(1)重点取組

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ページID1069979  更新日 2025年2月18日

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令和7年2月県議会定例会知事提案説明要旨

【2.令和7年度当初予算案】(1)重点取組

 はじめに、令和7年度当初予算案についてであります。

 今回の予算案においては、「幸福度日本一の静岡県」の実現に向けて、積極的な施策を盛り込んでおります。まず、私からトップダウンで、次期総合計画の8つの重点取組などに積極的に予算を配分いたしました。加えて、現場を熟知する各部局長からのボトムアップの提案をもとに、「未来を拓く積極的なチャレンジ」などについても、財源と人員の集中配分をしております。

 この結果、令和7年度の一般会計の歳出予算総額は1兆3,723億円で、前年度当初予算を563億円、4.3%上回る予算案を編成いたしました。

 具体的な取組について、2月補正予算に前倒し計上したものも含め、御説明申し上げます。

 まずは、8つの重点取組のうち、最初に、伊豆半島をはじめとした防災の推進について御説明申し上げます。

 能登半島地震では、土砂崩落等により交通網が寸断し、半島という地理的特性などから、孤立集落の発生や避難所生活の長期化、多数の住宅被害といった課題が顕在化いたしました。昨年11月、国が能登半島地震を踏まえた今後の災害対応について、報告書を取りまとめたところであります。この分析も踏まえ、伊豆半島を有する本県において、速やかに各種の対策を講じてまいります。

 孤立を防ぐためのインフラ整備につきましては、災害発生時にも円滑な物資調達や輸送が行えるよう、伊豆縦貫自動車道の早期全線開通など道路ネットワークの整備・強靱化を、引き続き国に強く働きかけてまいります。あわせて陸海空から被災地へ円滑に進入できるよう、緊急輸送路沿道の空き家の除却や、着実な港湾整備、拠点ヘリポートの資機材整備の支援等を行ってまいります。孤立予想集落においては、必要な物資等の備蓄支援を拡充いたします。

 また、各市町が水道施設等を耐震化し、自給可能な水源等を確保できるよう、特に耐震化率が低い賀茂地域の水インフラ広域防災計画を策定いたします。

 さらに、情報収集体制を強化するため、県災害対策本部や各地域局のほか、災害拠点警察署などに計20台の衛星通信設備を整備いたします。

 避難生活の長期化への対応につきましては、能登半島地震において、トイレが不足する課題等が生じたことから、市町と役割分担しながら県内外の災害派遣時に活用するトイレカー等を整備いたします。また、要配慮者への支援のため、福祉避難所や救護病院等への調査結果を踏まえ、不足する非常用電源を確保するなど、地震・津波対策等減災交付金も活用し、総合的に支援してまいります。

 住宅の耐震化につきましては、今年度末までとしていた無料の住宅耐震診断助成を1年延長いたします。また、能登半島地震で、費用負担の面から本格的な耐震改修等が進まず、大きな被害が発生したことを踏まえ、令和8年度からの次期耐震改修促進計画では、より安価に取り組むことができる「減災化」の取組も進める方針であります。来年度は、そのうち、耐震シェルターの設置などに対する支援を前倒して実施してまいります。

 中長期の対策につきましては、今後、国が南海トラフ地震の新たな被害想定をとりまとめ、防災対策推進基本計画を改定する予定であります。これを踏まえ、本県においても被害想定と今後の対策について見直しを進めてまいります。

 県民の皆様のかけがえのない生命や財産を守るため、ハードとソフトとの両面から着実かつ迅速に、全力で対策を進めてまいります。

 次に、新たな産業活力の創造についてであります。

 大きく2つの取組を進めてまいります。

 1つ目は、スタートアップ先進県に向けた取組であります。スタートアップは県内中小企業の課題解決や、既存産業に革新をもたらすとともに、社会課題の解決の担い手になるなど、本県経済の持続的発展のため、極めて重要な存在です。

 このため、私が浜松市長時代に取り組んだ、ベンチャーキャピタルと連携した資金調達支援制度を新たに創設し、全県展開いたします。対象とする取組は、県の先端産業創出プロジェクトの関連分野や、地域課題の解決に資するものなどとし、採択した企業に対して、財務管理や販路開拓などの支援もあわせて実施することで、活動をサポートしてまいります。

 また、伊豆地域の温泉旅館を活用したスタートアップ誘致を進めるため、温泉施設をオフィス化するモデル事業を開始いたします。地域資源活用アドバイザーの小原嘉元氏の御知見を活用しながら、温泉旅館とスタートアップ等とのマッチングに加え、施設改修や具体的な運営方法について伴走支援を行ってまいります。

 このほか、実証実験サポートやコミュニティの形成、意欲的なスタートアップの積極的な誘致なども行い、スタートアップ先進県に向けた取組を加速してまいります。

 2つ目は、企業誘致の推進であります。本県経済の活性化や、新たな成長産業の育成、雇用の確保のためには、県内企業の定着促進とともに、県外企業の新たな活力をこれまで以上に取り込むことが重要であります。

