フロン排出抑制法における業務用冷凍空調機器の管理者の役割
概要
平成27年4月1日から施行された「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」(略称「フロン排出抑制法」)に基づき、業務用冷凍空調機器(第一種特定製品)の管理者は、点検や機器の点検整備に関する記録の作成等が義務付けられています。
フロン排出抑制法の対象となる「管理者」
フロン排出抑制法の対象となる「管理者」とは、原則として業務用冷凍空調機器(第一種特定製品)の所有者が「管理者」になります。
ただし、例外として、契約書等の書面において、保守や修繕の責務を所有者以外が負うこととされている場合は、その者が「管理者」になります。
所有及び管理の形態(例) | 「管理者」となる者 |
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自己所有、自己管理の製品 | 所有者 |
自己所有でない製品(リース、レンタル製品等) | リース、レンタル契約において、管理責任(製品の日常的な管理、故障時の修理等)を有する者 |
自己所有でない製品(ビル、建物等に設置された製品で、入居者が管理しない製品等) | 当該製品を所有、管理する者(ビル、建物等のオーナー) |
フロン排出抑制法の対象となる「業務用冷凍空調機器(第一種特定製品)」
フロン排出抑制法の対象となる「業務用冷凍空調機器」とは、冷媒としてフロンが使用されている次の製品です。
- 業務用のエアコンディショナー(カーエアコンを除く。)
- 業務用の冷蔵機器及び冷凍機器
これらをフロン排出抑制法では、「第一種特定製品」と呼んでいます。
管理者の責務
第一種特定製品の管理者は、当該製品の管理に当たり、以下の事項を遵守する必要があります。
(1)機器の設置環境・使用環境の維持保全
冷凍空調機器の損傷等を防止するため、適切な場所への設置、設置する環境の維持保全を図る必要があります。
(2)機器の点検
- 全ての第一種特定製品は、日常的な温度点検や外観検査等による「簡易点検」を、一定規模以上の第一種特定製品については、専門家による冷媒漏えい検査「定期点検」を行う必要があります。
- 漏えいが確認された場合は、可能な限り速やかに冷媒漏えい箇所を特定し、原則、第一種充填回収業者に充填を依頼する前に、漏えい防止のための修理等をする必要があります。
区分 | 点検内容 | 点検頻度 | 点検実施者 |
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簡易点検 |
|
三ヶ月に一回以上 | 実施者の具体的な制限無し |
定期点検 |
|
|
機器管理に係る資格等を有する者(社外・社内を問わない。) |
定期点検機器の確認方法
定期点検の対象となる機器は、冷凍空調機器の室外機などの銘板に記載された「圧縮機の定格出力」から確認できます。
機器によって、「電動機出力・圧縮機」、「呼称出力」などと記載されていることがあります。
不明な場合は、カタログを確認するなど、機器メーカーに問い合わせてください。
(3)フロン類の漏えい時の措置
点検等の結果、フロン類の漏えいや故障などが確認された場合、漏えい防止のための修理を行う必要があります。また、修理などを行うまでフロン類の充填は原則として行えません。
(4)点検・整備の記録作成・保存
管理者は適切な機器管理を行うため、点検や修理、冷媒の充填・回収等の履歴を機器ごとに記録する必要があります。
点検・整備記録簿は事業所等において、紙又は電磁的記録によって保存する必要があります。(【令和2年度法改正】機器廃棄のためフロン類を回収した日から3年後まで)
機器の点検・整備の前には、確認のために整備者及び充填回収業者に点検・整備記録簿を見せる必要があります。
機器を他者に売却・譲渡する場合は点検・整備記録簿又はその写しを売却・譲渡相手に引き渡す必要があります。
点検・記録簿の作成にあたって、法令で様式は定められていませんが、記録すべき事項は以下のとおり決められています。
- 管理者の氏名(法人の場合は名称)
- 点検実施者の氏名(法人の場合は名称及び実施者の氏名)
- 修理実施者の氏名(法人の場合は名称及び実施者の氏名)
- 充填・回収した第一種フロン類充填回収業者の氏名(法人の場合は名称及び実施者の氏名)
- 点検を行った機器の設置場所及び機器を特定するための情報
- フロンの初期充填量(設置時における現場充填量を含む)
- 点検(簡易点検、定期点検及びその他の点検)を行った年月日及び内容・結果(故障の箇所など)
- 修理を行った年月日及び内容・結果(速やかな修理が困難である場合はその理由及び修理の予定時期など)
- 充塡・回収した年月日及び充塡・回収したフロンの冷媒番号区分別の種類・量
注)簡易点検の記録は、点検の年月日及び漏えいの徴候の有無を記録します。
注)点検・整備記録簿は記録事項を満たすものであれば既存様式も含め特段の様式は問いません。
一般社団法人日本冷凍空調設備工業連合会で様式を作成しているので参考とすることができます。
