(3)分野ごとの主な取組
令和7年2月県議会定例会知事提案説明要旨
【2.令和7年度当初予算案】(3)分野ごとの主な取組
次に、分野ごとの主な取組について、御説明致します。
まず、防災・安全分野であります。
最初に、盛土対策についてであります。
県内の不適切盛土に対し、緊急性を評価し、優先順位を付けた上で、計画的に対策を講じてまいりました。この結果、不適切盛土の是正が進み、また「盛り土110番」など未然防止に向けた監視体制の強化などにも取り組んでおります。
今年5月からは、盛土規制法の運用開始により、規制がこれまで以上に強化されることとなります。県の体制も強化した上で、県内市町や関係機関等と連携し、県民の皆様の安全と安心の確保に全力で取り組んでまいります。
次に、救急安心電話相談窓口「#7119」についてであります。
医療機関の適正受診や救急車の適正利用を推進するため、昨年10月に、平日の夜間や土日等を中心に、電話相談窓口を試行的に開設いたしました。
12月までの3か月間で、6,000件を超える相談が寄せられており、インフルエンザが流行する中、救急車の出動件数の増加傾向が緩和されるなど、一定の効果がみられたとの評価をいただいております。このため、本年4月から開設時間を24時間365日に拡充し、本格的な運用を開始してまいります。
次に、犯罪被害者等への支援についてであります。
犯罪の被害に遭われた方や御家族等を包括的に支援するため、本年4月から、犯罪被害者等支援条例の所管を警察本部から知事部局に移管します。あわせて、支援の総合的な調整を行うコーディネーターを新たに配置し、県内市町や関係機関等と連携した多機関ワンストップサービス体制を構築するとともに、経済的負担の軽減のため、見舞金の制度を創設するなど、支援の充実を図ってまいります。
次に、産業分野についてであります。
最初に、MaOIプロジェクトについてであります。
国内外から最先端の海洋技術や知見等が一堂に集う「BLUE ECONOMY EXPO」の更なる充実を図ります。具体的には、スタートアップなど参加企業数を46団体から70団体へ拡大するほか、「TECH BEAT Shizuoka」との共催により、国内外の優れた技術等を持つ企業と地域企業とのマッチングを強化いたします。また、世界的な海洋産業クラスターの連携組織である「ブルーテック クラスター アライアンス」への加盟を活かし、海外スタートアップと交流を加速するなど、プロジェクトを新たなステージへ引き上げてまいります。
次に、中小企業の経営力向上についてであります。
中小企業は、本県経済を支える屋台骨であります。人手不足や物価高騰などの厳しい環境においても、将来にわたって着実に発展し、稼ぐ力を高めていけるよう、デジタル技術を活用した新たな取組を促すための枠組を設けるなど、企業の変革や挑戦を後押ししてまいります。
次に、リノベーションによるまちづくりについてであります。
既存の建物や空間を活用して、新たな価値や機能を加え、地域の魅力と活力を高める「リノベーションまちづくり」に取り組んでまいります。
取組を牽引する人材の育成が重要であることから、遊休不動産の再生計画作成など実践的な講習を行う「リノベーションスクール」を開催する市町を新たに支援いたします。モデル地域を形成した上で、先駆的な事例を県内各地に横展開するなど、市町と連携した取組を進めてまいります。
次に、農林水産業の競争力強化についてであります。
農業につきましては、緑茶需要が拡大する海外での静岡茶の競争力を強化してまいります。今年度、今治タオルのブランド化を実現した専門家や若手茶業者による「静岡茶リ・ブランディングプロジェクト」を立ち上げました。この枠組を活かし、いよいよ来年度から、本格的な海外展開に向け、世界に通用する統一ブランドを戦略的に構築してまいります。戦略に合わせ、生産面では、輸出需要に応じた計画的な生産や有機茶栽培の拡大等により、世界に向けた静岡茶の生産基盤の強化に取り組んでまいります。
あわせて、スマート農業の普及や農地の集積・集約化にデジタル技術を活用するなど、農業の高度化、生産性向上に取り組んでまいります。
林業につきましては、建築業界等においてグリーン化が世界的な潮流となる中、持続可能な木材調達の手段として認証材に注目が集まっております。こうした動きを先取りし、全国有数の面積を誇る認証森林における生産フィールドの確保や路網整備を支援し、認証丸太の供給力強化に取り組んでまいります。また、住宅建築等での認証材利用を促進し、認証材の需要拡大に取り組んでまいります。
水産業につきましては、新鮮な魚介類や美しい景観など、魅力ある地域資源を活用して新たな所得機会を創出する「海業」の取組を県内各地で進めてまいります。あわせて、藻場再生に向けた実証実験や、アサリの資源回復のための総合的な対策を通じて、水産王国静岡の持続的な発展に向けて取り組んでまいります。
次に、環境・エネルギー分野についてであります。
最初に、脱炭素社会の構築についてであります。
