経営計画書に貼ります。この取り組みは、何かをしてもらうことを待つのではなく、「同じラインで今日も働いてくれてありがとう」「(研修で講師をした時には)時間を使って学んでくれてありがとう」と、自発的に感謝を感じる心に気づく、という点がポイントです。
もらった人を讃えるというよりも、「ありがとうと思った人、書いた人に価値がある」という意味を知ってもらえたらと平松相談役はおっしゃいます。
年間で1500枚を書く人、2000枚近く書く人もいるなど、心と心が通い合う職場づくりが日々行われています。
「社会のお母さん」として、時に温かく、また時に厳しく、新入社員を育成
平松相談役はご自身を「社会のお母さん」と位置づけていらっしゃいます。「だから社会経験をしていない新入社員を預かったら、社会人として人生を歩む手助けをする責任を感じます。そのため、入社3ヶ月を重要ととらえ、やる気があるうち、真っ白な心のうちに、会社の守るべき規律を先輩が指導できるように場づくりをしています」。
入社後すぐの新入社員研修は二泊三日で、組織図から商品知識、マナーを集中して習得。その後は3店舗1工場でのOJT期間として、1〜2年先輩がパーソナルコーチとして指導にあたります。新入社員同士の絆づくりのための2度の合宿では結び付きを強め、6月の発表では「どんな販売員になりたいか」の意思表明が新人としての最終テストです。「新入社員みんなが本気で戦って、達成感を持ってスタートを切ることができるよう、先輩社員も上司も一生懸命一緒に取り組みます」。
また従業員のうち女性が8割を占める同社は、仕組みづくりだけに頼らないよう、若い世代らしい心配り、年上世代らしい優しい言葉かけなど、女性の良さを引き出すムードづくりも行われています。「結婚や出産後も、また弊社で働きたいと言ってもらえることが多いのは本当に嬉しいことです。まだまだ工夫ができないか、みんなで考えていきたいと思っています」と、はつらつとした笑顔で語ってくださいました。
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