令和5年度決算審査及び基金運用状況審査(令和6年度実施)
歳入歳出決算及び基金運用状況審査意見書の概要
地方自治法第233条第2項の規定に基づき審査に付された令和5年度静岡県一般会計及び特別会計の歳入歳出決算並びに同法第241条第5項の規定に基づき審査に付された令和5年度定額の資金を運用するための基金の運用状況について審査し、その結果について、令和6年9月9日に知事へ意見書を提出しました。
意見書全文
歳入歳出決算審査意見書(一般会計及び特別会計)の概要
1.審査の対象
令和5年度静岡県一般会計及び11特別会計
2.審査の期間
令和6年7月24日から令和6年8月29日まで
3.審査の方針
令和5年度静岡県一般会計及び特別会計の歳入歳出決算の審査は、次の点を重点に関係諸帳票、証拠書類の照査、関係当局から聴取等を行うとともに、定期監査、例月出納検査等の結果も考慮し実施した。
- 決算計数は、正確か
- 会計事務は、関係法令等に適合して処理されているか
- 予算の執行は、議決の趣旨に沿って適正かつ効果的にされているか
- 資金は適正に管理され、効率的に運用されているか
- 財政は、健全に運営されているか
- 財産の取得、管理及び処分は、適正に処理されているか
4.審査の結果
令和5年度一般会計及び特別会計の歳入歳出決算の計数については、決算書、同附属書類、関係諸帳票、指定金融機関の現金有高表等を照合審査した結果、正確であることを確認した。
また、財政運営、予算の執行、会計及び財産・資金に関する事務については、一部改善を要する事項も見受けられたが、おおむね適正に行われているものと認める。
5.審査の意見
(1)健全な財政運営の堅持について
歳入決算額は、国庫支出金や県債の減少により、一般会計全体では、1兆3,472億3,049万2千円となり、前年度決算額1兆4,721億641万6千円に比べ1,248億7,592万4千円、8.5%減少した。
国庫支出金は1,788億7,301万7千円で前年度決算額2,955億8,599万9千円に比べ1,167億1,298万2千円、39.5%の減少となった。これは、新型コロナウイルス感染症関連の国庫補助金等の減によるものである。
国庫支出金の減による特定財源の割合の低下により、一般財源等の割合が76.1%と前年度より6.2ポイント上昇した。
県税の決算額は4,969億8,549万6千円であり、前年度決算額4,976億5,575万6千円に比べ6億7,026万円、0.1%の減少となった。これは、前年度に比べて、個人県民税が増えたものの、地方消費税、法人二税等が減少したことによるものである。
県債は、1,308億2,900万円で、前年度決算額1,470億1,000万円に比べ161億8,100万円、11.0%の減少となった。これは、投資的経費の水準調整や減収補填債などの資金手当債の発行を抑制したことが主な要因である。
歳出決算額は、その他経費の減少により、一般会計全体では、1兆3,291億6,255万円であり、前年度決算額1兆4,474億7,735万9千円に比べ1,183億1,480万9千円、8.2%減少した。
義務的経費については、前年度と比べ決算額が0.7%減少した。これは、令和5年度から始まった定年引上げに伴う影響により退職手当が後ろ倒しになったため、人件費が144億5,172万円減少したことによるものである。
投資的経費については、前年度と比べ決算額が3.8%増加した。これは、災害復旧事業費が増加したことによるものである。
また、その他経費は、前年度から決算額が19.6%減少し、歳出全体に占める構成比も5.3ポイント低下して37.6%となった。これは、新型コロナウイルス感染症関連事業の減少により奨励助成費が減少したこと等によるものである。
次に、一般会計の県債残高について、通常債の残高は1兆5,881億9,272万1千円となり、前年度に比べ80億3,377万8千円減少し、新ビジョン後期アクションプランの目標である「上限1兆6,000億円程度」の水準を下回った。
また、臨時財政対策債の残高は1兆1,452億9,618万円となり、前年度末より393億6,647万5千円減少した。
県の財政構造を示す7つの指標を見ると、前年度に比べて一般財源等比率、自主財源比率、将来負担比率は改善し、義務的経費比率、経常収支比率、財政力指数、実質公債費比率は悪化した。
義務的経費比率は、定年の引上げによる退職手当の減少により義務的経費は減少したが、新型コロナウイルス感染症関連事業費の大幅な減少により、令和5年度は、3.5ポイント悪化した。
