(2)未来を拓く積極的なチャレンジ
令和7年2月県議会定例会知事提案説明要旨
【2.令和7年度当初予算案】(2)未来を拓く積極的なチャレンジ
次に、未来を拓く積極的なチャレンジにつきましては、6つの取組がございます。
まず、しずおかアボカド産地化プロジェクトについてであります。
温暖化による平均気温の上昇により、本県でも栽培可能な作物が増加しております。なかでもアボカドは、世界一栄養価の高い果物としてギネス認定されており、国内需要も急拡大していることから、生産技術等の確立と、販売需要の創出との両面から同時に取組を進め、他県に先駆けて産地化を図ってまいります。
具体的には、生産者をはじめ、JAグループや研究機関、料理人などの皆様とともに、幼木の栽培実証や、ブランド化に向けたレシピ開発などに取り組み、10年後には本県が日本一のアボカド産地となることを目指してまいります。
次に、デジタルクリエイターの育成についてであります。
仮想空間に関する市場の急拡大が見込まれる一方、人材不足が課題となっています。このため、静岡理工科大学に寄附講座を設置し、デジタルクリエイターを育成する取組を進めております。
今年度、全国的に著名で、極めて高い技術力を有する株式会社アルファコードの水野拓宏氏のもと、仮想空間の構築をテーマとした先進的な教育カリキュラムを開発いたしました。来年度、このカリキュラムを国へ申請した上で、今後段階的に受講生を増やし、令和8年度以降、毎年200名以上の学生が、最先端の技術や実践的なスキルを習得する予定であります。
デジタル時代を先導する優れた人材を計画的に育成するとともに、関連企業の誘致を行うことで、仮想空間分野のトップランナーを目指してまいります。
次に、AI活用による特別支援教育指導プロセスの変革についてであります。
現在、特別支援学校では、重度の障害や複数の障害をもつ児童生徒への専門的かつ高度な対応が求められる一方で、教職経験の少ない教員が多く、個別の指導計画作成への心理的・事務的負担が増加しております。
このため、令和9年度までに個人ごとの指導計画をAIに自動作成させることを目指し、来年度は、本県の教育データなどを集約してAIに補完させる仕組を開発してまいります。国の実証研究事業への採択も視野に入れ、個に応じた指導の充実と業務の効率化を進めてまいります。
次に、聴覚障害児療育モデルの構築についてであります。
先天性の聴覚障害は、早期発見、早期治療に加えて、適切な療育が重要であります。このため、昨年、県、静岡県立病院機構、オーストラリアのシェパードセンターの三者で療育モデル事業の協定を締結し、スタッフの長期研修を行うなど、準備を進めてまいりました。来年度からは、いよいよ毎年10人程度、人工内耳を装用した聴覚障害児を県立総合病院で受け入れ、療育を実際に開始いたします。
今後、受け入れる児童の数を着実に増やし、様々な特性や発達過程に応じたプログラムを実施することで、多くの先進的な療育手法を吸収し、全国のモデルとなる療育体制の構築を進めてまいります。
次に、遠隔地からの災害支援を可能とするシステムの構築についてであります。
大規模災害発生時には、社会インフラの早期復旧が求められますが、実際には、多くの技術者の現地派遣には、多くの時間とコストがかかるのが現状です。
この課題を技術によって解消するため、本県では、能登半島地震の際に、石川県が保有していた被災前の3次元点群データを公開し、遠隔からでも被災前後の地形状況を把握できる環境を整備しました。この取組を復旧支援につなげるため、遠隔地からでも被害状況の分析や復旧計画・設計を可能とする支援システムを構築し、全国規模での共有を図ることで、災害発生時の迅速かつ効果的な復旧の実現を目指してまいります。
次に、道路メンテナンスのDXについてであります。
県土の活力・交流を支える社会インフラは、今後、同時期に大量の更新が発生することから、メンテナンスの省力化・効率化を進めることが必要であります。このため、デジタル技術を駆使して、道路の異常箇所を抽出し、効果的な補修方法を解析するなど、AIを積極的に活用した、先進的・効率的な維持管理手法を確立してまいります。
今年度、下田市内で、ドライブレコーダの画像や車両の振動データなどを活用して道路の異常箇所を抽出する複数の技術を試行しました。その結果、精度やコスト等も踏まえ、スマートフォンの映像をAI解析する技術を選定いたしました。令和8年度の実装を目指し、来年度は、県内全域でこの技術を試行してまいります。さらに、蓄積したデータをAIで解析し、最適な補修工法を選定するなど、効率的な補修計画の立案に向けて取り組んでまいります。