あなたの「富士山物語」(『富士山』に想う/桑原英夫)
『富士山』に想う/桑原英夫
我々静岡人にとっては、富士山は何時でもその美しい姿を眺める事ができ、一般の山々を見るのと感覚が違い、神社仏閣に接するような感情で仰ぎ見ているのではないだろうか。県内どこからでも見られる富士山だが、自分たちの土地から見る富士山が一番美しいと自慢しあっている程である。
昭和三十年頃までは、富士市の郊外は農地が広がり、秋から冬にかけての晴れた日、東海道線の上り列車で鈴川駅(現吉原)から次の原駅までの間、線路は一直線で、仰ぎ見る富士山は芦原の向こうに何の障害もなく田園が広がり裾までいっぱいに広げ、山頂に輝く白雪は眩いばかりに光り、その雄大な富士山の姿こそ、将に一幅の名画であった。誰もが感動するその十数分、言い知れぬ幸福感に浸れる時であった。遠方よりの旅人は、思わず手を合わせ祈る姿もしばしばであった。
若き日、我々仲間五~六人の集まる店に「富士子」さんという美しい人がいた。そこに集まり、会うだけで心暖まる、心身共に美しい人であった。何時しか仲間同志223と呼び、暗号化して、2×2×3=12即ち(twelve=トウエルブ)と呼ぶようになり、「富士登山」と言えば12の店に集合であった。「神聖にして冒すべからず」皆暗黙の了解で、楽しく心癒される時代だった。
あれから五十余年、楽しかった仲間達も次第に昇天し、美しい富士山だけが厳然と聳えているが、我々の心の故郷であった富士山、あの12は如何なされたであろう。
その頃12に仲間で贈った一遍の詩
『美しく雄大な富士山、清らかなその姿、春夏秋冬、変わる事なく日本の空に誇らかに仰ぎ見るその時、心爽やかに雄大な気を抱かせ、そっと慰めてくれる
ああ〃その姿223に想う』
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