財政状況は実質公債費比率18%未満、将来負担比率400%未満という新ビジョン後期アクションプランの目標の範囲を維持し、一定の健全性は保たれているものの、実質公債費比率及び将来負担比率の全国順位のワースト10入りが継続している状況である。
物価高騰及び新型コロナウイルス感染症関連事業の継続に伴い充当する一般財源の増加により、財源不足額は58億円となり、昨年度と比べ26億円増加し、令和5年度の収支均衡は未達成となった。
また、令和4年度からスタートした新ビジョン後期アクションプランでは、令和7年度までに財政調整用の基金に頼らない収支均衡を達成することを目標に掲げているが、国の地方財政計画により一般財源総額が据え置かれている一方、歳出面では、社会保障関係費や金利の上昇に伴う公債費の増加等による義務的経費等の増加が見込まれており、現状のままでは、収支均衡の目標達成は難しい状況にある。
健全な財政運営に向け、全庁的に一層の歳出のスリム化に取り組むとともに、成長産業の育成を通じた税源涵養を進めるほかクラウドファンディング等による歳入確保の取組を図られたい。
加えて、臨時財政対策債は、国から元利償還金が地方交付税の基準財政需要額に算入され、実質的な地方交付税として扱われているとはいえ、令和5年度の残高が1兆1,452億円以上となっており、県債残高全体の41.3%を占めていることから、引き続き、国に対して、あらゆる機会を活用して、中長期的に安定的な地方税制度の構築、臨時財政対策債の廃止を含めた地方交付税制度に係る改革や償還財源の別枠での確保を強力に働きかけられたい。
(2)収入未済額の縮減への取組について
収入未済額から徴収猶予等の措置をとったものを除いた実収入未済額は、平成22年度の205億6,785万2千円をピークに令和4年度まで減少していたが、県税関係以外の増加等により、令和5年度は88億5,075万円となり、前年度と比べ12億7,667万円、16.9%増加した。
(ア)県税関係
県税に税外収入の加算金を加えた令和5年度の実収入未済額は、34億4,117万1千円となり、前年度に比べ2,967万7千円、0.9%の増加となった。これは、個人県民税が減少したものの、法人事業税や個人事業税が増加したことによるものである。
令和5年度の個人県民税(均等割・所得割)の収入率は、平成24年度から市町と協働で進めてきた特別徴収の徹底などの取組による滞納繰越額の減少もあって97.3%となり、前年度より0.1ポイント上昇したが、全国平均の97.4.%を0.1ポイント下回っている。県政運営の自主性を保持する上で県税の確保は重要な命題であり、特に個人県民税の徴収については、県職員の市町への短期派遣など、引き続き市町と協働での対策を進めるなど、より一層の徴収強化に努められたい。
また、個人県民税以外の税目についても、引き続き、滞納整理を積極的に行うなど、収入未済額の縮減に向けた取組に努められたい。
(イ)県税関係以外
令和5年度の県税関係以外の実収入未済額は、54億957万9千円で前年度に比べ12億4,699万4千円、30%の増加となった。これは、盛土緊急対策代執行費用返納金11億3,020万6千円が新規に発生したこと等によるものである。
このほかの実収入未済額の主なものは、中小企業共同施設資金貸付金償還金等14億4,877万1千円、母子父子寡婦福祉資金貸付金償還金等7億9,992万円のほか、産業廃棄物原状回復代執行費用返納金、高濃度PCB廃棄物代執行費用返納金、生活保護費返還金、公営住宅使用料である。
県税関係以外の未収金については、全庁的な観点から部局を横断して対策に取り組む「税外収入債権管理調整会議」を設置し、平成23年度から過年度未収金について、回収目標や整理目標を立て縮減に向けた各種の取組を行っているが、母子父子寡婦福祉資金貸付金償還金等、医学修学資金貸付金返還金、生活保護費返還金等で実収入未済額が昨年度と比べ増えている。
債務者の状況を確認しながら、回収業務の専門家と連携を強化する等、効果的な手法を取り入れることで収入未済額の縮減に努力されたい。
(3)事業繰越の縮減について
翌年度への繰越額は、一般会計では914億7,713万1千円で、前年度に比べ84億889万2千円、8.4%減少したが、特別会計については27億7,044万3千円で、前年度に比べ9億7,698万5千円、54.5%増加した。
なお、一般会計では、社会健康医学研究推進事業費が令和3年度から令和8年度までの6年間の継続費として設定されており、令和5年度の繰越額(逓次繰越)は、2億4,746万8千円であった。
