第6次ふじのくにユニバーサルデザイン推進計画第4章(テキスト版)
第4章推進施策
<ハート>誰もが思いやりをもった共生社会づくり
指標
- ユニバーサルデザイン情報発信回数現状値2020年度81回目標値2025年度毎年度180回出典県民生活課調査
- 心のUDを促進する講座の実施回数現状値2020年度34回目標値2025年度毎年度40回出典県民生活課調査
(1)一人ひとりが実践できる人づくり
人の能力や個性は様々で、誰一人として同じ人はいません。また、人は年齢や環境の変化の影響を受けるもので、同じ人であっても同じ状況が続くとは限らず、生活に支障が生じる場合があります。社会的にも、高齢化の進行や新型コロナウイルス感染症等のリスクの高まりなど、環境は大きく変化していきます。
建物や設備、製品等のハード・ソフト分野では、ユニバーサルデザインを取り入れた整備が進められていますが、このような整備には時間や経費がかかるものもあります。そのため、私たちが日々生活している環境の全てをユニバーサルデザイン化していくことには限界があります。
また、建物や設備、製品等の汎用性が高まり多くの人にとって利用しやすいものが普及してきましたが、利用者一人ひとりの多様なニーズをすべて満たす機能を備えることは困難です。
一方で、ユニバーサルデザイン化が不十分であったり、ある人にとっては利用しづらい面があったりしても、お互いに助け合うことで補っていくことができます。
そこで、誰もが暮らしやすい社会づくりを進めるため、県民一人ひとりに働きかけてユニバーサルデザインの理念を普及することによって、お互いに多様性を尊重し、支え合う意識の醸成を図ります。
そして、県民一人ひとりが多様な人々の特性や考え方について理解した上で、相手の立場に立って思いやり、知恵と工夫によって、ケースごとに柔軟に対応し、きめ細やかな行動ができる人づくりを進めます。
1.理念の普及
【施策の方向性】
ユニバーサルデザインは、障害のある人や高齢者などの特定の人だけに関わるものではありません。自らを含むすべての人に関わるものだということを知り、自分ごととして共感を持ち、他者への理解を深めることが重要です。
そのため、子どもから大人まで幅広く、県民一人ひとりに向けてユニバーサルデザインの理念や知識の普及を進めます。
また、ユニバーサルデザインの取組とSDGsには、理念や取組において共通する部分があることから、SDGsとの共通点を併せて周知することで、ユニバーサルデザインとSDGs両方への関心を高めていきます。
【主な取組】
- SNSやホームページなどを通じた、身近なユニバーサルデザインや先進的な取組等のユニバーサルデザイン関連情報の発信
- オリンピック・パラリンピックを契機に生まれた、障害のある人へ理解が深まった機運を活かし、企業や学校等においてユニバーサルデザインの理念や知識を学ぶ講座の実施
2.心のUDの促進
【施策の方向性】
お互いに支え合う社会を築いていくには、ユニバーサルデザインの理念の普及だけでなく、県民一人ひとりが相手の立場に立って思いやりのある行動によりハード・ソフト分野を補う「心のUD」の促進が重要になります。
促進にあたり、障害のある人や高齢者、外国人など、様々な人々の特性を知り、他者(相手)の視点をもつことで、自分とは異なる立場や価値観をもつ他者(相手)の立場を理解することにつながります。
また、お互いに支え合うということは、自分も相手も尊重するということです。県民一人ひとりが自分を大切にすることで自分に誇りを持ち、相手も大切にすることで、性別や障害等の有無に関係なく、多様性を受け入れることにつながると考えられます。
そのような理解や共感から生まれる思いやりの気持ちが行動につながるよう、「心のUD」の普及やそれを促進するための仕組みづくり、支える側も支えられる側もお互いに声をかけやすい環境づくりを進めます。
【主な取組】
- 小中学校等における、障害のある人や高齢者、外国人等がどのようなことに困るかを理解し、サポートなどの意思表示や行動につながる講座の実施
- 障害のある人や高齢者、外国人等へのそれぞれの特性に応じた対応方法について、企業等が必要な対象を選択して学ぶ講座の実施
- 外見では障害があると分からない人が必要な援助を受けやすくするため、マークを見かけた人に思いやりのある行動を促す「ヘルプマーク」の普及
- 特別支援学校に在籍する児童生徒と居住する地域の小・中学校の児童生徒との交流や共同学習の実施
- 学校、地域社会、関係機関との連携による、人権に関する講演会や講座の開催、広報啓発活動の実施
- 学校や職場、SNS等における誹謗中傷の防止のための啓発
(2)すべての人が社会参加できる土壌づくり