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注)参考様式の入手先(外部リンク)
(日設連ホームページ)
(5)フロン類の漏えい量の報告
フロン類を1年間(4月1日~3月31日)に1,000トン(二酸化炭素換算量)以上漏えいした事業者(目安として、大規模施設や複数の店舗等を有する事業者が該当となる可能性があります)は、翌年度の7月末日までに国(事業所管大臣)へ報告する必要があります。
また、一つの事業所における漏えい量が1,000トン(二酸化炭素換算量)以上の場合は、その事業所の漏えい量についても、合わせて報告する必要があります。
国への報告は法人又は個人を報告単位としています。複数の事業所がある場合は全ての事業所の漏えい量の合計を算出する必要があります。
フロン漏えい量の取りまとめ
環境省「フロン排出抑制法」ポータルサイトで「報告書作成支援ツール」を作成しているので参考とすることができます。
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注)報告書作成支援ツールの入手(外部リンク)
(環境省「フロン排出抑制法」ポータルサイト)
(6)機器廃棄時のフロン回収の徹底
機器を廃棄するときは、県の登録を有するフロン類充填回収業者にフロン回収を依頼し、回収作業完了後でなければ機器の廃棄はできません。
機器廃棄時は行程管理票(回収依頼書)を発行・保管(3年間)し、フロン類充填回収業者から交付される引取証明書を受け取り、3年間保管しなければなりません。
建物解体時には、解体工事等元請業者から解体建築物内の業務用冷凍空調機器の有無及び台数を示す事前確認書が交付されるため、ここに記載される機器について確実にフロン類を回収してください。
【以下令和2年度法改正点】
廃棄しようとする機器にフロン類が充填されていない可能性がある場合も、フロン類充填回収業者に確認作業を依頼し、フロン類が充填されていないことを示す確認証明書を受け取り、3年間保管しなければなりません。
廃棄物等業者に機器を引き渡す際は、引取証明書(または確認証明書)写しの交付をしなければなりません。
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フロン排出抑制法(令和2年4月改正)
(うち「行程管理票制度」を参照)
まとめ
管理者が事前にやるべきこと
フロン排出抑制法の対象である業務用冷凍空調機器(第一種特定製品)の管理者の皆様は、まず、次の1から5までを実施してください。
- 所有する冷凍空調機器をリスト化し、フロン排出抑制法の対象となる業務用空調機器を確認する。
- 1で確認した業務用冷凍空調機器の圧縮機の定格出力から、定期点検の必要性の有無、点検頻度を確認する。
- 簡易点検、定期点検の実施スケジュールを検討する。
- 機器ごとに点検・整備記録簿、簡易点検チェックシートなどを作成する。
- 会社ごと、事業所ごとに点検を誰が行うか、管理担当者を決めるなど、管理体制を準備する。
管理者が実施しなければならないこと
法に規定された次の取組を実施してください。
簡易点検、定期点検の実施
簡易点検、必要なものは定期点検を実施し、点検・整備記録簿、簡易点検チェックシートへ記載
充填・回収証明書の保管
点検の結果、機器の異常が確認され修理をした場合、整備業者・充填回収業者が発行する充填・回収証明書を受け取り、保管する。(修理をせずフロン類を充填することは禁止)
フロン類の年間充填量・回収量の報告(大規模排出事業者のみ)
一年間に受領した充填・回収証明書から、年間のフロン類の充填量、回収量を法人(又は個人)単位でまとめ、年間1,000トン(二酸化炭素換算量)の漏えい量があった場合は国に報告する。
機器廃棄時のフロン回収の徹底
機器廃棄時はフロン類充填回収業者にフロン回収を依頼し、行程管理票を交付・保管。
【令和2年度法改正点】廃棄物等業者に引取証明書(または確認証明書)写しを交付。
注意事項
フロン排出抑制法では、業務用冷凍空調機器の適正な管理を求めていますが、機器の買い換え・冷媒の入れ替えを強制するものではありません。以下の点にご注意ください。
- フロン排出抑制法に基づく適正管理において機器の買い換え義務はありません。
- HCFCについては、2020年までに生産・消費を全廃することとしていますが、現在使用されている冷媒を入れ替えるにように規制するものではなく、HCFC(R-22など)使用機器は2020年以降も使用することができます(ただし、2020年以降はR-22の生産が廃止されるため計画的に機器を更新することが重要です)。
- 充塡に当たっては、充塡するものが法律に基づき機器に表示された冷媒に適合していること又は当該冷媒よりも温暖化係数が低いもので当該製品に使用して安全上支障がないものであることを当該製品の製造業者等に確認することが、充填に関する基準で定められています。
エアコン等に使用されている冷媒の入れ替えに関する注意を環境省・経産省で公表しています。
参考資料
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