修理業の業務について
1 修理の定義
医療機器の修理とは、故障、破損、劣化等の箇所を本来の状態・機能に復帰させること(当該箇所の交換を含む。)をいいます。故障等の有無にかかわらず、解体の上点検し、必要に応じて劣化部品の交換等を行うオーバーホールも修理に含まれます。この修理を業として行おうとする者は、事業所ごとに地方厚生局長若しくは都道府県知事許可を得なければなりません。
修理に該当しないものとして、
- 清掃、校正(キャリブレーション)、消耗部品の交換等の保守点検
- 修理業者を紹介する行為のみを行う場合
があります。ただし、修理業者を紹介することによって、自らは実際の修理を行わない場合であっても、医療機関等から当該医療機器の修理の契約を行う場合は、その修理契約を行った者は修理された医療機器の安全性等について責任を有することになるので、修理業の許可が必要になります。
また、医療機器の仕様の変更のような改造は修理の範囲を超えるものであり、別途、医療機器製造業の許可が必要です。
なお、医療機器製造業者(包装・表示・保管のみを行う製造業者を除く)自らが製造をする品目(承認整理等により品目を廃止していない品目であり、製造販売承認、認証又は製造販売届出に当該医療機器製造業者の製造所が記載されている品目)の修理に関しては、別途医療機器修理業の許可は必要ありません。
2 許可の区分
修理業の許可は、薬機法第40条の2第2項により、厚生労働省令で定める区分(以下「修理区分」という)に従い、事業所ごとに与えられます。
修理区分は、施行規則第181条の規定に基づき、特定保守管理医療機器の修理及び特定保守管理医療機器以外の医療機器の修理についてそれぞれ9つの区分に分けられます。
そのため、修理業者は、修理する物及びその修理する方法に応じた区分に従った修理業の許可が必要となります。例えば、第一区分に該当する特定保守管理医療機器と特定保守管理医療機器に該当しない医療機器の両方を修理する場合は、特定保守管理(以下「特管」という。)第一区分と、特定保守管理医療機器以外の医療機器(以下「非特管」という。)第一区分の許可を取得する必要があります。
特定保守管理医療機器の修理 | 特定保守管理医療機器以外の医療機器の修理 |
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特管第一区分:画像診断システム関連 | 非特管第一区分:画像診断システム関連 |
特管第二区分:生体現象計測・監視システム関連 | 非特管第二区分:生体現象計測・監視システム関連 |
特管第三区分:治療用・施設用機器関連 | 非特管第三区分:治療用・施設用機器関連 |
特管第四区分:人工臓器関連 | 非特管第四区分:人工臓器関連 |
特管第五区分:光学機器関連 | 非特管第五区分:光学機器関連 |
特管第六区分:理学療法用機器関連 | 非特管第六区分:理学療法用機器関連 |
特管第七区分:歯科用機器関連 | 非特管第七区分:歯科用機器関連 |
特管第八区分:検体検査用機器関連 | 非特管第八区分:検体検査用機器関連 |
特管第九区分:鋼製器具・家庭用医療機器関連 | 非特管第九区分:鋼製器具・家庭用医療機器関連 |
(医療機器の修理区分の該当性については、平成17年3月31日付け薬食発第0331008号厚生労働省医薬食品局長通知「医療機器の修理区分の該当性について」を参照)
3 修理業者の作業管理及び品質管理
医療機器修理業者や責任技術者は、製造業のGMP/QMSと同様に、修理業務に関する作業管理及び品質管理を行う義務があります。以下、その内容について説明します。
注)なお、特定保守管理医療機器の修理業者のみに関係する部分には「(特管)」と記載しています。
(1)文書作成(特管)
医療機器修理業者は、事業所ごとに、次に掲げる文書を作成しなければなりません。
(ア)業務の案内に関する文書
実際にどのような医療機器の修理を行うかといった、医療機関等の顧客に対する「業務案内書」を作成します。
<記載事項>
- (a)修理業を行う当該事業所の名称及び所在地
実際に修理を行う事業所がどこであるかを明確にします。 - (b)責任技術者の氏名
