3 今後の県政運営
令和6年6月県議会定例会知事提案説明要旨
3 今後の県政運営
次に、今後の県政運営についてであります。
私は、浜松市長時代、幸福度日本一を目指し、16年間で様々な取組を行ってまいりました。例えば、徹底した行財政改革によって、市債残高を1,314億円減らしました。また、こども第一主義を掲げ、こども医療費補助金を小中学生に早期に拡大したほか、全国に先駆け、小学校3年生までの30人学級を実現いたしました。産業面では、343社の企業誘致を実現したほか、スタートアップへの資金として、ベンチャーキャピタルから154億円の投資を引き出しました。
こうした様々な取組から得た経験や知識を最大限に活用するとともに、伊豆・東部、中部、西部それぞれの地域特性に合わせた施策を展開することにより、県民の皆様が暮らしやすさや幸せを実感できるように、県政運営に全身全霊で取り組んでまいる所存であります。
次に、リニア中央新幹線についてであります。
私の基本姿勢は、リニア中央新幹線の必要性は理解し、推進する立場であるものの、大井川の水資源及び南アルプスの自然環境の保全との両立を堅持するものであります。国の関与のもと、一つ一つの課題の解決に向けて、大井川流域の市町等としっかりと連携し、JR東海との対話をスピード感を持って進めてまいります。
あわせて、リニア建設に伴う本県へのメリットについて、議論を進めていくことも非常に重要であります。東海道新幹線の利便性の向上をはじめ、県内市町の御意見を伺いながら、本県のメリットの最大化に向けて、しっかりとJR東海と話を進めてまいります。
また、JR東海との信頼関係は、こうした取組を進める上での大前提であります。今般の岐阜県内のリニアトンネル工事に伴う井戸等の地下水位低下の事象は、JR東海から岐阜県への報告が遅れ、また、一定の水量が流出し続けるなど、本県にとって、看過できないものでありました。そのため、私は、就任直後、本県の中央新幹線対策本部長の森副知事に指示し、JR東海への正式な説明を要請したところです。その結果、JR東海からリスク管理を強化する具体的な対策が示され、県専門部会による技術的確認も経て、大井川利水関係協議会の皆様においても状況について理解していただいたことから、JR東海との対話を進めることができる状況となりました。
今後も、関係者との信頼関係をしっかりと築きながら、課題の解決にスピード感をもって取り組んでまいります。
次に、遠州灘海浜公園篠原地区の整備についてであります。
野球場等のスポーツ施設の整備を検討する際は、単体ではなく、公園周辺を含めたエリアを一体的に整備し、集客効果を上げることが、地域活性化を図る上で大変重要であります。今回の公園整備につきましても、野球場を中心に周辺整備を行い、全体として集客力のある施設にすることが不可欠であります。私は、選挙期間中から、県、浜松市、民間がそれぞれの責任分担と応分の負担をする必要性を訴えてまいりました。また、整備費や維持管理費を縮減するための一つの提案として、開放型ドームを示しました。
このため、今後、公園を含む全体的な利活用の構想として、野球場を含む周辺のまちづくりやにぎわい創出、県と浜松市の役割分担、民間活力の活用などについて、新たな協議会を設置し、改めてしっかりと検討してまいります。
一方で、公園基本計画案については、これまでの県議会での議論を踏まえて、4月にパブリックコメントを実施したところです。今後、全体的な利活用の構想が検討されることとなりますが、公園としての基本的な機能や計画は大きく変更されることは想定されないため、基本計画案につきましては、本議会の常任委員会において御説明させていただく考えであります。
引き続き、県議会や県民の皆様の御意見を伺いながら、県西部のスポーツ拠点としてふさわしく、多くの県民の皆様に愛される施設となるよう、精力的に検討を進めてまいります。
次に、産業・観光分野についてであります。
産業は人々の生活を豊かにするとともに、そこから生まれる利益が更なる投資や発展に繋がります。そのため、本県の更なる成長に向けて、産業政策の強化は極めて重要であります。また、若者の定着という観点からも、魅力ある雇用の場の確保が必要です。
これまでの主力である製造業等に加え、将来の本県産業を支える可能性のある、新規の企業を創出・育成していくことが重要であります。そのため、スタートアップ施策を充実・加速させることによって、多くのスタートアップを本県内で創出するとともに、首都圏等からの誘致も行ってまいります。特に、伊豆地域や東部地域は、首都圏からのアクセスが比較的良好であることから、スタートアップ誘致やコミュニティ形成などの取組を、積極的に進めてまいります。
また、本県内に企業を集積させることで、より効果的な産業発展を目指す観点も重要であります。そのため、企業立地件数日本一を目指し、企業誘致の関連施策を充実させてまいります。特に、本県においては、進出したい企業があるにもかかわらず、土地が不足し、ボトルネックとなっております。規制緩和の仕組みを活用し、速やかな農地転用によって産業用地を創出した浜松市の事例も踏まえ、県内全域で産業用地の確保に努め、企業誘致を一層推進してまいります。