誰もが生き生きと暮らせるよう、能力や特性を最大限に発揮して活躍できる社会を目指します。
そのため、障害の有無や性別などにかかわらず、すべての人が社会の中で自立した生活を営むことができるように、主体的に社会に参加できる仕組みを整備します。
また、コミュニケーションへの不安や差別や偏見へのおそれといった心理的な障壁によって社会参加が阻害されることのないよう、学校や企業等の組織、地域、家庭など社会全体において、多様性を尊重する共生社会への理解を促進し、すべての人が社会に参加しやすい環境をつくります。
1.社会参加を促す仕組みの整備
【施策の方向性】
障害の有無や性別などにかかわらず、社会参加を促し、自立した生活を送ることができるよう、多様な特性に応じた支援体制を整備します。
【主な取組】
- 子育て支援活動や生活文化・伝統芸能伝承を通じた世代間交流等による高齢者の社会参加の促進、シルバー人材センターや老人クラブ(シニアクラブ)の会員拡大
- 障害がある人の雇用促進のための相談、職業訓練、職場定着支援の実施
- 外国人県民への教育環境の整備や日本語能力の習得や就職の支援
- 女性活躍の理解促進や多様な働き方を選択できる職場づくりによる男女がともに能力を発揮できる就労環境の整備、多様なニーズに対応した保育・介護サービス等の拡充
- 男女間の暴力やセクシュアル・ハラスメント等の根絶の啓発やDV防止のためのセミナーなどの学習機会を提供、被害者に対する相談・保護・自立支援などの総合的な支援
- 性的指向及び性自認を理由に困難を抱えている人のための相談や交流会の実施、パートナーシップ制度の導入
2.社会における理解の促進
【施策の方向性】
多様な特性を持つ方が、社会の一員として能力を最大限に発揮出来るよう、研修会や広報啓発活動を通じて、学校や職場、地域、家庭など社会の様々な場所における合理的配慮の提供や共生社会への理解の促進等に取り組みます。
【主な取組】
- 障害を理由とする差別の解消に向けた合理的配慮の提供等に関する理解促進のための研修会などの開催支援
- 認知症への正しい知識の普及のための「認知症サポーター」の養成
- 安心して外出できる環境の実現のための「介護マーク」の普及促進
- 外国人県民と相互の文化や生活習慣を理解し合う多文化共生意識の定着に向けた広報啓発や出前教室の実施
- 男女が共に、固定的な性別役割分担意識にとらわれず、様々な分野に参画できるように、子どもや若者、男性に重点を置いた意識啓発や広報の実施
- 性の多様性に関する理解の促進のため、ホームページ等による情報提供や研修会等の実施
<ソフト>誰もが利用しやすいサービス・情報や製品の提供
- 指標工業技術研究所によるユニバーサルデザインに関する研究開発技術指導件数及び相談の件数
- 現状値2020年度366件目標値2025年度毎年度500件出典商工振興課調べ
- 指標行政手続のオンライン化対応済割合現状値2020年度27.8%目標値2025年度80%デジタル戦略課調べ
(1)暮らしを豊かにするサービス・情報の提供
誰もが日常の暮らしの中で不自由なく過ごし、生活の質を高めることができるよう、利用しやすいサービスや必要な情報を適切に受けられる環境づくりを進めます。
また、本県を訪れる人が快適に過ごせるよう、障害のある人、高齢者、外国人など、誰もが訪れたくなる観光地づくりを進めます。
1.生活の質を高めるサービス・情報の提供
【施策の方向性】
誰もが安全で安心な生活を送りながら、買物や食事などを楽しむことができる、質の高い生活ができるよう、多様なニーズに応じた顧客サービスや分かりやすい情報の提供を受けることができる環境づくりを進めます。
【主な取組】
- SNSやホームページなどを通じた、ユニバーサルデザインに配慮した製品やサービスに関する情報の発信
- 品名等を分かりやすく表示するための事業者への指導
- 外国人が、日本人と同様に医療や保健、福祉等のサービスを受けることのできる環境の整備
2.快適に観光を楽しめるサービス・情報の提供
【施策の方向性】
誰もが快適に観光を楽しむことができるよう、観光施設のユニバーサルデザイン化に関する情報や「やさしい日本語」及び多言語表記による情報の提供を受けることができる環境づくりを進めます。
また、旅行者の満足度を高めるため、観光関連事業者のおもてなし力を向上し、静岡ならではのおもてなしを提供できる地域づくりを進めます。
【主な取組】
- 障害や高齢等の制約の有無にかかわらず参加できる、ユニバーサルデザインに配慮した旅行を開催する事業者等への支援
- 県内観光施設等における、車いす使用者駐車場、多目的トイレ、段差の解消等の取組や対応情報の提供