修理を行う事業所の修理業務の責任者を明確にします。 - (c)修理業許可番号
都道府県又は地方厚生局の許可を受けていることを示す必要があります。 - (d)許可を受けた修理区分
修理を行うことができる医療機器の範囲を示す必要があります。
(イ)修理手順その他修理の作業について記載した文書
取り扱う医療機器の種類ごとに実際に修理を行うための「修理手順書」を作成する必要があります。
なお、製造販売業者等から提供を受けた修理の手順に関する文書を備え付けることでも構いません。
(2)適正な修理の実施(特管)
医療機器修理業者は、「業務案内書」及び「修理手順書」に基づき適正な方法により医療機器の修理を行わなければなりません。
(3)苦情処理
医療機器修理業者は、自ら修理した医療機器の品質等に関する苦情があった場合、苦情が当該修理を行った事業所に起因するものでないことが明らかな場合を除いて、当該事業所の責任技術者に、次に掲げる業務を行わせなければなりません。
(ア)原因究明及び改善措置
苦情に係る原因の究明を行い、修理に係る作業管理並びに品質管理に関して改善が必要な場合には所要の措置を講じなければなりません。
(イ)苦情処理の記録(特管)
苦情処理を行った場合、当該医療機器の苦情の内容、原因究明の結果及び改善措置について記載した苦情処理記録を作成し、その作成日から3年間保存しなければなりません。
(4)回収処理
医療機器修理業者は、自ら修理した医療機器の品質等に関する理由により回収を行う場合、回収に至った理由が当該修理を行った事業所に起因するものでないことが明らかな場合を除いて、当該事業所の責任技術者に、次に掲げる業務を行わせなければなりません。
なお、実際に市場からの回収を行った場合には、県へ連絡するようにしてください。
(ア)原因究明及び改善措置
回収に至った原因の究明を行うとともに、修理に係る作業管理並びに品質管理に関して改善が必要な場合には所要の措置を講じなければなりません。
(イ)回収処理の記録(特管)
当該医療機器に係る回収の内容、原因究明の結果及び改善措置について記載した回収処理記録を作成し、その作成日から3年間保存しなければなりません。
(ウ)回収品の保管、処理
回収した医療機器を他のものと区分して一定期間保管した後、適切に処理しなければなりません。
(5)教育訓練(特管)
医療機器修理業者は、責任技術者に、次に掲げる業務を行わせなければなりません。
(ア)教育訓練の実施
修理を行う作業員に対して、修理の作業管理及び品質管理に関する教育訓練を実施する必要があります。
(イ)教育訓練の記録
作業員への教育訓練に関する実施記録を作成し、その作成日から3年間保存しなければなりません。
(6)製造販売業者への通知
(ア)医療機器の修理の事前通知
医療機器の修理業者は、医療機器の修理(軽微なものを除く。次項において同じ。)をしようとするときは、あらかじめ、当該医療機器の製造販売業者に通知しなければなりません。
<通知すべき事項>
- 当該医療機器の一般的名称及び販売名
- 使用者の名称
- 修理に関する内容
- 修理業者の氏名、住所、及び電話番号
- 医療機器の使用の期限(耐用期間)を超えている医療機器を修理する場合は、使用状況(使用期限・使用頻度・保守点検状況)
なお、以下の場合についてはそれぞれの方法によって通知をしてください。
- 当該医療機器を修理して使用するほかに医療機器を使用する者の生命又は身体を保護する代替手段がないような緊急やむを得ない場合その他正当な理由がある場合には、修理後速やかに製造販売業者に通知してください。
- 当該医療機器の製造販売業者と修理業者において、修理の作業管理(修理の方法・範囲)及び品質管理について事前に定められている場合は、事前通知の対象とはなりません。
(イ)中古医療機器の修理
流通段階にある中古医療機器の修理を行う際は、製造販売業者に、「当該医療機器の一般的名称及び販売名」、「前使用者の名称」、「過去の修理履歴」、「使用状況(使用期間・使用頻度・保守点検状況)」等の情報を事前通知する必要があります。
