(5)豊かな暮らしの実現(ア)富をつくる産業の展開
令和6年2月県議会定例会知事提案説明要旨
【3.人づくり・富づくりを着実に推進する取組】(5)豊かな暮らしの実現
第4の柱は、「豊かな暮らしの実現」であります。
はじめに、本県の経済成長の新たな原動力となるスタートアップの創出・育成についてであります。
昨年9月に策定した支援戦略を本格展開し、スタートアップを創出・育成する取組をより一層加速してまいります。
昨年12月にイノベーション拠点「SHIP(シップ)」に設置したワンストップ相談窓口や、今月15日に設立した金融機関や県内企業等の支援関係者によるネットワーク「ふじのくに“SEAs(シーズ)”」などをフル活用し、スタートアップの課題解決に向けて強力に支援いたします。また「TECH(テック) BEAT(ビート) Shizuoka(シズオカ)」を活用し、県内企業や自治体等との協業・共創を促進するほか、先ほどイノベーション事業として申し上げました「ブルーエコノミーEXPO(エキスポ)(仮称)」の開催や、起業家の育成に取り組んでまいります。
次に、本県経済を強力に牽引するリーディング産業の育成についてであります。
ファルマバレー、MaOI、次世代自動車など、地域の強みを活かした先端産業創出プロジェクトにつきましては、社会の変容や新たなニーズ等を踏まえ、プロジェクト間連携による優れた取組に集中的に支援するなど、オープンイノベーションによる新たな価値の創出に取り組んでまいります。
ファルマバレープロジェクトにつきましては、医療健康産業が集積し、質の高い医療と癒やしを提供する「医療城下町」を基盤とし、市町や関係団体等と一体となって「医療田園都市構想」を推進します。新たに中小企業等による高度で複雑な医療機器の開発を支援するほか、試作段階から専門家の意見を取り入れるなど、山梨県企業との共同製品開発の支援を強化してまいります。地域経済を発展させ、住民が安心して豊かに暮らすことができる超高齢社会の理想郷づくりに取り組んでまいります。
自動車分野におけるデジタル化、EV化への対応につきましては、デジタル人材の育成が喫緊の課題であります。次世代自動車センター浜松が中心となり、地域企業が完成車メーカーの最先端の現場において、デジタル技術を活用した車体のシミュレーション開発など実践的なデジタルものづくりを学ぶ実地研修を、新たに実施いたします。加えて、世界展開する中国のEV車両や、欧州の最新電動バイクの分解調査等に取り組んでまいります。
さらに、昨年新設したデジタルものづくりセンターに、次世代自動車の部品開発などに不可欠な3Dスキャナを導入するとともに、企業の開発現場に出向くプッシュ型支援を行ってまいります。
地域企業が、急速に進展する産業構造の転換に的確に対応できるよう、デジタル化に向けたきめ細かな支援を強化し、スピード感を持って全力で支えてまいります。
脱炭素や循環経済を実現する素材として注目されるCNF(セルロースナノファイバー)につきましては、循環経済における新たなビジネスモデルを構築するため、リサイクル性・経済性の実証事業を行うほか、県産材由来のセルロース素材を活用したコンセプトカーを製作いたします。産学官が連携し、研究開発や情報発信等に取り組み、県内企業が開発したCNF素材等の社会実装を一層加速してまいります。
静岡茶の新たな価値と需要の創出に取り組むChaOIプロジェクトにつきましては、緑茶の需要が拡大する海外に向けて、主要な産地を輸出向け有機茶生産の拠点として重点支援し、需要に応じた生産構造への転換をさらに進めてまいります。加えて、静岡の清らかな水で丹念に抽出した高級ボトリングティーの輸出拡大に向け、海外の富裕層を主なターゲットとして販路開拓に取り組んでまいります。
また、茶の先端研究開発とオープンイノベーションの拠点となる茶業研究センター新研究棟につきましては、令和6年度末の供用開始に向けて着実に工事を進めます。茶業者や関係団体等と一体となって、本県茶業の力強い再生に取り組んでまいります。
次に、中小企業の収益力向上についてであります。
長期化する物価高騰や人手不足などに対応し、県内企業の稼ぐ力を強化いたします。経営環境の変化を踏まえ、機動的に資金を供給するほか、複数年度の事業計画を策定し、産業支援機関等の伴走支援により新商品開発等を行う新たな支援制度を創設することで、中小企業の付加価値創出や生産性向上の取組を支援してまいります。
次に、地場産業の活性化についてであります。
地場産業の新たな価値を創造し、持続可能な産業モデルを構築するため、家具や模型、繊維などの地場産業の生産者に加え、デザイナーや学生などが参画する「しずおかプロダクツ フォーラム」を創設いたします。合同展示会やセミナー、交流会の開催を通じて、産地の魅力発信と人材育成に取り組んでまいります。
次に、農林水産業の競争力強化についてであります。
農業につきましては、スマート農業の普及や基盤整備などへのデジタル技術の導入を積極的に進めるほか、新たな農業人材の確保や農業法人の誘致を図り、農業生産の高度化・効率化を進めてまいります。
また、稲わらを家畜飼料として利用し、家畜堆肥を水田で利用するなど、稲作農家と畜産農家の連携を強化してまいります。この取組を通じて輸入飼料から県産飼料への転換を促進することで、飼料自給率の向上を図ってまいります。
さらに、畜産物の安定的な供給体制を構築するため、令和8年度の供用開始に向けて、食肉センターの再編整備を計画的に進めてまいります。
林業につきましては、海外情勢の影響を受けにくい木材需給体制の構築を目指してまいります。木材生産団地の基盤整備に加え、分散した狭小林地の集約化により効率的な施業を行うモデル事業を新たに実施し、全市町への展開につなげるとともに、住宅以外の建築物への県産材使用に対する支援を拡充し、県産材需要の拡大を図ってまいります。
水産業につきましては、新鮮な魚介類や美しい景観など、魅力ある地域資源を活用して観光客等を呼び込むことで、新たな所得機会を創出する「海業」の振興に取り組みます。具体的には、飲食やマリンレジャーなど漁業の新たな展開を積極的に支援してまいります。また、新魚種の種苗生産に関する技術開発や、アサリの資源回復に取り組むなど、水産資源の維持・増大を図ってまいります。水産王国静岡の持続的な発展に向けて、全力で取り組んでまいります。