- 外国人観光客の利便性向上のための、観光施設、休憩施設及び自然歩道への「やさしい日本語」及び多言語表記観光案内板の整備
- 旅館・ホテル等観光関連事業者を対象とした、国内外からの旅行者へのおもてなし力向上のための研修会等の実施
(2)利用しやすい行政サービス・情報の提供
障害のある人、高齢者、外国人など、誰もが利用しやすく満足度の高い行政サービスや情報の提供を受けられるよう、利便性を向上するとともに、必要な時に十分な情報を容易に取得できる環境づくりを進めます。
また、災害時においても、すべての人に配慮し、安全確保のための情報提供や避難所の運営体制の整備を進めます。
1.利用者の立場に立った行政対応
【施策の方向性】
利用者の立場に立って、行政サービスの利用手続の簡素化を図るとともに、在宅で申請が可能な電子申請、点字や音声、多言語による情報発信など、利用者の負担を軽減するほか、様々な人に配慮した利用しやすく満足度の高い行政サービス・情報の提供を進めます。
特に、デジタル化の進展に伴い、デジタル技術の活用を進めて利便性の向上を図るとともに、デジタルデバイド(インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差)の解消に向け、デジタル環境の整備やデジタル機器の利用に関する知識の習得等を支援します。
【主な取組】
- 電子申請システムや申請書類等のダウンロードサービスの運用等のデジタル化の推進
- 文字・色の使い方などデザインへの配慮や「やさしい日本語」及び多言語表記等による、誰にも分かりやすい情報の提供
- ホームページ等のデジタル情報を見やすく・分かりやすく発信するため、文字の拡大、色の変換等が容易にできるデジタル表示の利便性を活かしたウェブアクセシビリティの推進
- 音声や点字、電子ブック、手話通訳などによる、誰にも伝わる多様な手段による情報の発信
- 県内在住外国人が円滑な日常生活を送るための、ガイドラインに基づく日常生活にとって必要・有用な情報のポータルサイト等による発信
- 外国語(英語・中国語・ポルトガル語)による運転免許試験の実施
- 子育て中の人の行事やイベントへの参加を可能とするための、おもちゃ・絵本などの託児セットの庁内及び市町への貸し出し、行事やイベントにおける託児サービスの実施
- 電話リレーサービスや110番アプリ、Eメール、ファクシミリを利用した110番通報手段の確保
- デジタルデバイド解消のため、地域における身近な相談役となるデジタルサポーターの育成
2.すべての人に配慮した災害時の対応
【施策の方向性】
障害のある人、高齢者、外国人など、誰もが災害時に的確に行動し、安全を確保できるようにするため、必要な防災情報を確実に提供します。
また、多様な避難者を受け入れるため、避難所の運営体制を整備します。
【主な取組】
- 災害時における要配慮者への適切な支援に関する知識の普及
- 避難行動要支援者の迅速な避難支援及び的確な安否確認を行うための、市町における個別避難計画の作成の促進
- 避難所において多様な避難者への対応を可能にするための、避難所運営訓練の促進、福祉避難所の整備・運営を行う市町への支援
- 「やさしい日本語」及び多言語による防災啓発パンフレット等の作成、外国人を対象とした防災研修会の開催、外国語ボランティアの登録・育成
- 多言語に対応した「静岡県総合防災アプリ」の普及
(3)使いやすく魅力あるものづくり
障害のある人や高齢者などの自立した日常生活や社会参加を促すため、利用者の多様なニーズに応じた製品や、誰にも利用しやすいユニバーサルデザインに配慮された製品の開発を支援するとともに、製品の普及を進めます。
1.製品開発の促進
【施策の方向性】
利用者のニーズを反映した製品開発や、ユニバーサルデザインによる付加価値の高い魅力ある製品づくり、企業のブランド力の強化を図るため、企業の製品開発を支援します。
【主な取組】
- 県工業技術研究所におけるユニバーサルデザインに配慮した製品の研究開発や講習会等の実施、県内企業への技術指導
- 中小企業における戦略的なデザインの活用を促進するための、使用者の視点に立った優れた「製品」「仕組み」「取組」の顕彰
2.製品の利用促進
【施策の方向性】
利用者の多様なニーズに応じた製品やユニバーサルデザインに配慮された製品に関する情報提供を行うことにより、それらの製品の利用を促進します。
【主な取組】
- ユニバーサルデザインの製品、先進的な取組等のインターネットやSNSによる情報の発信
- 社会や環境への影響を考えてより良いモノを選ぶ消費者の育成
- 県の物品調達におけるユニバーサルデザインに配慮した製品の選定