2030年度の温室効果ガス排出量の削減目標の達成に向け、中小企業の脱炭素経営への転換を促進してまいります。
より効果のある取組を重点的に支援するため、一定の排出削減を行う設備導入等に対して新たな補助制度を創設するとともに、県内の金融機関と連携し、アドバイザーの育成を強化するなど、中小企業等の取組を一層促進してまいります。
次に、リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全についてであります。
昨年12月17日の県の地質構造・水資源専門部会では、ツバクロ発生土置き場の直下に存在が推定される断層等について、JR東海と対話いたしました。ツバクロ発生土置き場に関しては、専門部会委員による現地調査により、直下に断層が存在するものの、活断層ではないことが確認され、この土地に盛土を計画することが専門部会から了解されました。また、昨年12月に一旦終了した高速長尺先進ボーリングに関しては、まずは先進坑の掘削を優先することが確認されました。県境から300メートルに達する前に、その地点以降の掘削に伴うリスク管理について対話し、県と合意することが求められました。
こうした状況については、昨年12月に、JR東海から、大井川利水関係協議会の皆様にも説明したところであります。
今月13日には、県の生物多様性専門部会を開催し、大井川に放流するトンネル湧水の水質の管理等について、JR東海と対話いたしました。濁りの低減策として、専門部会委員が提案していた砂濾過装置を追加することがJR東海から報告され、管理基準値についても合意しました。今後は、生物への影響の回避・低減などリスク管理の具体的な内容について対話してまいります。
こうした対話により、主な対話項目28項目のうち、対話完了が2項目増えて5項目に、対話中が2項目増えて19項目になりました。引き続き、残された課題の解決に向けて、JR東海との対話をしっかりと進めてまいります。
先月30日には、JR東海の丹羽俊介社長と面談し、県専門部会の進め方や、リニア開業に伴うメリット、地域住民の理解を得るための取組について話し合いました。この中で、丹羽社長は、リニア中央新幹線の名古屋開業の時点で、静岡駅と浜松駅に停車する「ひかり」の本数を、1時間2本に増やすことを明言されました。これは、大変踏み込んだ発言であり、実現すれば、県内に大きな経済波及効果があるものと認識しております。また、リニアの開業は、本県にとって一定のメリットがあるということについて、県民の皆様の理解が進むものと受け止めております。一方で、大井川の水資源や南アルプスの自然環境の保全に関する、残りの課題の解決に向けては、今までと同様に、スピード感を持ちながらも、丁寧に対話を進めてまいります。
今月5日には、中野洋昌国土交通大臣と面談し、JR東海との対話の状況を説明するとともに、大井川流域の皆様が懸念されている水資源に影響があった場合の対応について、将来にわたり国として積極的に関わっていただくよう求めました。中野大臣からは、国としても、水資源や環境の問題に十分配慮して取り組むとともに、モニタリング会議を通じて、しっかりと支援していくとのお話がありました。
引き続き、リニア中央新幹線の建設と、大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全との両立を図るため、大井川利水関係協議会の御理解を頂きながら、JR東海との対話を進めてまいります。
次に、観光・交流・インフラ分野についてであります。
最初に、観光振興についてであります。
昨年、過去最高を記録し、今後さらなる拡大が見込まれる訪日外国人の旅行需要を本県に取り込むため、ナイトコンテンツやガストロノミーなど、外国人富裕層へ訴求力を有する商品を造成いたします。加えて、富裕層向けの旅行商品を取り扱う専門のコンソーシアムへの売込も行ってまいります。さらには、本県滞在の受け皿となる外資系ホテルの誘致など、外国人富裕層の本県への来訪、滞在促進に向けた施策を総合的に推進してまいります。
次に、富士山静岡空港についてであります。
今年度、開港15周年を迎えた富士山静岡空港は、昨年末に、開港以来の搭乗者数が800万人を達成し、多くの方々に御利用いただきました。御利用者や関係者の皆様に心より御礼申し上げます。
来月30日からの夏ダイヤにおいては、国内線はフジドリームエアラインズの札幌丘珠線の再開により、全7路線が、また、国際線では、昨年12月に香港線が新規就航し、全4路線が運航します。
今後も、東南アジア等との新規路線の開設など、一層の路線拡大を目指し、富士山静岡空港株式会社や関係団体など、オール静岡で取り組んでまいります。
次に、こども・教育分野であります。
最初に、小学校1年生へのきめ細やかな支援についてであります。
幼児教育と小学校教育の違いから学習や学校生活に支障をきたす、いわゆる小1ギャップが問題となっています。そこで、よりきめ細やかな支援を行うため、1年生において30人を超えるクラスを有する学校に対し、新たに県単独で支援員を配置いたします。