 このため、企業立地日本一に向けて、年間75件の立地件数を目標に掲げ、誘致活動の強化と産業団地の開発強化に取り組んでまいります。

 まずは、誘致活動の強化のため、私自らが先頭に立って、トップセールスを進めてまいります。今月12日には、東京で誘致セミナーを開催し、121社から182名の皆様に御参加いただきました。セミナーでは、本県の魅力や優位性を余すところなくPRしたほか、県内市町においても、市長等によるプレゼンテーションやブース出展により、産業団地を来場者に直接売り込むなど、オール静岡で企業誘致活動を展開いたしました。

 さらに、来年度、本庁と東京事務所にあわせて3名を増員するなど体制を強化し、首都圏を中心に、将来性や経済波及効果の高い産業へのアプローチを積極的に進めてまいります。

 産業団地の開発強化につきましては、新たな長期目標として、今後10年間で500ヘクタールの整備を目指し、戦略的に用地の確保を図ってまいります。具体的には、交通アクセスや水資源、産業集積など、県内各地の地域特性も活かしながら、新たな企業の呼び込みに必要な大規模産業団地を重点的に確保してまいります。このため、新たに市町による適地調査を支援することとし、新たな開発候補地の掘り起こしを強力に促進してまいります。

 次に、再生可能エネルギー等の導入促進についてであります。

 2050年までにカーボンニュートラル社会を実現するため、再生可能エネルギーの更なる導入拡大や水素の利活用の促進が必要となります。

 このため、環境との調和や地域との共生を前提に、国が示した次期エネルギー基本計画案も踏まえ、再生可能エネルギーの導入拡大に向け、「ふじのくにエネルギー総合戦略」の見直しを進めてまいります。

 また、近年注目されるペロブスカイト太陽電池の実装や関連製品の開発に向け、開発事業者や県内企業、市町等で構成する「次世代太陽電池部会」を立ち上げます。さらに、県有施設を活用した実践的な導入実証や、優良事例の共有等による県内企業の参入支援を通じ、ペロブスカイト先進県を目指してまいります。

 水素の利活用の促進につきましては、本県の強みを活かした貯蔵・利用技術等の研究開発・実用化に向けて、先進県である山梨県との連携を強化いたします。加えて、水素専門コーディネータを新たに設置するなど、産学官によるプラットフォームを構築し、研究会の開催や技術開発の支援等を通じて、水素関連ビジネスの創出につなげてまいります。

 次に、次世代モビリティの導入促進についてであります。

 新しい空の移動手段として、多くの可能性を有する次世代エアモビリティについて、本県は先進導入地域を目指してまいります。令和9年度の商用運航開始に向け、本年度に策定したロードマップに基づく取組を順次展開し、民間事業者の参入促進を図ってまいります。

 まず、予想される利用者層や適正な利用料金などを把握するための需要調査を行います。加えて、3次元点群データを活用し、航路中の障害物等を確認した上で、利用分野別の事業モデルの検討を進めてまいります。さらに、関連産業の集積等を図るため、機体の整備機能等を有する運航拠点の設置可能性を調査するほか、県内中小企業等を対象に部品受注のためのビジネスマッチング会を開催いたします。あわせて、県民の皆様の認知度向上を図るため、実機を使ったデモフライトを実施してまいります。

 また、陸・海の次世代モビリティへの取組も強化いたします。次世代自動車については、次世代自動車センター浜松と連携して生成AI等の最新技術を活用した部品開発を後押しするほか、水中ドローンや自動運航船等の先端海洋ディープテックの活用などに取り組みます。地域企業が、急速に進展する産業構造の転換に的確に対応できるようスピード感を持って取り組んでまいります。

 次に、地域交通のリ・デザインについてであります。

 日常生活において公共交通での移動を確保できない地域では、既存資源を有効活用する公共ライドシェアの導入が有効な対策であります。

 全市町が参加している専門部会において先進事例を共有するほか、アドバイザー派遣を通じて、市町等に寄り添った伴走支援をしっかりと行ってまいります。

 また、昨年、関東地方知事会など様々な機会を通じて、私から公共ライドシェアに関する国の予算拡充について提案を行いました。この度、国が新たな支援制度を創設したことから、市町の積極的な活用も促してまいります。

 さらに、自動運転の実装につきましては、これまで7年間にわたり、県が主体となって、6市町で実証実験を行ってまいりました。この結果、システムが車両操作を行う段階まで、一定の成果が得られたところであります。今後は、より住民ニーズを踏まえた交通サービスの提供となるよう、これまでに得た成果や知見を広く共有するなど、市町と連携した上で、しっかりと取り組んでまいります。

