4 県政の概要
令和7年12月県議会定例会知事提案説明要旨
【4 県政の概要】
次に、台風15号による被害への対応についてであります。
被害発生からまもなく3か月となりますが、県では国や市町等と連携し、被災された方々の生活再建と被災施設の早期復旧に向けて全力で取り組んでおります。
住宅の損壊等の被害に遭われた皆様には、被災者自立生活再建支援金の支給や、借上げ型応急住宅の供与、県営住宅の提供、生活家電の貸与等を行っております。
また、被災された農林漁業者、中小企業等の皆様には、当面の資金繰りや、経営の安定・再建等を支援する融資制度を直ちに発動しております。これに加え、被災された農業用ハウスや機械などの再建・修繕等の支援のほか、12月補正予算案に、被災された中小企業等の再建に向けた施設・設備の修繕等の支援に必要な経費を計上し、本議会にお諮りしております。
このような中、今回の竜巻被害への対応について、県議会危機管理くらし環境委員会からの申入れを踏まえ、危機管理に精通した外部有識者による検討会を設置し、県の対応についての検証を進めるとともに、今後、検証結果を踏まえ、情報共有の徹底をはじめ、災害対応力の向上を図ってまいります。
次に、新県立中央図書館の整備についてであります。
図書館を取り巻く社会情勢の変化を踏まえ、塚本副知事をトップとした庁内横断のプロジェクトチームにおいて、新県立中央図書館整備の「見直しの方向性」をとりまとめました。
これまで、新県立中央図書館の整備については、一旦立ち止まり、整備方針を再検討しておりました。現在の県立中央図書館は、建築から56年が経過し、老朽化が著しく進行しております。また、図書館は本県の発展を支える知のインフラとして不可欠な社会資本であります。県議会をはじめ、様々な皆様と積み重ねてきたこれまでの議論も踏まえ、厳しい財政状況ではありますが、新県立中央図書館の整備は、機能や事業手法を見直した上で、進めることにいたします。
具体的には、市町の図書館を補完・支援する役割を基本として図書館機能を重点化するほか、収蔵能力や施設規模の最適化、民間活力の導入などにより、県の財政負担を最大限軽減してまいります。
今後、県議会の御意見も踏まえながら、プロジェクトチームで検討した「見直しの方向性」に沿って、具体的な施設の機能や規模、事業手法の検討をさらに進め、令和10年代中頃から後半の開館を目指してまいります。
次に、遠州灘海浜公園篠原地区の整備についてであります。
先月19日、遠州灘海浜公園(篠原地区)利活用推進協議会を開催し、民間事業者からいただいた提案を、公園を含む全体的な利活用構想等に反映する方針などについて説明しました。
利活用推進協議会で説明した内容については、本議会の常任委員会において御議論をいただいた上で、今後の協議会において、利活用構想等を策定し、最適な野球場の規模・構造や県、浜松市、民間の役割分担等について検討してまいります。
次に、リニア中央新幹線建設を巡る議論についてであります。
10月29日に開催した県の地質構造・水資源専門部会では、JR東海から、要対策土の総量を減量する方針に加え、県が強く求めていた流域の安全安心に繋がる措置として、新たに有害物質を遮断するためのベントナイトシートを追加で施工する案が示されました。
先月5日に開催した生物多様性専門部会では、沢の流量減少対策として使用する薬剤の安全性や、トンネル湧水の大井川への放流に伴う水温変化に係るモニタリング及びリスク管理等について、対話が進捗しました。
また、10月20日にはJR東海の丹羽俊介社長が来県され、大井川流域の皆様が懸念されている水資源に影響が生じた場合の補償について、議論を取りまとめていただきたい旨の申し出がありました。
県としても、万が一の場合における補償に関する文書の締結が必要不可欠と考えておりますので、流域の皆様の意向を踏まえながら、JR東海や国との調整をしっかりと進めてまいります。
次に、スタートアップ先進県に向けた取組についてであります。
10月から11月にかけて、スタートアップと県内市町のマッチングを促す「静岡県パブリックピッチ」を伊豆、東部、中部地域で3回開催しました。観光や防災、地域交通などの課題を抱える市町の首長に対し、スタートアップが各社の先進的なソリューションを直接提案し、今後の共創に繋げる第一歩となりました。
また、スタートアップの地域コミュニティー形成を促進するため、支援組織「ふじのくに“SEAs”」のネットワークを活用し、地元のスタートアップと産学官金のプレイヤー等との交流会を10月に初めて東部地域で開催いたしました。当日は100名以上が参加し、地域でスタートアップを支え、共に成長する機運を高めることができました。引き続き、スタートアップ先進県に向け、地域と連携した取組を着実に推進してまいります。
次に、高付加価値インバウンド誘客についてであります。
先月4日から5日にかけて、アジア最大のオンライン旅行代理店である中国のトリップ・ドット・コム社が、年間利用額1,000万円を超える富裕層を対象に、国内初となるゴルフツアーを本県で開催し、中国から来られた40名近くの富裕層に、ゴルフのみならず、本県の食や温泉などを堪能いただきました。
