HACCP
HACCPとは
HACCPの概要
- HACCPは、HazardAnalysisCriticalControlPointの略称で、「ハサップ」と呼ばれ、食品の「危害分析・重要管理点」と訳されています。
- HACCPは、HA(危害分析)とCCP(重要管理点)の2つの部分からできていて、食品の安全性を確保するために、これらに係る危害を確認し、それらを防除する管理手法と定義されています。
- HACCPは、主として最終製品の検査に依存する従来の衛生・品質管理と違って、原材料の段階から最終製品に至るまでの各段階で発生するおそれのある危害の確認と発生防止に焦点を合わせた管理方式といえます。
HACCPの導入による利点
- 衛生管理システムとして、計画的・合理的であり、製造工程中における危害の発生を未然に防止し、一層の製品の安全確保を図る上で効果的です。
- 重要管理点の監視・管理記録が迅速に得られ、出荷時点で全ての監視記録が管理責任者の手元に掌握される点で管理方式として効率的であり実際的です。
- 工程中の衛生管理が標準化され、製造工程における品質保証の透明性が確認されて取引先の信頼性が一層高まることが期待されます。
- HACCPの文書化と製造段階における日常の監視・管理記録の保存が義務づけられている点で、PL法の導入に伴う対応として効果的であり、製造者自らが製造物に対する責任について立証が可能となり、また、消費者からのクレームにも適切に対処できます。
一般的衛生管理プログラム
HACCPの前提となる自主衛生管理プログラム
- HACCPは、それ単独で機能するものではなく、包括的な衛生管理システムの一部であり、HACCPシステムを効果的に機能させるためには、その前提となる一般衛生管理プログラムが必要となります。
- 重要管理点だけに注意を集中しても、衛生管理の土台となる製造環境、原材料・包装資材の衛生管理、従事者の衛生管理等といった部分が疎かになった場合には、食品の安全確保が困難になります。従って、重要管理点に注意を集中させられるよう、以下の衛生管理事項を整備し、製造環境からの汚染を効果的に予防することが必要です。
衛生管理事項
次の事項について、作業担当者、作業の内容、頻度、点検及び記録の方法を記載したマニュアルを作成し、従事者に遵守させるとともに、記録等により実施状況を確認する必要があります。
- 施設設備及び機械器具の衛生管理
- 施設設備及び機械器具の保守点検
- 食品等の衛生的な取扱い
- 使用水の衛生管理
- 従事者の衛生教育
- 従事者の衛生管理
- そ族・昆虫の防除
- 排水及び廃棄物の衛生管理
- 製品の回収方法
- 製品等の試験検査用器具の保守点検
HACCP導入の際の手順
HACCPを導入するための7原則12手順
HACCPプランは、以下の7原則12手順に従い作成します。
(1)HACCP導入決定とチームの編成
- HACCPを導入するためには、食品企業としてその目的意識と推進意欲を明確にしなければならず、導入の意志決定には企業の経営トップの決断が最も重要となります。
- HACCPプラン作成の第1段階は、製造施設最高責任者(営業者又は工場長)のもと、製造担当者、品質管理担当者、保守管理担当者等でチームを編成することですが、チームの中には、公衆衛生上の危害に関する知識を持った者の参加が必要となります。もし、自社だけでチームの編成が困難な場合は、他から専門的な指導・助言を受けるようにすべきで、特に公衆衛生上の危害や微生物制御技術については、最寄りの保健所の指導を受けるようにするとよいでしょう。
- HACCPチームの担当事項は、一般衛生管理プログラムの作成、危害分析の実施、重要管理点の決定、HACCPプランが期待通りに機能しているかの検証、プラン実施のための担当者に対する教育訓練等です。
(2)製品の特性等の記載
- プランの対象となる食品について、その危害分析の基礎資料となる危害を特定するため、原材料から最終製品についてその組成から流通条件までを含めた以下の事項について表等に記載する必要が有ります。
- 記載事項
- 製品についての記載
- 製品名、食品の分類
- 製品の重要な特性(水分活性、pH、塩分濃度等)
