先進パワエレデバイスと時分割変調を活用したマイクロ波応用フロー化学装置の開発
株式会社サイダ・FDS(焼津市)
研究開発の背景と課題
医薬品や化学薬品の開発・製造で行われる有機化合物の合成において、難合成(長時間を要する合成)の反応時間の短縮と収率向上が求められています。有機化合物の合成方法は、バッチ反応法とフロー法の大きく2種類に分類されます。バッチ反応法は、容器に反応物を一定量投入し、攪拌(かくはん)・加熱します。フロー法は、流路に反応溶液を流し連続的に合成します。従来はバッチ反応法での合成が主流でしたが、必ずしも生産性が高くなく、量産における暴走や爆発の危険を軽減するため、反応部容積が小さいフロー法への転換が欧米を中心に重要視されています。
フロー法での合成では、反応物をヒーターにより外部から加熱することが一般的ですが、加熱ムラができるために流路を太くすることができず、生産量や収率の向上に課題がありました。これに対し、株式会社サイダ・FDS(以下、サイダ・FDS)では、反応物を電子レンジでも利用されているマイクロ波により内部から均一に加熱(マイクロ波加熱)する反応装置を開発しました。マイクロ波加熱は熱伝導や対流と異なり、加熱ムラが少なく、反応物を選択的に急速に加熱できるため、反応時間の短縮、収率の向上、反応温度の低温化を実現し、生産量の増大が期待できます。
研究開発の概要
過去にサイダ・FDSで開発した装置は、加熱対象が水やアセトニトリル等の一部の溶媒(極性溶媒)に限られており、これを各種の合成反応に対応できるようにする必要がありました。
そこで、国立研究開発法人産業技術総合研究所の電子光基礎技術研究部門、ナノ材料研究部門と共同で、様々な条件における合成試験を行い、加熱によって変化する反応物の状況に応じて、最適な周波数のマイクロ波を照射する制御システムを導入する等の改良を行いました。
その結果、難合成かつマイクロ波で加熱しにくい溶媒を使った有機半導体材料のフラーレン誘導体の合成で、従来の方式と比較して約10倍の生産性向上を達成しました。
製品の概要
今後の計画
合成試験等を継続し、反応例(アプリケーション)を充実させ装置へのニーズのある医薬品や化学薬品の合成への最適化を行い、製品化を進めていきます。
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