<ハード>誰もが暮らしやすいまちづくり
指標集約連携型都市構造の実現に向けた取組件数※
都市機能の誘導(公共施設の再編や再開発等)により居住の集約等を進める都市のコンパクト化と公共交通網の再構築等により、誰もが暮らしやすいコンパクトなまちづくりを推進する取組。
現状値2020年度312件目標値2025年度累計360件出典都市計画課調査
県内乗合バスのバリアフリー車両導入の割合現状値2020年度81.4%目標値2025年度84%出典都道府県別移動円滑化基準適合車両導入状況(国土交通省)
(1)利用しやすく配慮された施設等の整備
日常生活や社会参加の基盤となる場所が不便だと、生活の質が低下するとともに、活動の意欲も低下するおそれがあります。誰もが利用しやすい施設になるよう、利用者のニーズを反映するなど利用者の視点を踏まえ、より快適で生活しやすい建物、公園、住宅等の整備を進め、すべての人の自由な活動を促進します。
1.快適に利用できる建物・公園等の整備
【施策の方向性】
誰もが暮らしやすい環境づくりを進めるため、県有施設だけではなく、市町、民間施設へユニバーサルデザインの導入やユニバーサルデザインを取り入れたまちづくりを促進し、快適に利用できる建物・公園等の整備を進めます。
【主な取組】
- 市町や民間事業者へのユニバーサルデザインを活かした建築設計のガイドラインの普及
- 県有施設でのエレベーターの設置、段差の解消、多機能トイレの設置、分かりやすい案内誘導表示等の整備
- 市街地再開発事業により整備される施設や建築物へエレベーターの設置、段差の解消、多機能トイレの設置、分かりやすい案内誘導表示等の促進のための施工者への助言・啓発
- 居住や都市機能を誘導・集約し公共交通機関等で結ぶ、誰もが暮らしやすい集約連携型のまちづくりの推進
- 公園での段差の解消やスロープの設置等のバリアフリー整備の促進支援のための市町への支援
- 河川の高水敷(洪水時に水に浸かる部分)や海岸の空間を利用した遊歩道、港湾の緑地や人工海浜等の交流空間等での歩きやすい歩道、スロープ等の整備の促進
2.暮らしやすい住宅の整備
【施策の方向性】
ユニバーサルデザインを取り入れた県営住宅等の準備を進めるとともに、多様な生活様式に対応し、安全で快適にすることで誰もが暮らしやすい住宅の普及や情報の提供をします。
【主な取組】
- 高齢者が安心して安全に暮らすことができる住宅建築等の研修会の実施
- 県営住宅におけるエレベーターの設置、段差の解消、手すりの設置等の整備
- サービス付き高齢者向け住宅の登録の推進
- 高齢者や障害のある人、子育て世帯等が安心して安全に、快適に暮らすことができる住宅関連情報の提供
(2)円滑に移動できる道路や公共交通機関の整備
誰もが自由で快適に生活するためには、施設などが整備されているだけでなく、生活空間全体が円滑に移動できる環境であることも重要です。誰もが安全で快適に移動できるよう、道路や歩行空間、公共交通機関等の整備を地域住民等との協議を取り入れながら進めます。
また、案内の統一性や連続性などに配慮した利用者に分かりやすい案内標識の整備を進めます。
1.安全で快適に移動できる道路等の整備
【施策の方向性】
誰もが道路や歩行空間を安全で快適に移動できるよう、段差のない歩行空間や分かりやすい案内標識等の整備を進めます。
【主な取組】
- 地域住民等のニーズを踏まえた使いやすく満足度の高い道路の整備、車椅子利用者等の道路利用状況を踏まえた歩道の整備、歩行者と自転車の通行空間の分離、無電柱化の推進
- バリアフリーに配慮した信号機の整備、信号灯器のLED化、標識・標示の高輝度化、エスコートゾーン整備の推進
2.移動しやすい公共交通機関の整備
【施策の方向性】
誰もが円滑に移動できるよう、市町や公共交通事業者と連携し、地域の生活交通を確保するとともに、ユニバーサルデザインに配慮した鉄道駅等旅客施設の整備やバリアフリーバス等利用しやすい旅客車両の導入を促進し、移動しやすい公共交通機関の整備を進めます。
また、公共交通機関の再構築による一体的な整備を目指します。
【主な取組】
- 民間事業者や市町への支援によるバス路線の維持・確保、ノンステップバスやワンステップバス等の導入を促進、デマンド交通や乗合タクシーなど新たな生活交通の導入支援
- 鉄道事業者等が行うエレベーターや多機能トイレの設置等、鉄道駅のユニバーサルデザイン施設整備に対し助成する市町への支援
- 空港や港湾の整備、改修において、スロープ整備等による段差の解消や、分かりやすい案内誘導表示等のユニバーサルデザイン導入の促進
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