令和3年2月県議会定例会知事提案説明要旨4-7
令和3年2月県議会定例会知事提案説明要旨
【4.人づくり・富づくりの総仕上げ】(7)“ふじのくに”の魅力の向上と発信
政策の第7の柱は、「“ふじのくに”の魅力の向上と発信」であります。
東京2020(ニーゼロニーゼロ)オリンピック・パラリンピックにつきましては、近代オリンピック史上前例のない1年の延期となりましたが、交通輸送対策、都市ボランティアの管理・育成、事前キャンプの受け入れ支援など、大会に向けた準備を加速してまいります。
7月の開幕に先立ち、6月23日から25日にかけて、オリンピック聖火リレーが県内で実施されます。本県ゆかりの聖火ランナーが、富士山静岡空港、富士山世界遺産センター、世界文化遺産韮山反射炉など、本県が世界に誇る地域資源を巡り、世界中に本県の魅力を発信する予定です。
コロナ禍の難局を乗り越え、聖火リレーや自転車競技大会を成功させ、皆様の心に残る素晴らしい大会となるよう、大会組織委員会や市町、関係団体等とワンチームになり、準備の総仕上げに万全を期してまいります。
サイクルスポーツの聖地づくりにつきましては、東京2020(ニーゼロニーゼロ)オリンピック・パラリンピック終了後も、本県がアジアの自転車競技の中心地として、サイクリストの憧れを呼ぶ聖地となるよう、大会レガシーの創出と自転車文化の醸成に努めてまいります。
オリンピックのロードレースコースを活用したサイクルイベントの開催をはじめ、本県ならではの景観を楽しめるサイクリングルートのPR、訪れた方へのおもてなしの充実など、県内全域でサイクルツーリズムを推進してまいります。
また、競技会場である日本サイクルスポーツセンターについて、初心者からトップ選手まで集う「自転車トレーニングヴィレッジ」としての活用を関係団体等とともに検討してまいります。
ラグビーの聖地化につきましては、ラグビーワールドカップ2019(ニセンジュウキュウ)の感動を後世へ継承するため、品位(インテグリティ)、情熱(パッション)、結束(ソリダリティ)、規律(ディシプリン)、尊重(リスペクト)の5つのラグビー精神を学ぶ体験授業や、トップレベルの試合の観戦により、ラグビーの普及・定着に、引き続き、取り組んでまいります。
小笠山総合運動公園の芝生広場にラグビーポールを整備し、同時に5面使用できる環境を実現いたします。全国トップクラスとなったラグビー環境を積極的にPRし、大規模大会や合宿の誘致を実現し、エコパスタジアムのラグビーの聖地化を進めてまいります。
「アーツカウンシルしずおか」につきましては、昨年リスタートした文化プログラムの成果を継承し、多分野協働のプラットフォーム、住民主体の創造活動の推進エンジンとして、先月、県文化財団内に設置いたしました。
今後は、このアーツカウンシルを中心に、専門家による人材の育成を進め、福祉、教育、産業、観光などの幅広い分野の担い手の皆様とアーティストとの連携を促進するなど、本県の地域資源を活かした住民主体の創造的な活動を支援してまいります。
県立劇団SPACを核とした「演劇の都」づくりにつきましては、演劇に深い興味を持ち意欲的な高校生を対象とした演劇アカデミーを開校いたします。
アカデミーでは、本県が世界に誇るSPACの俳優等による講義や舞台芸術公園等の施設を活用したプログラムにより、将来の「演劇の都」を担う人材の育成を図ってまいります。
南アルプスの自然環境保全につきましては、日本の屋根と呼ばれる南アルプスは降水量が多く、その雨は大井川に流れ込むとともに、山梨県側に降れば早川を経て富士川へ、長野県側に降れば三(み)峰(ぶ)川を経て天竜川へ流れており、県民の皆様の命を育み、産業を支える源となっております。
ユネスコエコパークにも登録されている南アルプスの豊かな自然環境を守るためには、県内だけでなく、国内外の皆様にこの豊かさを御理解いただき、より多くの方々に環境保全の取組に御参加いただく必要があります。
このため、南アルプスの自然環境の保全と魅力の発信を目的とした新たな基金を創設し、ボランティアの皆様との協働による希少な動植物の保護等を進めることにより、「世界の宝」である南アルプスを後世に引き継いでまいります。来年度は、南アルプスの環境保全施策を着実に実行するため、組織体制を強化いたします。
リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全につきましては、今月7日に、第8回リニア中央新幹線静岡工区有識者会議が開催され、JR東海から工事期間中における山梨県側へのトンネル湧水の流出量の試算が示されました。資料では、300万トンないしは500万トンのトンネル湧水が発生し、山梨県側へ流出することが当然のごとく示されています。しかし、実際には、想定外の湧水の発生が懸念されることから、JR東海は山梨県側から上向きに掘り、トンネル湧水を自然に流すこととしています。
「トンネル湧水の全量を大井川水系に戻すこと」は、JR東海の金子社長が明言した約束であります。この約束は、県がJR東海と対話を進める前提であり、JR東海には、約束どおりトンネル湧水の全量を戻していただかなければなりません。
また、会議終了後には、「工事期間中の椹島より下流側の河川流量は、導水路トンネル等で大井川に戻される量を考慮すると、平均的にはトンネル掘削前の河川流量を下回らないことが示された。これにより、静岡市及びJR東海の解析モデルの予測結果として、トンネル湧水が当該期間中に山梨県側に流出した場合においても、椹島より下流側では河川流量は維持される。」としたJR東海から示された事項を、有識者会議として確認したとの座長コメントが、非公開で取りまとめられ、公表されました。
しかしながら、座長コメントは、有識者会議がJR東海からの説明を検証、評価したものではなく、追認したかのような誤解を県民の皆様に与えるだけのものであり、全く必要ありません。国土交通省は、県民の皆様に不信感を与えるようなコメントの取りまとめではなく、合意5項目の第一である「会議の透明性」を遵守し、有識者会議における議論の状況を全面公開すべきです。
また、8日に開催した生物多様性専門部会において、南アルプスの環境保全に関する対話が行われ、トンネル工事による自然環境への影響に関するJR東海の認識が不十分であることが明らかになりました。
委員からは、「南アルプスの保全を確実に行うことが、ユネスコエコパークとして引き続き認められるポイントであり、しっかりと説明できるよう必要な対策を進めてほしい。」との発言がありました。まさしくそのとおりであり、JR東海には、このことを重く受け止めて南アルプスの自然環境保全等に向けた取り組みへ反映していただくよう求めてまいります。
環境影響評価書に対する国土交通大臣意見として、「本事業を円滑に実施するためには、地元の理解と協力を得ることが不可欠」と明記されているとおり、トンネル工事の着工には、流域住民の皆様の理解が不可欠であります。
流域住民の皆様の理解を得ることなく着工することはありえません。流域住民の皆様の不安を払拭し、安心感を持っていただくためにも、金子社長にお会いして、現地の状況を把握した上で、大井川の水資源や南アルプスの自然環境を守るために何ができるのか、できないのか、科学的根拠に基づく分かりやすい説明を有識者会議で行い、「流域住民の皆様の理解がなければ、工事に着手しない」ことを明言していただくようお伝えしたいと考えております。