2 県政の概要
令和6年12月県議会定例会知事提案説明要旨
2 県政の概要
次に、地域防災力の強化についてであります。
先月1日から昨日までの「地震防災強化月間」において、県民一人ひとりの「わたしの避難計画」の作成や、地域における避難所運営訓練の実施などについて、広報啓発活動を集中的に展開いたしました。また今回は、能登半島地震を踏まえ、感震ブレーカーなどの火災防止対策や、ライフラインの機能障害を想定した備えの確認、孤立が予想される地域における給水・炊き出し訓練などを新たに実施方針の重点項目に盛り込み、昨日の「地域防災の日」を中心に、県内各地域で、自主防災組織を主体とした地域防災訓練を実施したところであります。
今後も、自らの命は自ら守る「自助」、自らの地域は皆で守る「共助」の体制を強化し、「公助」と連携した地域防災力の充実に努めてまいります。
次に、盛土対策についてであります。
県盛土等の規制に関する条例につきましては、災害防止上の規制は、条例よりも厳しい盛土規制法に委ね、環境上の規制の一部の手続きの合理化を図るため、県議会の特別委員会からの御提言等も踏まえ、見直し案をとりまとめました。今月中にパブリックコメントを実施し、来年2月議会でお諮りする考えであります。
法律と条例による適切な盛土の規制を通じて、県民の皆様の安全と安心の確保に全力で取り組んでまいります。
次に、犯罪被害者等への支援についてであります。
犯罪の被害に遭われた方や御家族、御遺族は、再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、様々な問題を抱えることとなります。こうした方々への支援を総合的かつ計画的に推進するため、県では、「静岡県犯罪被害者等支援条例」を制定し、警察本部や知事部局、市町、関係団体等が連携して支援に取り組んでいるところであります。
近年、犯罪被害者等が抱える問題は多岐にわたっており、時間の経過等に伴い変化しております。被害直後から中長期にわたり、これまで以上に包括的な生活再建を支援できるよう、来年4月に、条例の所管を警察本部から知事部局に移管する方向で準備を進めてまいります。
そのため、先月26日、現行の支援体制の課題を客観的に検証し、実態に即した支援のあり方などについて検討する有識者会議を立ち上げました。今後、有識者会議での議論を踏まえ、支援策の充実についても、あわせて検討してまいります。
次に、県職員のデジタルリテラシーの向上についてであります。
時代が大きく変化する中、県自らが、時代の先を読み意欲的に挑戦する組織へと変わっていくこと、LGXが必要であります。そのため、私から、AIなどデジタル技術の急激な進展に対応するため、早急に県庁内のリスキリングを進めるよう指示いたしました。
まずは、幹部職員約200人を対象として、職務に必要となるDX推進の考え方やスキルを学ぶ研修等を来年1月から実施いたします。今後、対象者を拡大し、個人の習熟度に応じた研修体制を構築するなど、県庁全体としてDXを一層加速できるよう、リスキリングの体制を構築してまいります。
次に、CNFプロジェクトについてであります。
植物由来で環境負荷の低い素材として注目されるCNFにつきましては、10月24日と25日の2日間、国内最大規模の製品展示・ビジネスマッチングの場となる国際展示会を、富士市で開催しました。
スタートアップや海外企業を含め過去最多となる123の企業や団体が出展し、約2,000名の皆様が来場されました。会場では、自動車やロボットの部材、食器、化粧品など、セルロース素材を活用した製品が多数展示され、出展者と来場者等との交流を通じて、400件を超える商談につながりました。また、静岡大学・トヨタ車体との連携により、天竜スギや富士ヒノキなど、県産材由来のセルロース素材を内外装にふんだんに取り入れたコンセプトカー「しずおか もくまる」も初披露いたしました。
脱炭素社会や循環経済を実現するCNF等の社会実装を加速し、産学官の連携のもと、全国に先駆けてCNF産業の集積と拠点化を進めてまいります。
次に、茶業振興についてであります。
先月2日と3日に、本県での開催は9年ぶりとなる「全国お茶まつり」を浜松市で開催しました。全国から高度な生産技術を持った茶生産者が一堂に会し、技術や知識、アイデアを共有し合うとともに、浜松らしい茶と音楽のコラボレーションによるコンサートなどを開催し、約2万人が来場するなど、静岡茶の消費拡大につながる、交流・取組が行われました。
また、来年には、本県独自の取組として、「世界お茶まつり2025(ニセンニジュウゴ)」を開催いたします。この大会では、次世代を担う若者を対象に、新たな切り口としてお茶とスイーツのペアリングの提案や、各国の特徴的な需要に対応した海外向け商品の展示販売などを充実し、新たな需要を一層創出してまいります。
次に、リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全についてであります。
