あなたの「富士山物語」(富士山四季の風物語/勝又まさる)
富士山四季の風物語/勝又まさる
大昔より富士山の神様は、四季それぞれの風の入った大きな袋を持っていて、下界に向け使い分けてくる。
春、春には暖かい風の入った桃色の袋を伊豆へ遣わす。伊豆の神様が袋を開けると春が生まれ、半島を北へ旅立つ。駿河の海を渡り、色とりどりの花を咲かせて裾野を抜け、御厨へとやって来てひと休みする。そして富士山を登り始める。やがて宝永山辺りで残雪と出会い、又ひと休みする。
夏、夏には涼しい風の入った水色の袋をひもとく。涼風は残雪を滑り下り山麓へと広がって行く。人々は緑の高原や湖畔に集い憩う。ひと夏三十万人の人々が富士山頂を目指し、天空にてご来光を迎え、健康と幸せを祈る。
秋、秋は冷たい風の入った黄色い袋を少しずつ開くと、天は澄み、雲はゆったりと何処かへ流れ行く。樹木は紅葉し実を付け冬支度をする。人も獣も秋を楽しみやがて冠雪を仰ぐ。「神様お願い、時を止めて。」秋はそのままにこの悠久の日々を。
冬、冬には寒風の入った白い袋を開き続けると、山は雪に覆われ草木は静かに眠りに就く。寒風は富士颪となって雪を蹴り上げ甲高い笛を吹く。しかし、太陽は我等の味方、富士山頂より宝永火口へ降り注ぎ、雪の舞台を朱鷺色に染めて至福の輝きを演出してくれる。
神様『四季の風』を有難う。
「富士山は 神より与かる宝物 返す日も有り 大切に」
三七七六、日本の宝。世界に誇る富士の山。
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