令和5年度の明許繰越のうち、追加分(国補正や災害発生に伴う事業の繰越)は、前年度と比べ69億715万9千円、15.4%減少した。
また、事故繰越については、22億2,971万1千円で、前年度に比べ18億1,113万2千円、44.8%減少した。
明許繰越のうち通常分については、的確な計画立案及び効率的な予算執行を図り繰越額の縮減に努められたい。また、事故繰越については、早期完了に向けて計画的な事業執行に努められたい。
(4)不用額について
歳出予算における不用額は、一般会計では、231億9,834万2千円で、前年度に比べ111億7,594万円、32.5%の減少となった。また、特別会計では、77億3,499万3千円で、前年度に比べ20億3,599万5千円、20.8%の減少となった。
一般会計の不用額の減少は、新型コロナウイルス感染症5類移行に伴い、新型コロナウイルス関連事業が大きく縮小したことによるものである。
また、特別会計の内訳で主なものは、国民健康保険事業特別会計における保険給付費等交付金等である。
令和5年度の不用額は、一般会計、特別会計いずれも前年度を下回っている。財政の健全化を推進し、財源の有効な活用を図るため、当初予算計上時からより精度の高い所要経費の見積りを行うとともに、事業の進捗状況を的確に把握した上で補正等を行い、引き続き効率的な予算執行に努められたい。
(5)財務会計事務等の適正な執行について
令和5年度定期監査等において、継続的資金前渡に係る立替払など9件を監査結果として一番重い「指摘」としたほか、道路占用料の徴収誤り等31件を「注意」とした。監査結果等は「意見」「指導」を含めると全体で129件、前年度に比べ11件の減少となっている。
財務会計に関わるものは、68件であり、前年度より13件増加した。これは、令和4年度に多く発生した支出負担行為伺の遅延等が減少したものの、借受財産台帳の未作成、登載漏れ、更新漏れ等が多発したためである。
工事技術関係に関わるものは、4件であり、前年度より7件減少した。これは、建設工事において、不適切な設計書の作成や同一施工業者による死亡事故の再発等の事案が減少したためである。
令和2年度から内部統制制度が開始され、各所属で財務に関する事務等を対象にリスクを抽出し、事前に不正や間違いの発生を防ぐ仕組み作りに取り組んでいるが、令和5年度の内部統制評価報告書では重大な不備が2件報告されている。
監査業務は、内部統制推進部局が行う検査結果等を活用し、経済性、効率性及び有効性に視点を置いた監査や内部統制機関では確認困難な分野に監査資源を投入し、監査の重点化を図ることとしている。
各内部統制推進部局及び内部統制評価部局においては、内部統制制度が有効に働き、適正な事務処理が行われるよう、連携を図り、システムの見直しや組織によるチェック体制の強化などに継続的に取り組み、適正な財務会計事務等の執行に努められたい。
(6)財産管理等について
財産管理に係る事務については、車検切れ車両の貸付や指定証が必要な薬品の不適切な管理により「指摘」となった案件が2件発生したほか、モバイルパソコンの不適切な管理や物品台帳の未作成など事務処理上の不適切な事例も散見されている。県有財産は、県民の財産であるという意識をもって適切な管理に努められたい。
一方で、県では、ファシリティマネジメントの基本方針において、「総量適正化」、「施設の長寿命化」、「維持管理経費の最適化」、「施設の有効活用」の4本柱により、経営的な視点から県有施設の総合的な企画・管理・活用に取り組んでいる。とりわけ、「総量適正化」に向けた未利用財産の売却については、平成20年度から5年度ごとに県有財産の売却計画を策定しており、令和5年度からの「県有財産の売却計画」においては、5か年で66億5,154万4千円の売却を進めることとした。令和5年度は、売却条件が整わず売却を後ろ倒しにした物件が多かったため、売却額は6億5,961万9千円で、令和5年度の目標値に対する達成率は36.1%であった。今後は、売却対象財産の状況をより具体的に把握し、計画的な売却に努められたい。
また、令和元年度に策定した「個別施設計画(公共建築物)」では公共建築物の総量適正化と長寿命化の取組を計画的に推進することとし、「総量適正化」については、令和31年度までの30年間で公共建築物の15%の削減を目標としている。
令和5年度末の床面積は、建替え工程の影響により一時的に前年度末から13,784平方メートル増加したものの、個別施設計画の管理目標に対する達成率は累計で3.25%減と着実に削減が進められている。当該目標を達成するため、引き続き、計画的な削減に努められたい。
