水素化ホウ素ナトリウム(SBH)の新しい大量生産(再生)技術の確立

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ページID1025872  更新日 2023年3月28日

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アルミニウムを反応媒体としたSBH (Sodium Borohydride)の工業的製造技術開発とSBH製造に伴う副生アルミナのアルミニウムへの再生および副生アルミナの品質制御条件の確立

日本軽金属株式会社(静岡市)

研究開発の背景と課題

水素化ホウ素ナトリウム(Sodium Borohydride: SBH)には強い還元作用があるため、産業界ではパルプ漂白剤や創薬用還元剤としてのケミカル剤市場が存在しています。加えて、SBHは高い水素貯蔵能力をもつことから、将来の水素エネルギー社会を担う素材として注目されています。SBHは、水素ガスを必要とするときに加水分解をすることで、SBHが保持している水素に加え、水からの水素を発生させることができるため、最終的な体積エネルギー密度はガソリンに匹敵するレベルのエネルギー・キャリアとなります。

一方で、従来のSBHの製造方法は、取り扱いが難しく高価な金属ナトリウムを消耗品として使用するため製造コストが高く、また使用済みSBHの再生技術が確立していないため、エネルギー・インフラ向け水素キャリアとして検討されているものの、実用技術として認められているとはいえません。そのため、SBHを安価で持続的に大量生産できるような生産技術の開発が求められていました。

研究開発の概要

この研究開発では、アルミニウムを還元反応促進剤としてSBHを生成する方法の実用化を目指しました。この製法は、開発過程において反応制御が難しく爆発の危険性をはらんでいたことから、国立研究開発法人産業技術総合研究所 安全科学研究部門高エネルギー物質研究グループと共同研究を行い、原料・製品(粉末SBH)の発火・爆発危険性の評価やプロセス条件別危険性の判定、安全指導等を受けながら開発を進めました。

図:SBH生産プロセス
本研究で開発したSBH生産プロセス出所:日本軽金属株式会社

その結果、ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)とアルミニウムを使用した世界初の新しいSBH合成方法の開発に成功しました。新製法では、SBHから水素を取り出した後にできるメタホウ酸ナトリウム(NaBO2)を原料に利用でき、SBHに再生できるという特長があります。また、水素化反応時に副生される酸化アルミニウム(Al2O3)を当社が長年培ってきたアルミ電解製錬技術でアルミニウムに再生して再利用するなど、資源のリサイクルによる持続的なSBH生産が可能となっています。

写真:粉末SBH
粉末SBH出所:日本軽金属株式会社

今後の計画

今後は、量産技術を確立し、既存のケミカル剤市場への新規参入を目指します。また、将来的の水素エネルギー社会の一助となるべく、研究開発を継続していきます。

なお、当社は平成30年度下期より静岡市水素エネルギー利活用促進協議会に参画し、水素エネルギー事業に係わる政府機関や企業・大学等との情報連携を図っています。さらに、令和2年度「静岡市静岡型水素タウン新技術開発等推進事業」にも採択されました。

このページに関するお問い合わせ

経済産業部産業革新局新産業集積課
〒420-8601 静岡市葵区追手町9-6
電話番号:054-221-2985
ファクス番号:054-221-2698
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