10月6日、国のモニタリング会議の委員と、大井川流域の8市2町と静岡市、本県との意見交換会が開催されました。本県から森副知事が出席し、現時点のJR東海との対話状況を説明したほか、市町から、将来、水利用に影響が出た場合の補償等に国の関与を求める意見などが出されました。また、矢野座長から、地域の皆様が納得されるまで会議を継続する旨の発言がありました。引き続き、モニタリング会議や流域市町と丁寧なコミュニケーションを図ってまいります。
先月1日の県の専門部会では、千枚小屋付近の1年中枯れない湧水の供給経路、大井川本流の水温の変化による底生生物等への影響などについて、JR東海と対話いたしました。湧水の供給経路に関しては、JR東海から、成分分析や地質調査により、地表近くの地下水が湧き出していると推測されるが、今後、追加調査により確認すると示されました。また、水温変化による影響に関しては、本県から、予測の前提となるトンネル湧水の温度について、山梨県内のボーリング湧水の温度の実績等を踏まえて見直すよう求めたところ、JR東海が従来の方針を変更し、湧水温の想定を見直すことが示されました。
今回の対話により、今後の主な対話項目28項目のうち、新たに2項目の対話が進捗し、対話完了が3項目、対話中が17項目となりました。引き続き、残された課題の解決に向けて、JR東海との対話をしっかりと進めてまいります。
また、先月26日には、国の第5回モニタリング会議が開催され、本県とJR東海との対話の状況等が報告されたところ、矢野座長から「対話は着実に進んでいる」との総括がありました。
引き続き、リニア中央新幹線の建設と、大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全の両立を図るため、国と協力してJR東海との対話を進めてまいります。
次に、富士山静岡空港についてであります。
本年4月から10月までの搭乗者数は、約33万6千人で、前年同期を7.6%上回るなど、回復基調が続いています。
10月から来年3月までの冬ダイヤにおきましては、今月17日から香港エクスプレスが就航し、開港以来初めてとなる香港線が、週3往復で、定期運航いたします。旺盛なインバウンド需要による地域経済の活性化や、新たなビジネスも含めた地域間交流の促進が期待されるものであり、大変喜ばしく思っております。
また、先月5日から今月20日までの間、本県への観光客数の回復に向けて、「行くなら、今なの!静岡トク旅」キャンペーンを実施しており、富士山静岡空港においても、回復が遅れている中国の上海線及び杭州線を対象に割引を行っております。
引き続き、富士山静岡空港株式会社や市町、関係団体等と連携し、国際線の運航再開や東南アジアなどを対象とした新規路線の開設に向け、積極的に取り組んでまいります。
次に、世界遺産富士山の登山規制導入に向けた取組についてであります。
来年夏の登山規制導入に向けて、関係市町や山小屋組合をはじめとする地元関係者と協議を重ねてまいりました。
このたび、本県側の3つの登山道において、登山者の安全確保や富士山の環境保全を目的とした登山規制を行い、一定の管理料を徴収するという大きな方向性について、地元関係者と合意に至りました。これに基づき、現在、10月に実施した現地調査の結果や、各登山道の実状を踏まえ、条例案の検討を進めております。本議会の常任委員会において、条例案の骨子について御議論をいただき、来年2月議会での条例案の提出を目指してまいります。
次に、地域外交の推進についてであります。
中国との交流につきましては、先月6日から9日に、増井副知事を団長として県及び経済団体で構成する訪問団を浙江省に派遣いたしました。最新鋭の技術を有するICT関連企業などを訪問したほか、省政府等との意見交換では、両県省が相互にメリットを享受できるよう、先端医療産業やカーボンニュートラルなどの分野において経済協力を推進していくことを確認しました。今後、同省との経済交流を一層推進することで、県内経済の活性化につなげてまいります。
インドとの交流につきましては、今月22日から26日にかけて、私を団長として、県議会や経済界の皆様等で構成する訪問団が、インド・グジャラート州を訪問いたします。双方にメリットのある強固な関係を築いていくため、現在、ICT分野を中心としたインド人材と県内企業とのマッチングや、県内企業の現地進出支援などの実現に必要となる経済、教育、観光及び文化などに関する友好協定の締結に向けて調整を進めております。このため、条例に基づき、協定締結に先だって、必要な議案を本議会にお諮りしております。
次に、聴覚障害児の療育モデルの構築についてであります。
先天性の聴覚障害は早期発見、早期治療に加えて適切な療育が重要であります。このため、聴覚障害児療育の先進国であるオーストラリアの中核的機関シェパードセンターの療育手法を全国で初めて取り入れ、静岡県立病院機構と連携し、療育モデル事業に取り組んでおります。
先月5日、療育モデル事業に関する基本方針や役割分担等を定めた、三者間の協定を締結いたしました。今後は、日本語に適した療育プログラムの作成や専門スタッフの養成、病院を拠点とした療育体制の整備などを進め、来年度から、聴覚障害児を受け入れた療育を進めてまいります。