県議会だより第121号(3) ピックアップ本会議(1)
行政
令和5年度の当初予算編成
Q.厳しい財政状況の中で、重点を置いた取り組みは。
A.喫緊の課題である物価高騰対策として中小企業等の脱炭素化や新事業展開への支援、高校授業料の減免拡充などを実施する。昨年の台風第15号の被害を踏まえ、流域治水に基づくハード・ソフト両面での対策を講じる。子どもの安全対策予算を倍増するほか、結婚から妊娠・出産・子育てまで一貫した支援を行うなど、子ども・子育て対策を充実させる。その他、盛り土対策の充実や防疫体制強化、本県への移住の促進、医療人材の確保、農林水産業の競争力強化等にも全力で取り組む。
熱海市伊豆山地区土石流災害
Q.行政対応の再検証に対する知事の考えは。
A.県議会の特別委員会で「再検証すべき」との結果が出されたことは、再発防止への強い思いによるものと認識し、大変重く受け止めている。再検証については、行政対応検証委員会の報告内容と比較・精査するとともに、損害賠償請求訴訟との関係等を整理するなど、慎重に検討する。再発防止に向けて、不適切な盛り土の指導・監視を強化するとともに、市町等との緊密な連携や職員の意識改革等を推進し、県民の生命、財産の保護に全力で取り組む。
県・政令指定都市サミット
Q.このところ開催されていない県・政令指定都市サミットを再開する考えは。
A.県と政令指定都市は、各々の自主性と自立性を尊重しながら、質の高い行政サービスの提供に向け、日頃から意思疎通を図っていくことが必要である。新型コロナ対策や激甚化する風水害等の喫緊の課題に対し、県と両市の緊密な連携の重要性は高まっており、首長同士で議論する場が必要である。4月の選挙で誕生する両市の新市長との信頼関係の構築や三者が抱える課題解決に向け、改めてサミットの開催を呼び掛けていく。
産業
建設発生土処理の基本方針
Q.基本方針の策定状況と概要、今後の施策展開は。
A.発生抑制、利活用、適正処分を3本柱に令和4年度末に策定する。具体的には土量を抑制する工法の選定や土砂の改良、処理施設の情報提供等を進める。今後、令和4年度に開発した建設発生土マッチングシステムや県内3箇所に設置するストックヤードを活用し、発生土の利活用を促進する。民間事業を含めた受入土量等を検証し、各地域に発生土量に応じたストックヤードの整備を進めるほか、民間処理施設設置への技術支援を行う。また、公共処分場設置の必要性も検討していく。
カーボンクレジット制度
Q.カーボンクレジットの創出に向けた取り組みは。
A.令和5年度は全ての産業分野で二酸化炭素削減量を明確にする取り組みを進め、静岡県産カーボンクレジットの創出を図る。農業分野では茶草場農法で栽培する茶園での二酸化炭素収支の算定に取り組み、森林分野では3次元点群データを活用した二酸化炭素吸収量の算定により林業経営体のクレジット認証を進める。また、企業脱炭素化支援センターを活用し、普及啓発や温室効果ガス排出削減計画の作成支援等を行い、中小企業のクレジット認証・登録を後押ししていく。
用語解説:カーボンクレジット制度
省エネや再エネ、森林管理等による温室効果ガス削減効果をクレジット(排出権)として発行し、他の企業等との間で取引できるようにする仕組み。需要側のニーズが高まる一方、認証のための費用負担や認知不足等により供給が不足している。
CNFの普及
Q.期待が大きいCNFの普及に向けた取り組みは。
A.令和5年度にふじのくにCNFフォーラムを改組し、家電や自動車等の企業を加えた新たなプラットフォームを構築し、異業種間連携を強化する。また大学と連携し、自動車部品への応用やリサイクル性の検証などの研究開発を進める。10月開催のふじのくにCNF総合展示会に多くの外国企業の参加を促すとともに、国際シンポジウムを開催し、最先端技術や研究成果を世界に向けて発信する。また工業高校の生徒など将来の県内産業を担う若者にCNFに触れる機会を提供していく。
用語解説:CNF(セルロースナノファイバー)
植物繊維をナノレベル(1mmの百万分の1)までに微細化することで得られる産業資源。植物由来のため環境負荷が少なく、リサイクル性に優れている。軽量、頑丈、自由な成形が可能で、温度変化に伴う伸縮が少なく寸法が安定しているという特徴から、さまざまな分野における用途展開が期待されている。
用語解説:ふじのくにCNFフォーラム
CNF産業の振興に向けて、全国に先駆け平成27年6月に産学官により設立した。産学官の連携体制を構築し、県内企業のCNFによる製品開発を促進する。会員は、製紙、機械製造、産業支援機関等226企業・団体等(令和5年1月末現在)
工業用水道における官民連携
Q.施設の老朽化や給水収益の減少などの課題に対応した効率的な施設運営に向けた取り組みは。
A.ふじさん工業用水道において、官民連携手法の導入可能性調査を実施しており、民間へのヒアリング等を踏まえ、新ポンプ場の整備と浄水場等の運転・維持管理業務に、令和6年度から7年間の包括的民間委託を導入することとした。これにより、約3億5千万円のコスト削減を見込んでおり、この手法を他の工業用水道にも展開するとともに、より長期で、かつ民間の裁量が大きい官民連携手法の導入についても検討していく。
静岡茶の販路拡大支援
Q.海外で需要が高まる有機茶の生産拡大や静岡茶の販路拡大に向けた支援策は。
A.手間の掛かる有機茶の栽培管理を省力化するためメーカーと共同開発した送風式病害虫防除機等の導入支援や、有機茶に転換する茶園の基盤整備を進める。また、有機栽培に適した品種転換への助成や技術指導などを行う。静岡茶の販路拡大に向けて、ChaOIプロジェクトによる高級茶の海外向けECサイトの構築やお茶の機能性に着目した化粧品等の商品開発など、オープンイノベーションを活用した支援を行い、新たな需要の創出に取り組む。
栽培漁業の推進
Q.沿岸漁業の漁獲量が減少する中、水産資源回復に向けた栽培漁業の推進策は。
A.現在策定中の第8次栽培漁業基本計画には、老朽化した温水利用研究センター沼津分場の再整備のほか、海洋環境や生産・消費ニーズを踏まえ、栽培漁業に取り組む新たな魚種の検討などを盛り込む方針である。本県は市場価値の高いクエの完全養殖に世界で初めて成功するなど最先端技術を有しているが、種苗の安定供給に向けて、病原体の侵入を防ぐ循環システムの導入など、病気発生リスクが低い環境でクエを飼育する実証実験に取り組んでいく。
浜名湖のアサリ復活
Q.アサリ資源の回復に向けた新技術等の活用と研究の体制づくりは。
A.国や大学と連携し、減少要因の解明や増殖手法の研究を進めているほか、囲い網による保護区域の設定等に取り組んでいる。今後は、民間の光技術によるプランクトンの培養技術を活用して人工生産された稚貝を放流し、成長度合いなどを調査する。また、湖底環境の改善に向け、細かい砕石を湖底に敷き詰める新たな手法の検証やフルボ酸鉄の活用方法も実証する。産学官のネットワークを強化し調査研究の成果が最大限発揮される体制を構築していく。
用語解説:フルボ酸鉄
枯れた植物が微生物の働きにより分解されて生成されるフルボ酸に、鉄イオンが結合したもの。森林から河川経由で海域に流入し、ヘドロ等の有機物を分解する作用があるとされ、アサリの餌となる植物プランクトンを増やすと考えられる。
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