注)軽微な修理とは、製造販売業者が、予め想定される故障の状況と、それに対応する修理方法を文書で通知している場合の修理を指し、医療機器の性能及び安全性に重大な影響を及ぼす恐れのないようなものをいいます。
(7)製造販売業者からの指示事項の遵守
医療機器修理業者は、製造販売業者から修理に関する指示の文書を受けた場合には、その指示事項を遵守し、指示の内容に従った適切な修理を行わなければなりません。
(8)添付文書等の記載事項の確認
医療機器修理業者は、修理を行う医療機器について、最新の添付文書の記載に基づいた適正使用情報を、修理依頼者に提供しなければなりません。
そのため、医療機器修理業者は、製造販売業者から修理を行う医療機器の最新の添付文書を入手するように努める必要があります。
(9)修理品への記載事項
医療機器修理業者は、医療機器を修理した場合には、当該医療機器又はその直接の容器若しくは被包に「自らの氏名及び住所」、「修理を行った年月日」を記載しなければなりません。ただし、当該医療機器又はその直接の容器若しくは被包に記載できない場合には、医療機器修理業者及び修理を依頼した者が当該事項を適切に把握できる方法に代えることができます。
(10)修理内容の文書通知(特管)
医療機器修理業者は修理を依頼した者に対し、修理の内容を文書により通知しなければなりません。
なお、修理を依頼した者の承諾を得た場合には、電子媒体等により修理内容の通知を行うことができます。その場合の留意点は以下のとおりです。
- 医療機器修理業者は、修理を依頼した者の承諾を得て、ネットワーク回線等を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって次に掲げるもの(以下「電磁的方法」という。)により提供することができます。この場合において、医療機器修理業者は修理の内容の通知を行ったものとみなされます。
- (a)ネットワーク回線等を使用する方法のうち、次の1.又は2.に掲げるもの
- 医療機器の修理業者が使用するパソコンと修理を依頼した者が使用するパソコンとを接続する電子メール回線を通じて送信し、受信者が使用するパソコンに備えられたファイルに記録する方法
- 医療機器修理業者が使用するパソコンに備えられたファイルに記録された修理の内容を、ネットワーク回線等を通じて修理を依頼した者の閲覧に供し、当該修理を依頼した者が使用するパソコンに備えられたファイルに、修理の内容を記録する方法(電磁的方法による提供を受ける旨の承諾又は受けない旨の申出をする場合にあっては、医療機器修理業者が使用するパソコンに備えられたファイルにその旨を記録する方法)
- (b)FD、CD-ROMその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録しておくことができる物をもって調製するファイルに記録したものを交付する方法
- (a)ネットワーク回線等を使用する方法のうち、次の1.又は2.に掲げるもの
- ネットワーク回線等を使用する方法では、修理を依頼した者がファイルへの記録を出力することによる文書を作成することができるものでなければなりません。
- 医療機器修理業者は、(ア)により修理内容を提供しようとするときは、あらかじめ、修理を依頼した者に対して、その用いる次に掲げる電磁的方法の種類及び内容を示し、文書又は電磁的方法による承諾を得なければなりません。
-
- 上記(ア)に示す方法のうち医療機器修理業者が使用するもの
- ファイルへの記録の方式
- 医療機器修理業者は、当該修理を依頼した者から文書又は電磁的方法により電磁的方法による提供を受けない旨の申出があったときは、修理を依頼した者に対し、修理内容の通知を電磁的方法によってしてはいけません。ただし、修理を依頼した者が再び上記(ウ)による承諾をした場合は、電磁的方法による提供を行っても構いません。
(11)不具合等に関する情報提供