- 原材料の名称及び配合割合
- 添加物の名称及びその添加量
- 包装形態、包装資材の材質、包装条件(ガス置換包装、真空包装等)
- 消費期限又は品質保持期限及び保存の方法
- 製品の危害管理の目標
- 使用方法(そのまま喫食するか、さらに加工されるか等)
- 対象となる消費者
- 原材料についての記載
名称、製造者、産地、入手先、契約時の規格(成分組成、pH、水分活性等)等
(3)意図する用途の確認
- 製造施設を出た製品が、どのように、誰に使用されるかを予測する必要があります。
- 特に危害原因物質に対して感受性のある特定集団に喫食される場合(病院食、老人ホーム用等)の有無は重要です。
(4)製造工程一覧図、食品の流れ、施設内作業区分図及び配置図等の作成
危害分析を容易かつ正確に行うため、原材料の受入から最終製品出荷に至る一連の工程・段階について、工程・段階を詳細に記載した製造工程一覧図、食品の流れ、従事者の動線及び機械・機具の配置を明示した平面図等を作成する必要があります。
(5)製造工程一覧図の現場検証
作成した製造工程一覧図に記載してあるすべての段階について、誤りや不足がないか否かを作業時間中に、実際の製造作業を確認し、必要なら製造工程一覧図の修正を行うことになります
(6)危害分析の実施(原則1)
- 危害分析とは
危害分析とは、原材料及び製造工程における潜在的な危害について、危害の起こりやすさや起こった場合の危害の程度等を含めて明らかにし、さらに各々の危害に対するコントロールの方法を明らかにすることで、具体的には、各原材料又は工程における危害の原因物質、危害の発生要因及びその危害を制御するための防止措置を記載した危害リストを作成することになります。 - 危害分析の方法
- 危害分析に必要な情報、データの収集
- 危害リストの作成作業
危害リストは、食品の種類、製造加工工程、施設ごとに次の作業に従って、上記(ア)で収集されたデータを整理して作成します。- 作業1:原材料に由来する危害の列挙
- 作業2:製造又は加工の工程に由来する危害の列挙
- 作業3:上記で列挙された危害に対する起こりやすさ、起きた場合の重篤性の評価
- 作業4:危害発生要因の特定
- 作業5:防止措置の特定
(7)重要管理点の設定とその方法(原則2)
- 重要管理点(CCP)について
連続的、又は相当な頻度でモニタリングすることが重要管理点の要件であり、これにより個々の製品が重要な危害を招かないように管理することができます。
重要管理点を設定せずに、ロット中の一部の製品のみについてあるいは日々製造される製品の一部にのみについて、全体を代表するものとして安全性を補償する方法では、全部の製品の安全性は必ずしも保証されないことになります。 - 重要管理点の設定方法
- 危害分析によりリストアップした各工程における危害原因物質が、一般衛生管理プログラムによって管理できる場合は、重要管理点の対象から外す。
- 危害原因物質のうちいずれかを除去、又は許容範囲内まで低下させるために特に製造過程に導入した工程は重要管理点になる可能性が高い。
- さらに上述以外の工程についても、確認を行い、危害がその工程以降でも許容レベルまで排除されず、最終製品の喫食により危害発生が起こる可能性のある場合、その工程は重要管理点となる可能性が高い。
- 重要管理点と一般衛生管理プログラムでの管理の区別次のような場合は、一般衛生管理プログラムで管理することが多いといえます。
- 製造工程そのものコントロールではなく、製造環境の整備、洗浄殺菌、保守管理に関わる事項。
- 製造施設環境からの危害原因物質による汚染、混入を防止するための措置の場合。
(8)各重要管理点について管理基準(CL)の設定(原則3)
- 管理基準とは
- 管理基準とは製品の安全性を確保するために許容できる限界値のことで、防止措置毎に設定する必要があります。
- 可能な限りリアルタイムで判断できる基準の指標(パラメータ)を用い、重要管理点よっては、1つ以上を設定する場合もあります。
- パラメータとしては、温度、時間、pH、水分活性、有効塩素濃度等があり、外観(色調、光沢)や他の官能指標(味、臭気、音等)も含まれます。
- 管理基準の設定方法