加えて、長寿命化の取組により、建物劣化診断を実施し、今後の中長期維持保全計画の策定につなげていることから、県有施設の安全性の確保と財政負担の軽減の両立に努められたい。
基金運用状況審査意見書の概要
1.審査の対象
静岡県立美術博物館建設基金
2.審査の期間
令和6年7月24日から令和6年8月29日まで
3.審査の方針
静岡県立美術博物館建設基金条例の趣旨に従って適正に運用・管理されているか、調書と関係帳簿及び証拠書類等を調査照合し審査を行った。
4.審査の結果及び意見
審査の結果、本基金は適正に運用されており、計数にも誤りはなかった。
静岡県公営企業決算審査意見書の概要
地方公営企業法第30条第2項の規定に基づき審査に付された令和5年度静岡県公営企業の決算を審査し、その結果について、令和6年9月9日に知事へ意見書を提出しました。
意見書全文
静岡県公営企業決算審査意見書の概要
1.審査の対象
令和5年度静岡県工業用水道事業
令和5年度静岡県水道事業
令和5年度静岡県地域振興整備事業
令和5年度静岡県立静岡がんセンター事業
令和5年度静岡県流域下水道事業
2.審査の期間
令和6年7月24日から令和6年8月29日まで
3.審査の方針
令和5年度静岡県公営企業の決算審査は、次の点に重点を置き、関係諸帳票及びその他証拠書類の照査、関係当局から聴取等を行うとともに、定期監査及び例月出納検査等の結果も考慮し実施した。
- 決算報告書及び財務諸表は、地方公営企業法等関係法令に準拠して正確に作成されているか
- 各事業は、地方公営企業法第3条の経営の基本原則の趣旨に従って運営されているか
4.審査の結果
工業用水道事業ほか4事業の決算報告書及び財務諸表は、前記の方針により審査した限り、いずれも地方公営企業等関係法令に準拠して作成され、正確であると認める。
また、一部に厳しい経営状況の事業もあるが、各事業は、地方公営企業の基本原則の趣旨に従い、おおむね適正に運営されているものと認める。
5.審査の意見
(1)工業用水道事業
工業用水道事業は、料金改定による給水収益の増加、動力費の減少等による維持管理費の減少などにより経常利益を確保したほか、未利用地売却による特別利益を計上し、当年度純利益は、前年度より8,199万5千円(増減率10.3%)の減益となるものの、7億1,765万5千円となった。
工業用水道別に見ると、6工業用水道のうち、湖西工水は当年度純損失を計上し、中遠、西遠の2工水は当年度純利益が前年度より減少した。
また、年間実給水量を見ると、湖西以外は減少しており、6工水合計で846万2千立方メートル減少した。今後も企業の移転や生産規模の縮小、水源転換等により、給水収益が減少する可能性があることに加え、老朽化する施設等の大規模な更新が必要となり、さらに厳しい経営状況が見込まれる。
このような状況の中、「水道施設更新マスタープラン」に基づく「第5期長期修繕・改良計画」を踏まえた平成30年度から10年間の経営の基本計画である「経営戦略(第4期中期経営計画)改訂版」に基づき、計画的に事業を実施している。
また、浄水発生土の有効活用と減量対策によるコスト削減や遊休資産売却等による収益確保に取り組んでいる。
さらに、雑用水の営業活動を強化し、上水道とのコスト比較や企業局の支援制度等を記載した営業チラシを活用した営業活動に取り組むなど、新規顧客開拓に取り組んでいる。
こうした点を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。
- 経営戦略(第4期中期経営計画)改訂版」に基づいて、若手職員や中堅職員を計画的に配置するなど、長期的視点に立った人材育成を進め、組織体制の充実や技術力の向上に努めながら積極的な経営革新に取り組まれたい。
また、収益確保については、企業の情報収集、管路近傍事業所への重点的な営業活動等による新規顧客の開拓、未利用資産の新たな有効活用や売却の検討など、積極的な取組に努められたい。
なお、「工業用水利用促進インセンティブ制度」については、関係者から意見を聴取するなど、今後の顧客開拓のために有効な活用方法を検討されたい。
運営コスト削減については、浄水発生土処分費や動力費等の削減を進めることにより収支改善を目指し、更なる経営基盤の強化に努められたい。