加えて、大きな可能性を有する第一次産業の振興も重要であります。本県は豊かな自然に恵まれ、質の高い多彩な農林水産物を産出しております。今後の振興には様々な課題がありますが、例えば、大きな課題である担い手不足については、関連大学において人材育成を着実に進めることに加え、県外から新たな農業法人や優れた技術を持つ企業などを呼び込むべく、私自らが国内外において、トップセールスを積極的に実施する所存であります。
さらに、産業としての観光も積極的に進めてまいります。美しい自然や豊かな食材、歴史・文化など、県内各地域には多彩な観光資源があります。市町や事業者と協働して、これらの資源の魅力を改めて捉え直し、積極的にアピールすることで、来訪者が訪れ、地域経済の好循環を生む観光地域づくりを進めてまいります。また、山梨、長野、愛知、神奈川といった隣接県との連携による広域観光施策も積極的に進めてまいります。
次に、子育て・教育・健康分野についてであります。
子どもは未来の宝との認識のもと、「こども第一主義」の姿勢で取り組んでまいります。出生率の低下は大きな課題であります。その主な原因である未婚化と晩婚化にしっかりと向き合い、結婚、妊娠、出産、子育ての各段階で切れ目のない支援を行うことで、安心して結婚や子育てができる環境を整えてまいります。
また、未来を担う人材を育成する上で、教育の果たす役割は重要であります。不登校の児童生徒に対しては、バーチャルスクールやフリースクール等との連携により、誰一人取り残さない教育を推進するとともに、デジタル人材の育成や特色ある高校教育を推進するなど、子どもの才能を伸ばす教育にも力を入れてまいります。
人生100年時代を迎える中、健康寿命の延伸がますます重要となっております。本県は、既に全国有数の健康長寿県ではありますが、まだまだ伸びしろがあります。医療健康産業の進化や山梨県との医療連携、さらには温泉や食といった県内の資源を結びつけた取組を進めてまいります。また、誰もが住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう、地域包括ケアの充実を図ってまいります。
さらに、全ての県民の皆様に必要な医療を提供するためには、医師不足の解消が必要であります。本県の医師不足につきましては、県全体として医師の絶対数の不足とともに、県内の地域的な偏在が大きな課題と捉えております。このため、医療関係者の御意見も伺いながら、例えば若手医師の受入環境を整えながら、既存の医学修学研修資金制度を拡充するなど、まずは即効性のある対応を検討してまいります。
次に、防災・減災分野についてであります。
県民の皆様の幸せを実現するためには、有事に備え、生命・財産を守るための取組が極めて重要であります。
本年1月1日に最大震度7を観測した能登半島地震では、多くの人命が犠牲となりました。改めて犠牲になられた方々に哀悼の意を表しますとともに、御遺族や被災された全ての皆様に対して、衷心よりお見舞いを申し上げます。伊豆半島を有する本県においても、今回の震災を教訓に、半島防災の取組を強化してまいります。それに加え、近年、頻発化、激甚化する豪雨災害等を踏まえ、市町とも連携した上で、「TOUKAI-0」による家屋の耐震化などの「自助」、自主防災組織の支援による地域防災力の強化などの「共助」、道路ネットワークの構築や計画的な河川整備などの「公助」の各分野において、それぞれの取組を強化してまいります。
次に、暮らし・環境分野についてであります。
持続可能な社会を築いていくため、2050年のカーボンニュートラル社会の実現に向けた取組を、さらに加速してまいります。無秩序な開発ではなく、地域と共生した再生可能エネルギーの導入を促進するほか、民間企業や山梨県と協働した水素エネルギーの利活用も率先して進めてまいります。また、伊豆・富士・天竜地区などの山林において主伐・再造林を促進し、森林の若返りにより二酸化炭素吸収量を確保するなど、脱炭素社会を導く先頭に立ち、総力を結集して取り組んでまいります。
また、人口減少・高齢化がさらに加速する現状を考えれば、外国人材の活躍が必要不可欠であります。このため、異なる文化、言語、生活習慣などを持つ外国人県民が、一層安心して暮らし、活躍する多文化共生社会を構築してまいります。最も大きな課題は、外国人の子どもたちの教育であります。成人して独り立ちできるよう、子どもたちの学びを保障し、不就学ゼロを目指します。また、留学生を含め、高度外国人材がその能力を発揮して、本県の様々な分野で活躍できるよう県内企業とのマッチングなどに積極的に取り組んでまいります。
次に、行財政改革についてであります。
今後、人口減少に伴う更なる税収減が予想され、財政の状況が厳しさを増すことが想定されております。こうした中、県民の皆様が必要とする行政サービスをしっかりと確保し、地域社会を維持していくためには、これまで以上に、歳入歳出両面の徹底した見直しや、施策の重点化等に取り組む必要があります。行政においても、最少の経費で最大の効果を生むことが大原則であり、県行政に経営の視点を注ぎ込むことで、より一層の重点化と効率化を図ってまいります。
また、老朽化するインフラや公共施設につきましては、後世にツケを残さないよう、将来を見据えた資産経営を行うとともに、適正な県債管理などに取り組んでまいります。あわせて、民間活力を有効に活用するため、PFIやPPPなど、官民連携手法を積極的に活用してまいります。