あなたの「富士山物語」(あの朝の、気高い姿/安部惠久)
あの朝の、気高い姿/安部惠久
朝が、まだ暗いうちから
近所の人たちに送られて
一番列車は、九州から
首都・東京めざして
陸軍の学校めざして
レールを鳴らし、白く蒸気を吐きながら
ひと晩じゅう走りつづけた
朝、昭和十九年三月二十五日
この目で、あなたを仰ぎ見た
車窓に、額、おしつけて
君国に、この命捧げんと
感激の涙で、あなたを仰ぎ見た
東海の蒼天に、そびえ立ち
うつくしい裾野、さわやかに太平洋へなびかせる
気高い姿――――――
いま、八十三才のわたし
東京湾のかなたにそそり立つ
あの朝の、気高い姿のままのあなたを
じっと見つめる
一日も、半日も、一時間も永く生きて
わが民族のさわやかな精気
守り伝えんと
はるかに仰ぐ
じっと仰ぐ
このページに関するお問い合わせ
スポーツ・文化観光部文化局富士山世界遺産課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-3746
ファクス番号:054-221-3757
sekai@pref.shizuoka.lg.jp