あなたの「富士山物語」(富士山問答/佐々木真理子)
富士山問答/佐々木真理子
「富士山に登ったんだって。どうだった。」
「やっぱりすごかったよ。富士宮口新五合目の登山道から登ったけど、見上げると案外近くに感じたんだけどなあ。」
「こっちの六甲山と、みかけはどうやった。」
「まったく違うよ。シンプルで、いろんな写真のとおりで、植物が低くチョロチョロ生えているだけ。道は、ごろごろ石だらけ。」
「そりゃあ、きつかったよね。」
「初めはよかったよ。影富士をみられたり、雲の上からの景色は、天空のラピュタ状態。そして裾に広がる眼下の景色は、水と緑でバランスもよく絶景だったなあ。天気にも恵まれたしね。」
「でも、上に行くと酸素も薄くなるのよね。」
「酸素のことはあまり気にならない程、夜景がとてもとても幻想的できれいだったなあ。でも、足元をヘッドランプで照らすようになると、視界が狭くなって段々しんどくなったよ。いつ迄登ればいいのかと思うと苦しくなって来たわ。」
「ひき返す気にならなかったの。」
「未知の魅力の方が大きかったよ。」
「山頂はどうだった。」
「めちゃ寒かった。六合目から汗びっしょりになり、そのつけが山頂で一気に来て震えあがったよ。」
「着れるだけ着て冬帽子にかえて、酸素をひと息吸ったら、回復したわ。」
「酸素の経験は六甲山ではないよね。回復してよかったね。」
「でも、その時のどさくさで、今迄かぶっていた母の形見の帽子を失くしたのはショックだったわ。」
「お母さんも富士山へは行ったことがあるのかしら。」
「彼女は、富士スカイラインで富士山の姿を拝んだだけよ。今回じっくりとどまりたかったのね。」
「下山はすぐ開始したの。」
「いやあ、お鉢巡りをして富士山の最高点である剣ヶ峰にて、富士山の火口、雲などゆっくり見たわ。それから御来光を拝み、しばし心をうばわれて寒い山頂からおりたの。」
「下りは、六甲山でもどこでも楽で速いよね。」
「いやいや、速いのは速いけど、ごろごろ石ですべりやすいので、足を踏んばっておりたから足が痛くなったよ。それに、ホコリがモウモウ・・・。」
「じゃあもう、こりたかな。」
「いやいや、何か一つ自信がついたので、今度は違うルートで、違う表情の富士山と接触してみたくなったよ。今度一緒に行こうよ。」
「考えておくね、来年迄に。」
「一度、富士山の魅力にふれたらぬけ出せなくなりそうだわ。いい想い出‥ありがとう。」
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