令和6年12月定例会意見書(令和6年12月20日可決)
消防団の団員確保対策及び活動支援の充実を求める意見書
本文
消防団は、地域における消防防災体制の中核的な存在であり、火災や地震等の災害時には、現場で消火活動や救助活動に当たるなど、地域住民の安全・安心の確保に多大な役割を果たしており、昨今の自然災害の激甚化・頻発化により、その重要性はますます高まっている。
国においては、平成25年の「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」の成立を契機に、消防団員の報酬等の処遇改善に伴う地方財政措置の見直しや、消防団設備整備費補助金の創設などの措置を行ったところである。また本県においても、若年層や女性層に向けた広報や民間企業と連携した消防団員応援事業、消防団活動に協力する事業所等に対する減税制度の創設などの施策を展開している。
しかしながら、人口減少や少子高齢化、地域における住民の連帯意識の低下などの社会環境の変化により、団員数の減少や平均年齢の上昇など、消防団を取り巻く環境は厳しさを増している。
令和6年1月に発生した能登半島地震では、地元消防団員が発災直後から住民の避難誘導、消防隊と連携した消火活動、倒壊家屋からの救助活動や傷病者の搬送など、自らが被災しながらも懸命な活動を展開した。地域の防災力を確保するためには、将来にわたって消防団活動を維持していくことが極めて重要である。
よって国においては、消防団の団員確保対策及び活動支援の充実を図るため、下記の事項に取り組むよう強く要望する。
記
- 消防団員の加入促進に向けた広報活動を一層強化すること。
- 地方自治体が必要な消防団員を確保できるよう、活動実績等に応じた報酬や、所得税の減免等、消防団員個人に対するさらなる優遇措置を講ずるとともに、必要な財政措置を図ること。
- 消防団員の安全を確保するとともに、消防団の機能強化を図るため、消防団の装備及び教育訓練の充実や、救助資機材の整備、更新に係る財政措置の拡充を図ること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和6年12月20日
提出先
- 衆議院議長
- 参議院議長
- 内閣総理大臣
- 総務大臣
- 財務大臣
- 消防庁長官
自動運転移動サービス等の社会実装に向けた環境整備を求める意見書
本文
高齢化の進展に伴い、高齢者の運転による交通事故が社会問題となっている。2023年における75歳以上の自動車運転免許証の保有者数は、過去10年間で約1.7倍、80歳以上は約1.8倍となっており、今後ますます増えていくことが想定される。
各地方公共団体において運転免許証の自主返納の取組が進められる中で、免許証返納後の移動手段の確保は大きな課題であり、国は免許証返納者への公共交通割引施策等の支援を検討している。一方、日常生活において自家用車の利用が一層普及していることにより乗合バスや鉄道、路面電車の減便・廃止が進み、またバスやタクシーの運転手の成り手も不足するなど、地域住民の生活に欠かせない移動手段の確保が困難となっている。
こうした中、公共交通機関の運行コストの上昇や運転手不足といった課題の解決策として自動運転の導入が期待されており、特に過疎地域や中山間地域など公共交通機関が充実していない地域で暮らす高齢者に向けては、早急に対策を講ずる必要がある。
よって国においては、高齢者が自動車運転免許証の返納後も安心して移動ができるよう、自動運転移動サービス等の社会実装に向けた環境整備を進めるため、下記の事項に取り組むよう強く要望する。
記
- 自動運転移動サービスの導入に当たっては、過疎地域や中山間地域を包含する地方公共団体に寄り添う形で、国の相談窓口の開設や、専門家の派遣等の伴走型の支援体制を整えること。
- 自動運転システムが主体となって車の操縦・制御等を行う国土交通省が定めるレベル4以上の車両の開発を促進するとともに、遠隔操作システムの導入を含めた行政における利活用の仕組みを検討するなど、自動運転車両の実用化に向けた環境整備を加速すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和6年12月20日
提出先
- 衆議院議長
- 参議院議長
- 内閣総理大臣
- 総務大臣
- 財務大臣
- 経済産業大臣
- 国土交通大臣
- 内閣官房長官
- 内閣府特命担当大臣(地方創生)
- 警察庁長官
高病原性鳥インフルエンザの対策強化を求める意見書
本文
高病原性鳥インフルエンザは、近年、全国的に頻発しており、令和5年11月から令和6年4月までの間に10県で11事例発生し、約85.6万羽が殺処分対象となっている。
発生時等における国の支援として、発生農家や移動制限・搬出制限区域内等の農家の損失に対する手当金の支給や、殺処分の範囲を限定し影響を緩和するための農場分割管理の導入への補助等があるが、農家の負担は大きく、これらの支援は必ずしも十分とは言えない。
また、地方自治体においては、万一の発生に備え防疫体制を整備する必要があるが、防疫措置が長期化した場合、当該自治体だけで対応するのは困難である。
