障害のある人をめぐる人権問題
「完全参加と平等」というテーマを掲げて、昭和56年(1981年)に国連の呼びかけにより取り組まれた「国際障害者年」以降、障害のある人が人間としての尊厳を保ち、ライフステージのすべての段階において、持てる能力を最大限に発揮してその人らしく生活できることを目指すリハビリテーションの理念と、地域や社会において障害のある人も障害のない人も同じように、共に生きる社会を目指すノーマライゼーションの理念の浸透によって、障害のある人の社会参加や生活条件の向上が進んできました。
平成5年(1993年)からは人権の尊重を理念とする考え方から、障害者基本法も新たに改正され、全国的なサービスの水準を保ちつつ、地域の多様なニーズに応じた障害福祉サービスが進められました。
そして平成15年(2003年)からはそれまでの行政が行政処分によりサービスを決定する「措置制度」から、利用者が事業者と対等な立場で契約し、サービスを利用できる「支援費制度」に変わりました。
さらにサービスの地域間格差の是正や安定的な財源確保を図るため、「障害者自立支援法」(1)が平成18年(2006年)10月から本格施行されました。
しかし、障害のある人の社会参加をより一層進めるためには、様々な障壁(しょうへき)(バリア)を取り除く必要があります。
障壁(バリア)には、次のようなものがあるとされています。
- 道路の段差や交通機関、建築物等における物理的な障壁
- 資格・免許等の取得を制限する資格制限などの制度的な障壁
- 盲導犬や介助犬への理解不足や音声案内、点字等の欠如などによる文化・情報面での障壁
- 心ない言葉や視線など障害のある人に対する無理解から生じる意識上の障壁(心の壁)
こうした障壁(バリア)をなくすために、平成6年(1994年)6月には、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(ハートビル法)(2)、平成12年(2000年)5月には、「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律」(交通バリアフリー法)(3)が制定され、建物、交通分野でのバリアフリー化に向けた整備がされました。
また、平成14年(2002年)10月には、レストラン、ホテル、スーパーマーケット等不特定多数の人が出入りする場への身体障害者補助犬(盲導犬、聴導犬、介助犬)の同伴を自由とする「身体障害者補助犬法」が制定されました。
平成16年(2004年)6月には、「障害者基本法」が改正され、基本的理念に、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならないことが規定されるとともに、国民の責務として、社会連帯の理念に基づき、障害のある人の人権が尊重され、差別されることがない社会の実現への寄与が規定されました。
こうした法整備等をはじめ様々な法制度が整備されてきましたが、社会の仕組みなどは、依然として障害のある人に不利なものが多く、雇用の面においても、法定雇用率が達成されていない状況にあります。
また、精神疾患は生活習慣病と同様に誰でもなりうる疾患という認識はされにくく、精神障害に対する誤解や偏見が依然として社会に存在しています。
このため、県では、平成15年(2003年)3月に、「ふじのくに障害者プラン21」を策定し、障害のある人が住み慣れた地域で豊かに安心して暮らすことのできる「魅力ある“しずおか”の実現」をめざしています。
障害のある人の人権が尊重されるよう、私たち一人ひとりも、障害や障害のある人への理解を深めていく必要があります。
- (1)障害者自立支援法(平成17年(2005年)11月7日法律第123号)
障害のある人及び障害のある子どもがその有する能力及び適性に応じて自立した日常生活又は社会生活を営むことができるために制定された法律。具体的には、身体、知的、精神といった障害のある人の福祉サービスを一元化したこと、利用者本位のサービス体系に再編したこと、就労支援を抜本的に強化したこと、サービス利用のための手続きや基準を透明化、明確化したこと、国、県、市町村、利用者の負担を明確にして安定的な財源を確保したことなどが制度の骨格となっています。 - (2)高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)(平成6年(1994年)6月29日法律第44号)
デパート、ホテルなど不特定かつ多数の人が利用する一定規模以上の建築物の出入口、廊下、階段、昇降機、便所等を高齢者、身体に障害のある人等が円滑に利用するための措置について、建築主に努力義務を課すとともに、当該措置に関する建築主の判断基準を定め、都道府県知事等による指導及び支援のための措置等について規定しています。 - (3)高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)(平成12年(2000年)5月17日法律第68号)
高齢者の方や身体に障害のある人、そのほか妊産婦の方などの公共交通機関を利用した移動の利便性及び安全性の向上を促進するため、公共交通事業者に旅客施設や車両のバリアフリー化を義務付けるとともに、国土交通省、警察庁、総務省が連携し、市町村を中心にしてバリアフリー施策(公共交通・道路・交通安全特定事業)を一体的に推進するものです。
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