第40回 NPO法人静岡団塊創業塾
第40回
中高年の充実したセカンドライフを生み出す居場所づくりに取り組む、「NPO法人静岡団塊創業塾」

こんにちは。静岡県中部地域局です。
地域活動に取り組む方々や、イノベーションを起こしている企業にスポットを当て、地域と関わるようになったきっかけや活動内容について、中部地域局の職員がインタビューし、みなさんが元気になる情報をお届けします。
第40回となる今回は、静岡市葵区に活動拠点を持ち、中高年の居場所づくりをきっかけとして、それぞれの個性に応じたセカンドライフの過ごし方への気づきを促し、社会貢献などの充実した人生へ導く活動に取り組んでいる、「NPO法人静岡団塊創業塾」の原田和正理事長と、大原美千代副理事長にインタビューしました。
偶然の出会いを縁として、NPO法人設立へ

「NPO法人静岡団塊創業塾」は、元々は偶然に集まった仲間たちから始まった団体です。
2007年に、団塊の世代の大量退職が始まり、それが社会に与えるインパクトが話題になりました。その年の1月に、静岡市が「団塊創業塾」という3日間のセミナーを開催し、定年退職を間近に控えた年代の約30人が受講しました。
その受講者がOB会を3か月に1回開催するようになり、現在の自身の状況を仲間に発表して、意見交換を行うという集まりを行っていました。集まりの最後には必ず飲み会も開催し、忌憚のない意見を交わす中で、お互い打ち解けていきました。メーリングリストを作成して連絡を容易にするという工夫も行い、新たな友達を連れてくるメンバーもいて、皆、お互いの好奇心をぶつけ合っていました。
また、有志がSOHOしずおか主催のブログ講座を受けたことで、仲間がITを学習するきっかけになりました。このことが、現在の中高年のデジタルデバイド解消の取組につながっています。他にも、テレビ会議アプリのSkypeを活用して、皆がその場に集まらなくても気軽にコミュニケーションをとれるようにしました。
こうした活動を続けて行く中で、中高年のセカンドライフの充実を通じた社会貢献活動に、組織として挑戦していく機運が高まり、2011年にNPO法人を立ち上げることにしました。
NPO法人設立への道は、これまでの緩い集まりとは違って、明確な定款や会計報告が求められ、大変な作業でしたが、皆、持ち前の好奇心とチャレンジ精神を持って取り組み、同年11月に、ついに「NPO法人静岡団塊創業塾」を設立することができました。
もうひとつ大事なことが、私たちの活動拠点を得られたという御縁についてです。
2014年の3月に、厚生労働省の「地域支え合い体制つくり事業」の助成をいただき、静岡市の中心部に「シニアライフ支援センター・くれば」を開設することができました。
「シニアライフ支援センター・くれば」は、私たちが目標にしてきた中高年が元気に過ごせる居場所として大きな力を発揮し、会員もそれまでの約50人から、100人を超える人数になりました。
その後、コロナ禍により会員が直接集まる機会は大きく制限されましたが、私たちはそんな中でもできることに取り組むこととし、「NPO法人静岡団塊創業塾」の10周年記念誌『熟年爽快』を作成しました。この記念誌はインターネット上に公開しており、どなたでも無料で読むことができます。会の理念や活動内容を分かりやすくまとめていますので、ぜひ御一読ください。
家庭、職場、そして「第3の居場所」

