人づくりちょっといい話56
子どものゴールを考える
若林繁太(わかばやししげた)さんという大変な教育家がいらっしゃいました。高校の校長先生をお勤めになった方ですが、一九八五年に『教育よ、よみがえれ』(講談社)という本を出していらっしゃいます。その中に「子どもを非行にする十か条」というのがあるんです。この十か条を読むと、そのころから日本の教育は一斉に崩壊を始めたということが分かるんですね。読んでみます。(前掲書より抜粋)
- 子どもに学習を強いること。
- 夫婦喧嘩は派手にすること。
- 不平はたゆみなく主張すること。
- 子どもを徹底して大切にすること。
- 夫婦は教育理念を違えること。
- 子どもの要求は何でも聞き入れること。
- 子どもの人格を常に評価すること。
- 子どもは勝手に行動させること。
- 常に子どもを他人と比較すること。
- 流行に遅れない子どもにすること。
どうしてこの十か条にあてはまるようなことを、父親母親が言うようになったかというと、やはり、子どもをどういう人間に育てるか、という子どものゴールを親が考えたことがないからなんですね。子どものゴールを考える。それが家庭教育の基本なのにね。
第一は職分です。手に技を持つこと。「何か世の中に役に立つことをしたい」という子どもがいたら、その夢を叶えてやればいいんですよ。つまり、生きていくための技術なら何でもいいんです。問題は大学を出ることではないんですね。二番目は自己形成です。自己形成というのは、自分の意見を自分の言葉でハッキリと言えるような人間にすること。三番目は、他人に対する思いやりです。この職分と自己形成と他人に対する思いやり、この三つが家庭教育の基礎なんですね。
もっぱら学校教育の中で、進学体系の何番目に自分の子どもを当てはめるか、それがお父さんやお母さんの価値観だったのではないですか。ですから、大学に入ってしまうと、「もうゲームは終わった、競争は終わった」といって、急に子どもから無関心になっていく。子どもの方も「もう勉強しなくていいんだ。バンザイ!」というようなもので、ますます人格も能力も低下していく。こんなことを言われて怒っている親の多いことを祈ります。
草柳大蔵著「続・午前8時のメッセージ99話」(平成14年発行)より
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