さらに、能登半島地震の被害状況等を踏まえ、「第4期耐震計画」及び「第5期長期修繕・改良計画」に基づき、着実に施設や管路の耐震化を進められたい。 - 富士川と東駿河湾工水を統合した「ふじさん工業用水道」については、令和11年度の本格的な一体的水運用の開始を目指し、令和6年度から新たに設置するポンプ場の設計・施工に加え、浄水場等の運転・維持管理への包括的民間委託の導入を進めている。一体的な運用によるコスト削減や工業用水の安定供給を果たせるよう事業を進められたい。
(2)水道事業
水道事業は、動力費の減少等による維持管理費の減少などにより経常利益が増加し、当年度純利益が前年度より1億7,916万6千円(増減率30.6%)の増益の7億6,505万7千円となった。
当年度純利益は、3水道事業のいずれも前年度より増加した。
年間実給水量については、駿豆及び榛南で減少したが遠州は増加しており、当年度の3水道の合計実給水量は、前年度より477立方メートル(同0.0%)の増加となった。
黒字経営が継続しているが、今後、人口減少等に伴う水需要の低下による施設規模の適正化や管路等の大規模更新を進めるに当たり、費用の増加が見込まれている。
また、水道事業は県民の生活を支える公共インフラであることから、大規模災害発生時にも速やかに安全・安心な水を供給することが求められている。
こうした点を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。
- 「経営戦略(第4期中期経営計画)改訂版」に基づいて、積極的な経営革新に取り組み、浄水発生土処分費や動力費の削減等による運営コストの削減により、健全経営の維持に努められたい。
また、AIによる塩素の適正注入率制御や管路台帳の3次元モデル化に取り組み、水道管の劣化診断にAI技術を導入している。今後も新たな技術の導入可能性を検討し、DXによる業務の効率化に努められたい。
さらに、能登半島地震の被害状況等を踏まえ、「第4期耐震計画」及び「第5期長期修繕・改良計画」に基づき、着実に施設や管路の耐震化を進めるとともに、関係機関と連携し、災害や事故等の緊急事態に対応できる体制の維持に努められたい。 - 榛南水道と静岡県大井川広域水道企業団が運営する大井川広域水道の統合について、令和11年4月を目途とする統合に向け、関係者間で施設整備、費用負担、資産譲渡等について協議を進めてきた。令和6年度からは実施協定に基づき、企業局が同企業団から受託して施設整備(接続工事等)を実施する。
統合による将来の更新費用や維持管理コストの削減、契約水量と使用水量の乖離の解消など、受水地域にとって統合によるメリットが活かされるよう事業に取り組まれたい。
(3)地域振興整備事業
地域振興整備事業は、オーダーメード方式により整備した「浜松坪井バイオマス発電施設関連」用地の引渡しが完了し、前年度同様に土地売却収益を計上したが経常費用が経常収益を上回ったため、経常損失となり、特別損益を加えた当年度純損失は7,206万円となった。
また、「牧之原萩間」については令和4年10月に、「長泉東野」については令和5年1月に、それぞれ企業局、市町、事業者の3者で基本協定を締結し、事業を進めている。
さらに、市町への工業用地等開発可能性調査に対する助成や提案、技術的支援などによる開発候補地の掘り起こしを進め、セミ・レディーメード方式等による事業化を推進している。
こうした状況を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。
- 「経営戦略(第4期中期経営計画)改訂版」に基づいて、工業用地等の造成に当たっては、市町や関係機関と連携した戦略的な開発候補地の掘り起こしを進めるとともに、セミ・レディーメード方式等の多彩な造成方式により、多様な企業ニーズに対応した高付加価値を生む工業用地等の供給を進められたい。また、効率的な施工方法や経費削減に向けた創意工夫に取り組み、経営の健全性を確保しつつ効果的な事業執行に努められたい。
- 「牧之原萩間」、「長泉東野」については、計画に沿った事業の推進に努められたい。
(4)静岡がんセンター事業
静岡がんセンターは、本県がん対策の中核を担う高度がん専門医療機関であり、令和2年4月には全床開棟して615床となった。また、令和2年3月に、厚生労働大臣からがんゲノム医療中核拠点病院の指定を受け、本県におけるがんゲノム医療において中心的な役割を果たしており、治験・臨床試験や研究の推進、がんゲノム医療に関わる人材の育成に、大きな期待が寄せられている。