私たちは、中高年の方が、退職後に自分の居場所を失って、同時に社会とのつながりと活力も失っていくことを防ぎたいと考えています。そのためには、社会参加を続けていける、家庭でも職場でもない「第3の居場所」、サードプレイスが必要です。「NPO法人静岡団塊創業塾」は、そのサードプレイスになることを主な目的としています。
そのために、最も早期から取り組んでいたのが「団塊サミット」です。これは、まだNPO法人を設立する前の2009年に、静岡県中小企業団体中央会から、団塊世代向けの交流イベント開催のお誘いを受け、試行錯誤の末、同年3月に第1回を開催しました。
「団塊サミット」は、私たちの会にとって、初めての外部への情報発信であり、また、新たな会員との出会いの場になりました。その後も年1回サミットを開催し、中高年の持つ可能性についての発信と、共鳴してくれる仲間集めに取り組んでいます。10回開催を機に名称を「人生100年サミット」に変更し、24年度で通算17回目となりました。
私たちが考えている、会員の社会参加につながる段階のイメージは、「会→繋→磨→輝」です。
まず、私たちが開催しているサミット、講演会、及びワークショップなどで、新しい仲間、知識、気づきに「会」います。
次に、定期交流会と懇親会で仲間と近況報告を交換したり、歌声喫茶を楽しんだりして、「繋」がっていきます。そうするうちに、自分の得意分野やスキルが見えてきます。
さらに、磨き合い塾で相手の相談にのったり、講師として知見を伝えるスキルを「磨」き、派遣講師として活躍できるよう訓練します。
そして、熟年セミナーの講師となって、企業や行政、地域社会におけるニーズに応じた知見を伝え、広めることで、自身の力を活かして社会に貢献し、「輝」くことができます。
中高年の方は、誰もが豊富な人生経験を積んだ、「生きた事例集」です。皆、人に伝えるべき価値のある知見を持っているのです。
さて、「プロボノ」という言葉があります。耳慣れない言葉かもしれませんが、「自分の特性を活かしてボランティア活動を行う」という意味です。私たちの会では、豊富な社会人経験を持つ会員に、ボランティアとして企業活動に協力してもらうことで、地域企業の支援と、会員の自己実現を図っています。
また、NPO法人化したことで県や市町からの仕事も受託しやすくなりました。私たちの会では、静岡県内35市町のうち、これまでに24市町を講演等で回りました。私たちの取組をきっかけに、他の地域でも中高年の真の能力が開花し、社会貢献活動が進んでいくことを願っています。
激動の時代に、地域の力を維持していくために
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現在は、スマートフォン、SNS、AIなど、デジタル化の進展が著しく、この激しい変化について行けない中高年の存在が、「デジタルデバイド」という問題を引き起こしています。
一例を挙げれば、自治会の回覧板を電子メールやLINEで回してもらいたい若年世代と、そうしたデジタル化に対応できない世代が紙による回付を希望するなど、デジタルによる情報伝達速度の加速を享受できる方と、そうでない方の格差が生じています。
私たちの会は、静岡市のデジタル化推進課から自治会のデジタル化の支援を依頼され、連絡アプリのLINEと、テレビ会議アプリのZOOMについての市民講座を開催しました。
現在、各地の自治会は、これまでその活動の中核となってきた団塊世代が後期高齢者となって引退していく時期を迎えており、担い手不足が深刻化しています。
そうした地域の力を支えていくことを目的のひとつとして、私たちの会では企業に在職中の方を対象とした「ライフシフトセミナー」を開催しています。
これは、受講者に、退職後のセカンドライフを視野に入れて、職場と地域とのパラレルキャリアをイメージしてもらい、合わせて将来の生活の変化に備える自分磨きのヒントを得てもらうことを目的としています。
私たちは、地域を元気にする中高年になっていくためには、3つの「こ」が必要だと考えています。それは、『行動、コミュニケーション、好奇心』です。
それらを育む場所として、私たちの会と、「シニアライフ支援センターくれば」が役に立つことができればと願っています。
私たちの会では、会員皆が先生であり、皆が生徒です。AIに質問するのではなく、人間が教え合うことに価値があると考えています。それは、人に教えることによって、教えた側も成長できるからです。そのためには、会員が対等であり、平等に議論できることが必要です。私たちの会には、利害関係や上下関係はありません。そうした気楽さが、多様な人の居場所となるには適していると思います。
そして、私たちの会では常時会員募集中です。「これを知る者はこれを好むものに如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず」という孔子の言葉がありますが、知識だけにとどまるより好きであることが勝り、好きであることより楽しむことが勝るという意味です。私たちと一緒に、好きなことを磨き上げて、楽しみながら地域貢献していきましょう。
今後の活動の目標について
現在、県内24市町で開催済の地域デビュー支援セミナーについて、全35市町で開催実績を残すことができれば、大変嬉しいことです。
また、コロナ禍の影響で「シニアライフ支援センター・くれば」に会員が集まって行う活動が減少してしまったので、その活動頻度をコロナ禍前の水準まで回復させていきたいと考えています。
静岡市、藤枝市の、ここが好き!
この地域は温暖で雪も降らず、自然に恵まれていながら、刺激が欲しい時には東京にもすぐに行ける便利さがあります。
そこそこ都会で、そこそこ田舎という暮らしやすい環境が素晴らしいと思います。
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