- 医療機器修理業者は、その修理した医療機器について、当該医療機器の不具合その他の事由によるものと疑われる疾病、障害若しくは死亡の発生又は当該医療機器の使用によるものと疑われる感染症の発生に関する事項を知った場合において、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、製造販売業者又は外国特例承認取得者にその旨を通知しなければなりません。
- 医療機器修理業者は、医療機器の製造販売後の安全性及び品質の確保に関する販売業者、賃貸業者及び医療機関等から得られる情報を製造販売業者に提供するために次のことに努めてください。
-
- 医療機器の安全性及び品質に関する不具合、副作用、ヒヤリ・ハット情報を含めた情報を収集すること。
- 円滑な情報を収集するために医療機関等及び製造販売業者等の連携のために適切な意思疎通を図るようにすること。
(12)修理、試験等に関する記録
医療機器修理業の責任技術者は、修理及び試験に関する記録その他当該事業所の管理に関する記録を作成し、かつ、これを3年間(当該記録に係る医療機器に関して有効期間の記載が義務づけられている場合には、その有効期間に1年を加算した期間)保管しなければなりません。
なお、その他当該事業所の管理に関する記録とは、例えば、以下の項目を指します。
- 責任技術者の継続的研修の受講状況
- 事業所における品質確保の実施の状況
- 苦情処理、回収処理その他不良品の処理の状況
- 事業所の従業者の教育訓練の実施の状況
- 中古品の修理における製造販売業者への通知及び製造販売業者からの指示に関する記録
また、修理業者の修理に係わる手順及び作業管理並びに品質管理、修理・試験検査に関する記録及び文書に関する記録、保存については、パソコンの使用に供されるFD、CD-ROMその他これらに準ずる方法により一定の事項を確実に記録、保存しておくことも差し支えありません。ただし、修理業務として必要とするときや、立ち入り調査等で提示を求められたときは速やかに印刷物として使用、提示できる必要があります。
(13)責任技術者の継続的研修受講義務
責任技術者は、製造販売後の安全性及び品質を確保するために、厚生労働大臣に届出を行った者が行う研修を毎年度受講しなければなりません。継続的研修の修了証については、許可更新等や都道府県の査察時に提示を求められた場合に速やかに提示できるよう、保存しておくことが望ましいです。
なお、毎年度受講とは、前回受講してから1年以内に次回の講習を受けることではなく、年度ごとに1回は受講する、という意味です。
4 設置管理医療機器の修理業者の義務
特定保守管理医療機器、特定保守管理医療機器以外の医療機器に関わらず、設置管理医療機器に該当する医療機器の修理を行う場合は、上記3の他に以下の点に留意して修理の業務を行う必要があります。
(1)設置管理基準書に従った設置管理
設置管理医療機器の修理業者は、自らが当該設置管理医療機器の設置を行うときは、交付を受けた設置管理基準書(組立方法及び設置された設置管理医療機器の品質の確認方法について記載した基準書)に基づき、適正な方法により設置に係る管理を行わなければなりません。
(2)設置管理の委託
設置管理医療機器の修理業者は、設置管理医療機器の設置を他に委託するときは、設置管理に関する報告についての条項を含む委託契約を行うとともに、当該設置管理医療機器に係る設置管理基準書を受託者に交付しなければなりません。
(3)設置に係る業務の適切な管理
設置管理医療機器の修理業者は、設置管理の業務を行うために必要な専門的知識及び経験を有する者に、当該設置管理医療機器に係る設置管理基準書に基づき、適正な方法により設置管理の業務を行わせなければなりません。
(4)設置に係る教育訓練
設置管理医療機器の修理業者は、設置管理医療機器の設置を行う者に対し、必要に応じ、設置管理医療機器の品目に応じた設置管理に関する教育訓練を実施しなければなりません。
(5)記録の作成等
設置管理医療機器の修理業者は上記の(1)から(4)により設置管理を行い、設置管理基準書を交付し、又は教育訓練を実施した記録を作成し、その作成の日から15年間保存しなければなりません。
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