令和5年度の病院事業は、患者1人当たりの単価の上昇により医業収益の増加がみられるが、高額医薬品の使用増に伴う材料費の増加や職員増に伴う人件費の増加などにより、4年連続の赤字となった。研究所事業の損失を含めると全体で5億9,354万5千円の当年度純損失となり、未処理欠損金も前年度より増加している。
経営指標は悪化しており、コロナ感染の影響による病棟の一時閉鎖などにより、病床利用率が88.2%と、前年度に比べ、0.4ポイント低くなっている。
当年度未処理欠損金は53億4,182万9千円となり、前年度に比べ5億9,354万5千円増加している。
過年度医業未収金は、前年度に比べ670万8千円増と5年連続して増加しており、累計で1億2,948万2千円となっている。
また、医師については毎年充足が進んでいるが、定数200人であるところ、令和5年度末は174人となっており、26人不足している。
こうした点を踏まえ、次のとおり意見を述べる。
- 病院事業は、令和2年度以降、4年連続の赤字となった。令和5年度の医業損益は、患者1人当たりの単価の上昇等により前年度からの改善が見られたが、一方で医業外損益は、他会計補助金の減少や雑損失の増加等により収支が悪化したことにより、病院事業純損益は、前年度と比べて悪化している。
また、当年度未処理欠損金も前年度と比べて増加している。
本県のがん治療の中核的な病院として、安定した医療を提供し病床稼働率の改善や手術件数の増加等による収益を確保するため、引き続き不足している医師の確保に努めるとともに、自治体病院としての役割を維持するために必要な経費を明確にした上での徹底した事業の見直しによる効率的な病院経営と収益の確保に取り組み、病院事業の黒字化を図っていただきたい。 - 過年度医業未収金については、患者本位のもと、患者に寄り添ったきめ細かな対応による未収金発生の未然防止と、早期回収に努めるとともに、回収不能が明らかになった債権については、速やかに調査等を行い必要な欠損処理等を行うなど適正な債権管理を行われたい。
- 研究所を中心に平成25年度から行われているプロジェクトHOPEについて、日本版がんゲノムアトラスの構築や、「ふじのくにHOPEオンコパネル」を開発し保険適用に向けた薬事申請を行うなど成果を上げている。今後も、費用対効果を検証しながら研究成果を県民に還元するよう努められたい。
(5)流域下水道事業
流域下水道事業は、平成31年4月から公営企業会計を採用し、中長期的な見通しに立った経営方針や投資、財政の基本計画である「静岡県流域下水道事業経営戦略」(令和2~11年度)を令和3年2月に策定した。同経営戦略の計画的かつ着実な実施が求められる中、動力費の減少等による維持管理費の減少などにより、当年度純利益は、前年度より2億2,252万8千円(増減率47.3%)の増益となり、6億9,270万4千円となった。
年間総処理水量を見ると、狩野川西部は前年度より15万9千立方メートル(同0.8%)増加しているものの狩野川東部は114万立方メートル(同9.2%)減少し、全体では3.0%減少の3,141万9千立方メートルとなった。
このような状況下において、経営戦略の計画期間の中間年度となる令和6年度は、これまでの評価・検証を踏まえて見直しを行うことにしている。
また、令和4、5年度の2か年をかけて策定した第2期ストックマネジメント計画(令和6~10年度)に基づき、第1期計画に引続き、施設・設備の長寿命化対策を進めることとしている。
こうした点を踏まえ、事業の経営について次のとおり意見を述べる。
- 経営戦略の見直しに当たっては、当事業が5市3町からの負担金を主な財源としていることから、動力費の節減等による維持管理費の縮減や、近年の物価高騰の影響も考慮した、より効率的な事業運営について検討し、重要なライフラインである下水道施設を維持するため、市町との協力による雨天時浸入水対策など、必要な各種施策の適切な実施や、健全な事業運営に努められたい。
- 施設の耐震化・耐水化については、重要な施設の耐震化を終え、残る耐震化予定箇所もあとわずかとなっているが、能登半島地震においては、管渠の被害規模が大きく、国でも同地震を踏まえた対策のあり方の検討を進めている。国の動向を注視しながら必要な地震対策を講じるとともに、引続き、施設の耐水化対策工事についても、完了に努められたい。
- 新たに策定した「第2期ストックマネジメント計画」に基づき、下水道の施設・設備について、点検調査や診断の結果により健全度を把握しながら、計画的な修繕・更新を進め、事業費の平準化と施設・設備の長寿命化を進められたい。
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