静岡県の林木育種事業
森林の多面的機能を持続的に発揮させるためには、将来にわたって適正な森林の整備と保全を図ることが重要です。
林木育種によって改良された成長や材質に優れる品種により造林することで、森林の多面的機能の向上が期待され、品質の高い木材を低コストで生産することも可能になります。
1 育種場
浜松市浜名区の西部農林事務所育種場では、これまで国や県が開発した優良な品種を用いて造成した採種園(種子を取るための母樹林)において、種子を生産し、苗木生産者に配布しています。
閉鎖型採種園
平成30年度に閉鎖型採種園28棟の造成が完了し、エリートツリー(国名称:特定母樹)のスギ、ヒノキの種子生産を行っています。
エリートツリーは、成長や材質に優れ、従来品種よりも花粉が少ない特性を併せ持っています。
令和2年度までに、県が開発したエリートツリーは、スギ30品種、ヒノキ27品種が国に特定母樹として指定されました。
閉鎖型採種園はビニールハウスでできており、国や県が開発したエリートツリーの母樹(種子を取るために育成している木)を配置して水分や日射量を管理し、人工交配によってエリートツリー同士を確実に掛け合わせ、種子を生産しています。



野外の採種園
県では、昭和29年から43年にかけ、県内の森林から、スギ、ヒノキ、アカマツ、クロマツの特に成長等の形質に優れた個体を精英樹として選抜しました。
その一部は、育種場に、採種園(種子を取るための母樹林)、採穂園(穂を取るための母樹林)として保存されています。
さらにその中でも、花粉の少ない品種の種子生産の拠点として、低花粉品種スギ、少花粉品種ヒノキ(「2 花粉の少ない苗木」参照)のミニチュア採種園(種子を取りやすいように母樹を小さく仕立てた採種園)を野外に造成、管理し、種子の生産を行っています。

2 花粉の少ない苗木
令和5年5月に、国の花粉症対策の全体像が閣議決定されました。
とりまとめられた花粉症対策の3本柱の内の「発生源対策」として、スギ人工林の伐採・植替えの加速化や花粉の少ない苗木の生産拡大により、全国のスギ人口林の面積を10年後に2割減らす方針が示されました。
本県では、早くから花粉の少ない苗木の生産に取り組んでおり、スギは平成27年出荷から、ヒノキは令和5年出荷から系統確認苗木(「3 系統確認苗木」参照)の全量が花粉の少ない苗木に切り替わっています。
花粉の少ない苗木とは、花粉症対策品種(無花粉品種、少花粉品種、低花粉品種)およびエリートツリー(国名称:特定母樹)の総称です。
区分 |
花粉量 |
特徴 |
---|---|---|
従来の品種 |
100% | 花粉を発生させる |
エリートツリー(国名称:特定母樹) |
50%以下 |
花粉量が従来の半分程度 成長が早い 材質が良い |
低花粉品種 |
20%程度 | 花粉量が相当量少ない |
少花粉品種 |
1%以下 | 花粉をほとんど発生させない |
無花粉品種 |
0% | 花粉を発生させない |
エリートツリー(国名称:特定母樹)
特に優良な種苗を生産するための種穂の採取に適する樹木であって、成長に係る特性の特に優れたもので、農林水産大臣が指定することになっています。
特定母樹の指定基準は、次のとおりです。
1.成長量は、従来の系統と比較して1.5倍以上の材積
2.材の剛性は、同様の林分の個体の平均値と比較して優れていること
3.幹の通直性は、曲がりが全くないか、曲がりがあっても採材に支障がないもの
4.花粉量が一般的なスギ・ヒノキのおおむね半分以下
3 系統確認苗木
県内に植栽されているほとんどのスギ・ヒノキは育種場で生産した種子から育成されたものです。生産した種子には番号を付け、苗木として出荷されるまで各種調査により系統を確認しています。
4 抵抗性マツ
西日本地域のマツノザイセンチュウ病激害地から抵抗性のある個体を選抜し、さらにこれにマツノザイセンチュウを人工接種し生き残った個体を抵抗性マツといいます。県では育種場および農林技術研究所森林・林業研究センターに抵抗性マツの採種園を造成して種子を生産しています。
抵抗性マツの苗木購入に関するお問い合わせは、静岡県山林種苗協同組合連合会まで。(電話:054-254-8916)
このページに関するお問い合わせ
経済産業部森林・林業局森林整備課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-2680
ファクス番号:054-221-2829
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