ヴァンジ彫刻庭園美術館のUDその8
富士山に連なる愛鷹山麓の中腹にあるヴァンジ彫刻庭園美術館。イタリアの具象彫刻家ジュリアーノ・ヴァンジの世界唯一の個人美術館であり、屋内外に50を超える作品が展示されています。ここでは、すべての人が楽しめるユニバーサルなミュージアムを目指し、2020年より本格的に対応に取り組んでいます。
その中で特に課題を感じていたのが、視覚障がいを持つ方へ作品を伝える方法や施設内を案内する方法であったそうです。視覚障がい者への補助としてよく見かける点字ブロックは、美術館の景観を損なうために設置が難しいという状況がありました。そこで採用されたのが、「ナビレンズ(NaviLens)」というシステムです。
ナビレンズは、日本発祥の点字ブロックに着想を得てスペインの民間企業と大学が共同開発したシステムです。現在では、さまざまな国や地域で交通機関および文化施設などへの設置が進んでいます。ヴァンジ彫刻庭園美術館では2020年12月よりナビレンズの設置をしており、これは日本の美術館で初となる導入でした。
ナビレンズの使い方は非常に簡単で、館内に設置されているQRコードに似たタグを専用アプリで読み込むと、登録されている情報が音声で再生されます。読み取り角度は160度と広角であり、15m~18m離れた場所からでも読み取り可能です。また、ピントを合わせる必要がなく、タグがどこにあるか正確にわからなくてもスマートフォンのカメラで周りをスキャンすればタグを読み取ることができます。さらには、スマートフォンの設定言語での使用が可能であり、世界30カ国語以上に対応しています。
ヴァンジ彫刻庭園美術館では、作品付近や歩行通路の地面にタグが貼り付けてあり、スマートフォンをかざしながら歩くだけで、進行方向や壁までの距離、作品の概要などの情報を得ることができます。また、作品の説明タグには問いかけや鑑賞者の感想等も取り入れられ、機械的な説明にとどまらない温かみを感じることができました。
美術館といえば、一般的には目で見て楽しむものと思われがちですが、ヴァンジ彫刻庭園美術館では、異なる個性をもつ人々がそれぞれに豊かなミュージアム体験を実現するための工夫がさまざま凝らされています。学芸員の渡川さんによると、ジュリアーノ・ヴァンジは、作品の解釈を見る人に委ねていて、そこから何かを感じ取り行動に移されるのを望んでいるそうです。ユニバーサルミュージアムを訪れ、その取り組みを体験しつつ、ヴァンジが追い続けている「人間とは何か」について考えてみませんか。
UD特派員3期生 水谷桃子
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