富裕層に人気のあるゴルフやサイクリングの体験と、わさびやお茶などの食、富士山や浜名湖の自然など、本県ならではの魅力ある観光資源を組み合わせた高付加価値商品の造成・販売や、体験価値を高めるガイドの育成などの取組を進め、高付加価値インバウンド誘客を加速させてまいります。
次に、クルーズ船の受入拡大に向けた取組についてであります。
県内へのクルーズ船の寄港は、コロナ禍を経て、令和5年から過去最高を更新し続けており、本年は108回を予定しております。
特に、清水港では拡大傾向が顕著であり、2隻同時寄港となる機会も増加していることから、受入環境の一層の改善に向け、これまで貨物の一時保管や荷捌きに使用されてきた上屋を、官民が連携し、集客機能付きの旅客待合施設として活用することとしております。
今年5月から活用に向けた企画提案を募集し、選定を進めてきましたが、先月21日、清水港振興株式会社と株式会社ドリームプラザで構成する「清水港模型聖地の会」を活用事業者として決定し、事業に係る基本協定を締結いたしました。今後、官民により施設の改修を進め、令和9年度の開業に向け取り組んでまいります。
次に、環福連携による障害者雇用の促進についてであります。
県内民間企業における昨年6月の障害者雇用率は、2.43%と過去最高を更新しておりますが、来年7月には法定雇用率が2.7%に引き上げられることから、企業における取組を更に促進することが必要であります。
このような中、去る10月6日、環境分野と福祉分野が連携し、環境問題の解決と、障害者の雇用創出や社会参加を両立する「環福連携」の促進に向け、リネットジャパングループ株式会社及び株式会社クラ・ゼミとの間で、不用となったパソコンのリサイクルを通じて、障害者雇用の拡大を目的とした環福連携に関する三者協定を、都道府県では初めて締結いたしました。
今後は、この取組を県民や企業、自治体に啓発することで、障害者雇用率の更なる向上を図ってまいります。
次に、順天堂大学との連携協定の締結についてであります。
医師確保については、医学修学研修資金制度を活用した就業や定着を進めるとともに、医師の養成や派遣を行う大学との持続的な関係を構築し、偏在解消に向けた取組を推進しております。
その取組の一環として、順天堂大学と、去る10月6日に地域医療提供体制の確保に向けた協定を締結いたしました。順天堂大学は附属静岡病院が東部地域の医療提供体制や医師確保に中心的な役割を担っており、協定の締結により、指導体制の強化を図り、伊豆半島を含む東部地域の病院への専攻医派遣等を進めてまいります。
今年3月に協定を締結した浜松医科大学とともに、両大学との連携をこれまで以上に強固なものとし、地域医療提供体制の確保に努めてまいります。
次に、「森の力再生事業」と「もりづくり県民税」についてであります。
森林は水源の涵養や山地災害の防止などの公益的機能を有し、その恩恵は広く県民に及ぶものであります。これらの機能を持続的に発揮させるため、平成18年度から県民の皆様に御負担いただき、荒廃森林の整備を進めてまいりました。今年度末までの20年間で、約2万3千ヘクタールの森林が整備される見込みであり、水源の涵養や山地災害の防止などの「森の力」は着実に回復しております。
一方で、所有者による整備が困難で、公益性が高く緊急に整備すべき荒廃森林が新たに確認されております。近年頻発化する集中豪雨等による災害から県民の皆様の生命と財産を守るためにも、荒廃森林を整備する「森の力再生事業」と、そのための財源を確保する「もりづくり県民税」を継続することとし、本議会に条例の改正案をお諮りしております。
来年度から5年間を課税期間として、引き続き県民の皆様の御理解をいただいた上で御負担をお願いし、事業の実施状況や効果を検証しつつ、着実に荒廃森林の整備を進めてまいります。
次に、多文化共生の推進についてであります。
多文化共生社会の実現に向けた機運醸成を図るため、本年度から12月を本県独自の「多文化共生月間」と位置づけ、県と市町等が連携して交流イベント等を集中的に実施してまいります。
今月17日には、県民向けの国際フォーラムを開催し、外国人県民を「まちづくりを進める重要なパートナー」と捉えるインターカルチュラルの考え方や、海外の先進的な取組事例を紹介する予定であります。
なお、新政権におきましても、外国人担当大臣が置かれたところであります。県内に居住する外国人の皆様との共生に向けて、多くの外国人が集住する県として、国に対し、未来を見据えた戦略の策定を求めてまいります。
次に、世界都市自治体連合世界評議会についてであります。
10月16日から18日にかけて、中国・西安市を訪問し、本県が都道府県として初めて加盟した世界都市自治体連合(UCLG)世界評議会に出席いたしました。
世界各地の自治体トップ等の約350名の参加者に対し、ウェルビーイングや外国人材の活躍支援など、本県が注力する取組を紹介したほか、UCLGの要人との意見交換やレセプションへの出席により、UCLGや参加自治体との関係を構築いたしました。
今後とも、UCLGの持つネットワークを活用し、欧州をはじめとする海外との新たな連携や、世界における本県のプレゼンス向上につなげてまいります。