生活習慣の確立や学習内容の定着を後押しするなど、個に応じた指導を充実させるとともに、教員の負担軽減にもつなげてまいります。
次に、戦争の記憶と記録の継承についてであります。
今年は、戦後80年という節目の年にあたります。戦争体験者が高齢化する中、次世代に戦争の記憶や記録を継承することが、ますます難しくなってまいります。
このため、若い世代の沖縄追悼式への参列を支援するとともに、戦争体験者が語り継ぐ様子を映像として残し、平和の尊さを次世代へ継承してまいります。
次に、健康福祉分野であります。
最初に、静岡ウェルネスプロジェクトについてであります。
これまでのフーズ・ヘルスケア分野での取組成果を基礎として、身体的・精神的・社会的に健康で満たされるウェルネスの視点を新たに取り入れ、スタートアップとの共創により、食品や健康分野の社会課題解決に取り組んでまいります。
具体的には、ウェルネス・フーズEXPOを初開催し、フードテック等の先端技術を有するスタートアップと地域企業とのマッチングの機会を創出します。
さらに、県内市町と連携して実証フィールドを提供し、健康・医療データの活用による新たなサービスを創出するなど、食品・健康関連産業の振興と、健康寿命のさらなる延伸を目指してまいります。
次に、障害者施策などの推進についてであります。
民間事業者等の合理的配慮の義務化から間もなく1年となりますが、事業者からは、障害のある方への具体的な対応方法に関する課題等が寄せられています。このため、各事業者が実効性のある合理的配慮を提供できるよう、アドバイザーを派遣し、経営者などの意識改革を促進いたします。
また、小児がんや難病を抱えるこどもは、診療できる医療機関が限られ、遠方への通院など経済的負担が大きくなります。このため、通院に要する交通費等に対する助成制度を創設するとともに、療育や日常生活等に関する相談に対応してまいります。
障害のある方が分け隔てられない共生社会の実現に向けて、積極的に取り組んでまいります。
次に、(仮称)医科大学院大学についてであります。
昨年2月に、準備委員会から基本構想を御提言いただいた、医科大学院大学につきましては、「静岡県未来創造会議」から、本県の厳しい財政状況を踏まえ、「大きな歳出」の一例として、優先順位付けや、より効率的な手法の検討が求められたところであります。
これを受け、構想の実現については、現下の本県が置かれている財政状況が好転した時点で検討すべきと判断いたしました。しかしながら、医師確保策の拡充は本県にとって重要でありますので、当面は、既存の静岡社会健康医学大学院大学における、基本構想の趣旨を活かした研究環境等の魅力向上や、県内病院への配置調整機能の充実などを進めてまいります。
次に、暮らし・文化分野であります。
最初に、富士山の登山者への対応についてであります。
オーバーツーリズム等、富士登山の課題解決に向けて、地元関係者や山梨県等と、登山規制に関する協議を重ねてまいりました。
その結果、夜間の弾丸登山や軽装登山等のルール・マナー違反を防止するため、登山者に対し、富士山の価値や安全登山に関する事前学習と、午後2時以降の入山において山小屋の宿泊予約を義務づけることといたしました。あわせて、登山規制や、登山者の安全対策、富士山の保全に関する取組に活用するため、4,000円の入山料を徴収することとし、関連する条例案を本議会にお諮りしております。
開山期に向け、山梨県や地元関係者の皆様と連携を図り、世界遺産富士山の価値を守るとともに、安全で快適な富士登山の実現を目指してまいります。
次に、文化・芸術の振興についてであります。
文化芸術の力で地域社会を活性化するため、県内各地で取り組まれている民間主体の活動を支援するとともに、SPAC等が県内様々な地域に出向いて事業を実施することで、文化芸術に触れられる機会を提供してまいります。
また、東部・伊豆地域では、様々な主体による活動を文化芸術の力で結びつけるため、新たにネットワークを立ち上げる計画を進めてまいります。そこで核となる旧ヴァンジ彫刻庭園美術館の利活用計画を今年度内に策定してまいります。
次に、スポーツの振興についてであります。
現在、検討を進めている「しずおかスポーツ産業ビジョン」を推進する場として、プロスポーツチームや企業などから構成するプラットフォームを新たに設置いたします。県内のプロスポーツチームと革新的な先端技術を持つスタートアップ等との連携を図り、デジタルを活用した新しい観戦体験を提供するなど、オール静岡でスポーツの成長産業化に取り組んでまいります。
次に、遠州灘海浜公園篠原地区の整備についてであります。
公園を含む全体的な利活用の構想等について検討するため、県と浜松市による利活用推進協議会を、先月28日に設置し、第1回の協議会を開催しました。
その結果、利活用構想を作成する際に、民間のノウハウを最大限取り入れることや、3つの野球場案を絞り込むこと、県、市の役割分担を検討することなどが確認されました。
引き続き、県西部のスポーツの拠点としてふさわしく、多くの県民の皆様に愛される施設となるよう、検討を進めてまいります。