 次に、こども・子育て支援の充実についてであります。

 大きく2つの視点で取組を進めてまいります。

 1つ目は、結婚・出産・子育ての切れ目ない支援であります。結婚やこどもを持ちたいという希望を叶えるため、ライフステージに応じた切れ目のない支援を実施してまいります。

 まず、「ふじのくに少子化突破戦略の新・羅針盤」を改訂し、地域特性に応じた分析や優良事例の共有により、市町の少子化対策を後押しするほか、1歳児に対して保育士を手厚く配置した施設等を新たに支援し、保育の質を確保いたします。

 また、女性に片寄りがちな家事・育児を男女で分担し、女性が出産後も仕事と家庭を両立できる社会の構築が重要であります。特に、産後8週間は産褥期と呼ばれ、女性が体を休める大切な時期であります。こうしたことから、男性の育児休業取得期間の長期化を図るため、中小企業で働く男性を対象に、28日を超える育児休業取得に対して、本県独自の新たな応援手当を全国で初めて支給いたします。あわせて雇用主にも共育ての意義等を説明し、育児休業を取りやすい職場環境整備を促すなど、両面から取組を進め、「共育て」先進県を目指してまいります。

 2つ目は、「こども目線」を取り入れた施策の展開であります。

 具体的には、今年3月に策定を予定している「しずおかこども幸せプラン」において、オンラインプラットフォームを活用し、直接、声の届きにくい、こども・若者の意見を積極的に取り入れてまいります。対策を求める意見の多かった自殺については、精神保健福祉士など多職種の専門家で構成する、こども・若者の自殺危機対応チームを設置し、専門的見地から助言・指導を行ってまいります。

 こどもは未来の宝との認識のもと、「こども第一主義」の姿勢で、こども・子育て支援にしっかりと取り組んでまいります。

 次に、医療・福祉人材の確保についてであります。

 県全域での医師確保につきましては、医学修学研修資金の貸与を受け、その後県内で勤務している医師は、今年度703人おり、一定の成果をあげております。貸与を促進するとともに、医療関係者と協力して県内への就業や定着を進め、さらなる医師確保を図ってまいります。

 特に医師数の不足する東部地域においては、新たに複数の取組を実施することで対策を加速化いたします。

 具体的には、まず、浜松医科大学と連携し、指導医と専攻医をセットで派遣し、若手医師の育成環境を整えつつ、医療機関の拠点化を進める事業に新たに取り組み、派遣医師数を段階的に増加させてまいります。

 また、順天堂大学医学部附属静岡病院とは、これまで県東部地域に無かった産婦人科及び小児科の専門研修プログラムを整備することで新たに合意したところです。来年度から2名の指導医を配置し、速やかに準備を進め、令和8年度から毎年4名ずつの専攻医確保を目指してまいります。

 こうした取組などにより、5年後に、県東部地域に勤務する医師が80名程度増加することを目標として、医師確保に取り組んでまいります。

 介護人材の確保につきましては、少子高齢化が進む中、外国人材を確保することがますます重要となっております。これまでモンゴルで現地面接会を開催してまいりましたが、来年度からは、対象国を4カ国に拡大した上で、オンライン面接会を延べ7回程度開催し、外国人材の確保を強化してまいります。

 また、限られた人材で効率よく業務を行い、介護の質を向上させることも重要であります。介護事業所における業務改善システムや介護ロボットの導入経費の補助を行うことに加え、活用等の相談にワンストップで対応し、きめ細やかに伴走支援等を行う「介護生産性向上総合相談センター」を新たに設置するなど、しっかりと取組を進めてまいります。

 次に、外国人の受入と多文化共生社会の構築についてであります。

 本県の発展のためには、多様性や異なる価値観を積極的に捉えた上で、本県の活力や成長につなげていくことが重要であります。

 まず、外国人に選ばれる「日本一の多文化共生推進県」を実現するため、都道府県として初めてのICC(インターカルチュラル・シティ)ネットワークへの加盟を目指してまいります。インターカルチュラルとは、外国人等によってもたらされる文化的多様性を都市の活力や成長の源泉とする新しい政策であります。

 ICCネットワークへの加盟により、国際基準に照らした本県の現状を明らかにし、諸外国の知見を本県施策に反映することで、外国人材の活躍促進や地域コミュニティの活性化などにつなげてまいります。

 また、急速な経済成長を続け、ITなどの分野で特に世界的な人材を輩出する、インドとの連携も重要であります。昨年12月に、県議会や経済界の皆様とともにインドのグジャラート州を訪問し、友好協定を締結するとともに、グジャラート大学と経済産業分野での協力に関する覚書を調印いたしました。

 来年度は、夏に、グジャラート大学と連携し、県内企業へのビジネスインターンの受入を目指します。また、学生に対し、県内企業をしっかりとPRすることで、秋の就職面接会につなげてまいります。加えて、スタートアップの招へいや、県内企業によるビジネスミッションの派遣も予定しており、双方にメリットのある交流を着実に進めてまいります。