(3)持続的な発展に向けた新たな挑戦(イ)環境と経済が両立した社会の形成
令和6年2月県議会定例会知事提案説明要旨
【3.人づくり・富づくりを着実に推進する取組】(3)持続的な発展に向けた新たな挑戦
次に、持続可能な社会の形成についてであります。
昨年7月、国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰化時代」の到来と表現した急激な温暖化の進行に加え、生物多様性の確保や自然環境の保全など、我々はこれまでにない様々な環境課題に直面しております。将来世代が安心して暮らす持続可能な社会の形成に向けて、取組を加速してまいります。
中小企業の脱炭素経営への転換につきましては、省エネルギー設備の導入や、企業脱炭素化支援センターを中心に、新たにCO2排出量の「見える化」を支援いたします。また、金融機関等との連携を強化してコンソーシアムを設立し、中小企業の省エネ計画の策定をプッシュ型で支援するなど支援体制を一層充実してまいります。
生物多様性の推進につきましては、2030年までに陸と海の30%以上を自然環境エリアとして保全する「30(サーティ)by(バイ)30(サーティ)」の国際目標が掲げられております。本県におきましても、この目標を実現するため、専門家派遣などにより、企業等が行う自然環境保全活動を新たに支援するとともに、県民や企業の皆様に生物多様性について理解を深めていただく機会を提供してまいります。
次に、リニア中央新幹線建設に伴う大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全についてであります。
昨年12月、国の有識者会議において、トンネル掘削による南アルプスの自然環境への影響などに関する「リニア中央新幹線静岡工区に関する報告書」が取りまとめられ、有識者会議での議論が一区切りとなりました。
このため、県が令和元年9月にJR東海にお示しし、国有識者会議でも全ての項目を議論していただくよう求めていた「引き続き対話を要する事項」の47項目について、県専門部会の委員と進捗を評価してまいりました。
今月5日、47項目の評価と残された課題を整理した上で、引き続きJR東海と「対話を要する事項」について、「水資源」、「生物多様性」、「トンネル発生土」の3区分に取りまとめ、公表いたしました。「水資源」につきましては、JR東海から、大井川の水資源への影響を回避する保全策として田代ダム取水抑制案が示され、対話は進捗したものと認識しております。26項目のうち、17項目が終了し、今後は、突発湧水等の想定外に対応するリスク管理とモニタリングについて、対話を進めてまいります。一方、「生物多様性」、「トンネル発生土」の21項目につきましては、一定の進捗がみられたものの、終了した項目はありません。県が国有識者会議に対して提出した意見書の内容が反映されていないなど、課題が残されております。今回とりまとめた「今後の主な対話項目」に基づき、県専門部会の委員の意見を速やかに整理した上で、JR東海としっかり対話を進めてまいります。
今月7日には、国土交通省から村田鉄道局長が来訪され、国の有識者会議の報告書の説明があった後に、JR東海が行う南アルプストンネル工事に係る水資源や環境の保全対策を継続的にモニタリングする体制を、国として新たに検討しているとのお話がありました。これは、国が積極的に関与する姿勢を明確にしたものであり、こうした取組を高く評価いたします。一方で、JR東海は、昨年12月、開業目標時期について「2027年」を「2027年以降」に変更する申請を国土交通省に提出し、認可されたところであります。加えて、丹羽社長が、本年1月の記者会見で「あらためて品川-名古屋間の各工区の進捗を確認しつつ、工事全体の進め方について検討を始めた」と表明されたことを考慮すると、モニタリングに際しては、静岡県内の工区に限定するのではなく、他の工区との関わりを把握することも重要であります。国土交通省におかれては、こうした点を十分に踏まえて、モニタリングの対象について、柔軟に考えていただきたいと思います。また、モニタリングの前提となる工事現場の状況把握については、第三者により客観的・中立的に実施されることが極めて重要であります。今後、国からの具体的な説明も十分に聞いた上で、県専門部会での議論等も踏まえながら、県としても適切に関与してまいります。
引き続き、リニア中央新幹線の建設と大井川水系の水資源及び南アルプスの自然環境の保全との両立を図るため、スピード感をもって取り組んでまいります。