- 現在の製造基準で具体的な数値等が規定されている場合は、その数値。
- その他の場合は、文献データ、実験データ等から最終製品中の各危害の目標を達成するために、その工程で必要な水準をクリアするための値を設定します。
(9)各重要管理点について監視/測定(モニタリング)方法を定める(原則4)
- 監視/測定(モニタリング)とは
- 重要管理点において、危害防止措置が正しく機能しているかどうかを判定するために、管理基準について、規定した方法によって測定又は観察を行うことです。
- 監視/測定方法としては、重要管理点における管理基準からの逸脱を確実に探知でき、かつ防止措置の関係から迅速に結果の出るものであることが必要です。
- 監視/測定方法の設定
以下の事項について明確に規定しておく必要があります。- 何を
重要管理点が管理基準の範囲内で管理されていることを確認するために行う監視/測定の対象事項を決めること。 - どのように
迅速で正確な物理的、化学的又は官能的な測定方法 - どのくらいの頻度で
連続的又は相当の頻度 - 誰が
特定の監視/測定方法方法について教育訓練を受けた担当従事者
- 何を
- 監視/測定結果の記録
監視/測定方法の結果は、担当従事者が、「その場で」「規定された様式」に、容易に書き改めることができない方法で記入する必要があります。
(10)逸脱発生時の改善方法を定める(原則5)
- 改善措置とは
危害の発生を防止するうえで特に厳重に管理すべき工程である重要管理点には、監視/測定の値が管理基準から逸脱した場合を想定して、迅速、的確に対応するために、予めその場合にとるべき措置を決めておく必要があります。 - 改善措置として規定すべき事項
- 逸脱原因を修正又は排除し、工程の管理状態を元に戻すための措置
- 工程の管理状態が不適切であった間に製造された製品の特定及びその処分方法
- 改善措置実施担当者
- 改善措置実施記録
- 責任者
(11)HACCPシステムの検証(原則6)
- 検証とは
衛生管理が、HACCPプランに従って行われているかどうか、HACCPプランに修正が必要かどうかを判定するために行われる方法、手続き、試験検査をいいます。 - 検証の内容
- 記録の点検
- 実際の監視/測定作業の適性度の現場確認
- 原材料、中間製品及び最終製品の試験検査による確認
- 監視/測定方法に用いる測定機器の校正
- 消費者からの苦情、違反等の原因の解析
- 検証作業に規定すべき事項
- 頻度
- 担当者
- 検証結果に基づく措置
- 検証結果の記録方法
(12)記録の保存(原則7)
- 記録の必要性
正確な記録を取り、保管することは、管理がHACCPの原則に基づき、プランに規定されたとおりに実施されたことの証拠となる。また、万が一、食品の安全性に係る問題が発生した場合でも、製造又は衛生管理の状況をさかのぼって原因追及を容易にするとともに、製品回収が必要な場合は、原材料、包装資材、最終製品等のロットを特定する手助けとなります。 - 各記録の要件
HACCPプランの実施に関する記録として、以下のようなものがあげられます。- モニタリングの結果
- 改善措置の実施結果
- 一般衛生管理プログラムの実施結果
- 検証の実施結果
- 記録のとり方の注意点
- モニタリングの結果が判明した直後に、その場で、所定の用紙に、容易に消すことができない手段(鉛筆は不可)により、必要な事項を記入します。
- 結果を予測して、作業終了前に記入してはいけません。
- 記入する時期を後回しにしたり、記憶により記入してはいけません。
- 記入した記録を修正する場合は、見え消しで行い、修正者のサインを付す必要があります。
HACCPプランの取りまとめ(総括表の作成)
7原則12手順により作成したHACCPプランを総括表に取りまとめます。
HACCPプランは、品目毎に作成する必要があり、一度作ればそれでよいというわけではなく、製品の原材料、配合組成や製造工程その他製造条件等を変更したような際には、直ちにHACCPプラン自体を見直し、必要により変更、修正します。
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