直近の令和6年10月以降においても、北海道、千葉県等の養鶏場で発生が確認されており、今後の発生状況によっては、鶏卵の価格高騰をはじめ、物価高にあえぐ国民生活にさらに厳しい影響を与えるおそれがある。
よって国においては、高病原性鳥インフルエンザ対策のさらなる強化に向け、下記の事項に取り組むよう強く要望する。
記
- 高病原性鳥インフルエンザの発生で損害を受けた養鶏農場及び移動制限・搬出制限区域の設定により影響を受けた養鶏農場等に対する経営支援を拡充すること。
- 農場の分割管理導入に伴う整備・改修経費には多大な経費を要することから、補助額の上限を撤廃するなど、負担軽減策を拡充すること。
- 防疫作業の分担に向けた民間活力の導入や、広域自治体間の応援体制の整備等、防疫対策強化に向けた仕組みづくりを早急に検討するとともに、必要な支援や財政措置を講ずること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和6年12月20日
提出先
- 衆議院議長
- 参議院議長
- 内閣総理大臣
- 総務大臣
- 財務大臣
- 農林水産大臣
- 経済産業大臣
- 内閣官房長官
公立の義務教育諸学校の適正な教員数の維持・確保を求める意見書
本文
令和2年に改正された「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」の附帯決議に基づき文部科学省が実施した教員勤務実態調査によると、教員の長時間勤務について一定程度の改善は見られるものの依然として歯止めがかからない状況にあり、時間外勤務の削減や業務量の軽減など働き方改革のさらなる推進が求められる。また、教員のそうした職場環境が影響し、平成12年度に13.3倍であった全国の教員の採用倍率は、令和5年度に3.4倍と年々低下している。
このように、教員不足が全国的な問題となる中、静岡県内においても定数未配置の学校が存在しており、教員の人材確保は喫緊の課題である。とりわけ、今後の教育界を支える志ある優れた人材を確保していく必要があり、そのためには教員の働き方改革等を進め、子供たちが教員の仕事に魅力を感じるようにする必要がある。
よって国においては、公立の義務教育諸学校の適正な教員数を維持・確保していくため、下記事項に取り組むよう強く要望する。
記
- 校務のDXによる業務効率化や業務内容の見直しを進めるなど、さらなる働き方改革の推進を強力に支援すること。
- 教職調整額を直ちに現行の4%から10%に引き上げるとともに、時間外勤務を抑制するための法整備を進めること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和6年12月20日
提出先
- 衆議院議長
- 参議院議長
- 内閣総理大臣
- 総務大臣
- 財務大臣
- 文部科学大臣
災害発生時における信頼性の高い情報収集・活用体制の構築を求める意見書
本文
情報通信技術の進歩と、それに伴う様々なデジタルサービスの普及により、インターネット上では膨大な情報やデータが存在しているが、その中には有益な情報がある一方で、近年では、事実とは異なる偽情報や誤情報が流されることが増えている。それら偽情報や誤情報の存在、拡散は、利用者が適切な判断を下すことを困難にさせることに加え、インターネット上の情報の信頼性を低下させ、安心、信頼してデジタルサービスを利用することができなくなるなどのおそれがある。
特に、災害発生時における情報は多くの人命に直結する重要なものであるが、令和6年能登半島地震の際には虚偽の救助要請や寄附募集、報道機関の公式アカウントのなりすまし投稿、別の災害時の動画等を用いた投稿などの不適切な情報が多数確認された。実際、虚偽情報を見た者からの救助要請により警察や消防が出動し、真に必要となる救命・救助活動を妨げる事例も発生したとされている。
災害はいつどこで発生するか分からず、特に発災直後で情報が錯綜する状況の中、被災者が自分の命を守るために正しい判断をしたり、警察や消防が被災者の命を救うために迅速な救命・救助活動を行うためには、正確な情報を広く共有する必要があり、それを阻害する偽情報や誤情報への対策は喫緊の課題である。
よって国においては、災害発生時に信頼性の高い情報を収集し、活用する体制の構築を積極的に推進するため、下記の事項に取り組むよう強く要望する。
記
- 情報発信者や情報発信機器の事前登録等により、情報の信頼性を担保した上で、現場から正確な情報を収集し活用する体制を整備すること。
- 正確で信頼できる情報発信のため、IoTセンサーやドローンを活用したリアルタイムでの国と地方自治体の災害情報共有体制を整備するとともに、適切な情報分析や迅速な対策を促す気象防災アドバイザーの自治体への配置を支援すること。
- 正確な情報を発信する公的情報サイトを更新し、国民への普及を強力に推進すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和6年12月20日
提出先
- 衆議院議長
- 参議院議長
- 内閣総理大臣
- 総務大臣
- 財務大臣
- 国土交通大臣
- デジタル大臣
- 内閣府特命担当大臣(防災)
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